私が天使になった日(脚本)
〇女の子の一人部屋
私「7月1日、金曜日」
私「異変を感じたのは、朝着替えをしていた時だった」
私「最初は何かが引っかかってるなって そんな違和感しか感じなかった」
〇女の子の一人部屋
私「7月5日、火曜日」
私「急に生えてきた羽のようなもの 怖くて誰にも話せなかった」
私「でもすこし経って、少しずつ大きくなっているような気がする」
〇教室
私「7月8日、金曜日」
私「今日はプールがあったのを忘れていて、すごくドキドキした」
私「なんとか病欠で休むことが出来たけど もうみんなの前で着替えるのは無理だと思う」
〇女の子の一人部屋
私「7月14日、木曜日」
私「羽が大きくなりすぎて 背中からも違和感が分かるようになってしまった」
私「怖くて学校を休んだ」
私「どうしてこんな事になっちゃったんだろう 羽の感触が気持ち悪い」
〇女の子の一人部屋
私「7月17日、日曜日」
私「部屋から全然出ない私を家族も心配していた」
私「明日から学校が始まる事も嫌だし だから、誰もいない隙を見て部屋を飛び出してしまった」
〇森の中
私「7月18日、月曜日」
私「一人で知らない場所に来た 何故なのか自分でもわからないけど、呼ばれている気がした」
私「住宅ばかりだった家の周りと違って ここは自然ばかりの場所だった」
〇森の中
私「7月21日、木曜日」
私「身体はかゆいし、お金もないしでしんどかった」
私「こんな場所で過ごしていたら死んじゃうのかなって思ったけど 意外と怖さは感じなかった」
私「なんだか段々食欲がなくなっている気がする」
〇森の中
私「7月25日、月曜日」
私「あてもなく道をさまよっていたら 誰かが私を呼ぶ声がした」
私「なんだか懐かしい。お母さんやお父さんの声を期待したけど 声の先にいたのは知らない女の人だった」
私「その女の人も私と同じように羽が身体から生えていた」
〇草原の道
私「7月26日、火曜日」
私「羽が生えた女の人は私に色々と教えてくれた」
私「私は天使といって、選ばれた人間なんだって ここは選ばれた人間が呼ばれる場所なんだって」
私「案内された場所には 私と同じように羽を持った人たちが沢山いた」
〇草原の道
私「8月1日、月曜日」
私「羽が生えた人たちは皆優しかった」
私「いつの間にか、最初に思っていた不安はなくなっていて ここなら安心して生活できるんじゃないかって思い始めていた」
私「気づいた時には、私の羽は自分の身体を覆い隠せるくらい 大きく育っていた」
〇草原の道
私「8月4日、木曜日」
私「羽が一際(ひときわ)大きい人が私に ここでずっと暮らそうと言った」
私「とても驚いたし戸惑いもしたけど 居場所があることが嬉しかった」
私「私はここなら居てもいいんだってそう思えたから」
私「でも、何かが心の奥で引っかかっていた」
〇ソーダ
私「8月5日、金曜日」
私「その日、夢を見た 懐かしい夢だ」
私「私の周りには家族や友達、知っている人が沢山いて みんな笑っていた」
私「私は震えて泣いていた 羽が生えた自分が怖くて仕方がなかった でも・・・・・・」
私「両親の声も、友達の声も、先生の声も みんなの声が大好きだった 私は天使にはなりたくなかった」
〇空
私「8月6日、土曜日」
私「私は逃げた」
私「迎え入れてくれた場所は、心地よくて暖かかったけど 自分を・・・・・・過去を捨てる事は出来なかった」
私「私はこの日、初めて空を飛んだ」
私「怖かったけど空は自由で 風を身体に受けて飛ぶのはとても気持ち良かった」
私「遠くで声が聞こえたけど、誰も私に追いつく事は出来なかった」
〇見晴らしのいい公園
私「8月7日、日曜日」
私「やっと、自分の家を見つける事が出来た」
私「ずうっと飛んでいたせいで、羽は痛くて仕方なかったけど なんとか近くの公園まで降りれた」
私「・・・・・・」
私「でも、疲れてそのまま眠ってしまった」
〇女の子の一人部屋
私「8月8日、月曜日」
私「気が付いた時、私は自分の家のベッドで寝ていた」
私「お母さんとお父さんが私を強く抱きしめて 沢山叱られた」
私「背中の羽はいつの間にか 自分でも気づかないくらいに小さくなっていた」
〇公園のベンチ
私「8月15日、月曜日」
私「それから一週間、いくら飛ぼうとしても羽は動かなかった」
私「私に起こった事は一体何だったんだろう 羽はこれからまた大きくなったりするんだろうか」
私「そんな事を考えていると、ふいに後ろから友達に抱きつかれた」
私「思わず固まってしまう・・・・・・けど、もう大丈夫」
私「私はいつもの調子で、友達に笑顔で振り返った」
私「天使になった日、空は自由で気持ちよかったけど」
私「空は広すぎて寂しいから・・・・・・私にはこの日常がいい」
とても深く面白いです!
若者の様々な行動のメタファーとなっていて、私自身にもグサリと刺さりました。主人公が淡々と事実経緯を述べる展開、でもちゃんと感情豊かな塩梅が好きです!
日常に不満や息苦しさを感じて新興宗教のような場所に逃げ込んでも解決にはならず、やはり安住の地は家族や友達がいる場所なんだという現代社会のお伽話なのかも。自分から逃げるために生えてきた天使の羽には意味がなく、それに気づいた今は必要がない、という感じのラストがいいですね。
素敵なお話でした☺️
羽が生えたらと思うとゾッとしますが、主人公の気づきがテンポ良く展開されて、とても読みやすかったです🌟