終末のクリスマス

ぐんまけん

終末のクリスマス(脚本)

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〇黒
  Day_14

〇殺風景な部屋
  彼女は泣いていた。
  さめざめと。
  僕は彼女を抱きしめることも
  頬を伝う涙さえ拭うことすらできなかった。
  目の前に映っている彼女と僕の距離は
  あまりにも遠く。

〇黒
  Day_1

〇秘密基地のモニタールーム
「助けてください!」
  いきなり話しかけられて、心底肝が冷えた。
  こんな廃施設に誰がいるのか。
  振り返るとディスプレイの電源がついていた。

〇殺風景な部屋
マリ「助けてください!」
  僕は警戒する。何かの罠かもしれない。
「・・・いつから?」
マリ「え?」
「いつから閉じ込められてるの?」
マリ「えっと、正確にはわからないけど」
マリ「大体、40年前から」

〇黒
  Day_4

〇廃ビル
  僕はマリに言われたとおり階段を下っていった。
「ここもだめか」
  やはり、どの通路も荒らされて瓦礫で埋まっていた。
  とてもじゃないけど、マリのいる部屋までは辿り着けそうになかった。

〇秘密基地のモニタールーム
  管理室に戻るとマリはこちらに気がついた。

〇殺風景な部屋
マリ「どうだった?」
「・・・通路は全部瓦礫で埋まってて、僕一人じゃとても」
マリ「そっか」
「ごめん」
マリ「え? なんでタクトが謝るの?」
「だって、僕何もできなかったし」
マリ「そんなことないよ!  ちゃんと助けてくれようとしたし 嬉しかった」
「うん・・・」
マリ「そんなことよりさ!  教えてよ。今世界ってどうなってるの?」

〇黒
  Day_7

〇殺風景な部屋
マリ「疑問に思ったんだけど」
「何?」
マリ「タクトって何歳なの?」
「18だけど」
マリ「そっか、私のほうがお姉さんだ」
「そういうマリは何歳なんだよ」
マリ「私は20歳だよ」
「20歳かあ」
「うん?待てよ」
「マリって40年コールドスリープしてたから」
「40+20で実際は」
マリ「だああああ!」
マリ「私はコールドスリープしてたから20歳のままなんです!」

〇黒
  Day_9

〇殺風景な部屋
  マリは何でも知っていた。
  僕が今生きている世界のこと。
  なぜこんな世界になってしまったのか。
マリ「戦争がね、あったの」
「戦争・・・」
マリ「うん。でも、私は最後までは知らない」
マリ「戦争が起こってからすぐ、父にコールドスリープするように言われて」
「どうして戦争は起こったの」
  マリは少し考えてから続けた。
マリ「人が、人を思わなくなったから・・・かな?」
「えっと」
マリ「具体的じゃなくてわかりにくいよね」
「そうだね」
マリ「私が生きてた時代ではね、みんな自分の言葉を世界に自由に発信できたんだ」
マリ「世界中の人と誰とでも会話できた」
「素敵だね」
マリ「うん。とっても素敵だった」
マリ「でも、それは人類には早すぎたの」
マリ「みんなお互いの良さを認めようとしてた。でも、その価値観にみんな押しつぶされてしまった」
マリ「正しい価値観。正しい行い。それ以外は全て間違ってる」
マリ「多様性という名前の絶対の価値観が人々から多様性を奪っていった」
  マリは僕を見つめて離さない。
マリ「それからどうなったと思う?」
「・・・・・・」
マリ「多様性の名のもとに戦い始めた。自分の価値観を認められない人間は間違ってるって」
マリ「最初は国同士で戦った。その後は街や村が。最後には家族同士が」
マリ「みんな一人ぼっちになっちゃった」
「そっか・・・」
マリ「父はよく言っていた。 これは『人の世紀の終わり』だって」
マリ「父は研究者で、私を施設に匿ってくれたの。でも、暴動が起こって」
「それで、君はコールドスリープしたのか」
マリ「そう、安全な世界がやってくるまで」
「安全か・・・」
マリ「タクトの話を聞いてる限り、まだまだ遠そうだね」

〇黒
  Day_12

〇殺風景な部屋
マリ「そういえば3日後クリスマスなんだね!」
「くりすます?」
マリ「え!クリスマス知らないの?」
「あー・・・うん」
マリ「そっか、そういう文化も無くなっちゃうんだ」
「なにかするの?」
マリ「大きな木に飾り付けして、サンタクロースっていうおじさんにお願いするの」
「お願いってどんな?」
マリ「欲しい物とか」
「欲しいものねぇ」
マリ「タクトは欲しい物はなにかないの?」
「保存できる食べ物とか」
マリ「もう少し楽しいものとか!」
「楽しいもの・・・」
  僕は少しだけ考えた。
「それってモノじゃなきゃだめなの?」
マリ「うーん。どうだろ」
マリ「ちなみにどんなお願い?」
「・・・マリと画面越しじゃなくて 会って話したい」
マリ「・・・・・・」
  言わなきゃよかった。
マリ「私も」
マリ「私もだ」
マリ「私もタクトと会って話したい」
「・・・クリスマスまで後3日だっけ」
マリ「そうだけど」
「3日・・・」
「クリスマスには間に合わないかもしれないけど マリのこと絶対にここから出すから」
マリ「・・・」
マリ「うん!待ってるね!」

〇黒
  Day_14

〇殺風景な部屋
  彼女は泣いていた。
  さめざめと。
  僕は彼女を抱きしめることも、頬を伝う涙さえ拭うことすらできなかった。
  目の前に映っている彼女と僕の距離は
  あまりにも遠く。
マリ「ごめんね。 もう食料も通信するだけのエネルギーも残ってないんだ」
「なんでマリが謝るんだよ!」
マリ「だって、今日クリスマスイブなのに」
マリ「こんな悲しい話、したくなかった」
「・・・コールドスリープ」
マリ「え?」
「もう一度コールドスリープするだけのエネルギーは?」
マリ「できるけど」
マリ「怖い」
マリ「もう二度と起きられないんじゃないかって」
マリ「一人で死にたくない!」
「そんなことにはならないよ」
「僕が迎えに行くよ」
「僕一人じゃマリを助けられなかった」
「でも、僕が誰よりも強くなって」
「人と人がもう一度手をつなぎあえるようにするから」
「だから・・・」
マリ「・・・・・・」
マリ「わかった」
マリ「タクトを信じる」
マリ「私、待ってるから!」

〇黒
  Day_1111

〇黒
  1111日目
  彼女と会ってからそれだけの時間が経った。
  マリとの記憶を失わないように僕は刻み込んでいった。
  ノートに
  ビルの壁に
  ときに自分自身にも。
  マリと出会ってから1111日目。
  迎えに行くと誓ったあの日から。
  僕は

コメント

  • ポストアポカリプスに灯った小さな希望の火が再び消えていくまでの儚い交流が切ない。どんな世界になっても人の心があるかぎりクリスマスはやってくる。そんなことを信じたくなるようなストーリーでした。

  • 逢えない二人が悲しくて…思い合っていても、どうにもならないことはありますよね。
    再びコールドスリープに入った彼女が、目を覚ます時は来るんでしょうか。

  • 人と人同士が傷つけ合う戦争、、、とても悲しいですね。今の現代には二度とそのようなことが起こらないように祈ります。とても続きが気になる話して続き楽しみに待ってます。

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