第15話 『ハッピーバースデー』(脚本)
〇応接室
鍵原「須藤さんがアリスさんを保護した後、崖の下にあった亀岡の遺体が見つかって・・・」
鍵原「アリスさんの行動は当然の正当防衛ですし、警察に罪は問われませんでした」
犬伏徹「そして自分の意志でここに戻ってきた」
鍵原「ええ」
犬伏徹「美琴ちゃんのことは──」
鍵原「一切口にしませんでした」
鍵原「ただ命日になるたび、お墓参りに行っていたことだけは知っています」
犬伏徹「そうですか・・・」
鍵原「彼女はここで、面倒見の良かった美琴ちゃんの代わりをしようとしたのだと思います」
鍵原「だから──」
犬伏徹「?」
鍵原「今、アリスさんが刑事をやっていると聞いて妙に納得しました」
鍵原「生活安全課だけですよね? 事件が起こる前に刑事が動けるのは」
犬伏徹「・・・はい」
鍵原「おそらく彼女は、誰からも手を差し伸べられない子どもたちの、最後の希望になるのでしょうね」
犬伏徹「最後の、希望・・・」
鍵原「私がこんなことを言うのもなんですが、彼女のことをこれからもよろしくお願いします」
犬伏徹「・・・・・・」
〇大会議室
須藤清孝「アーちゃん、差し入れ持ってきたぞ」
佐川アリス「何味ですか?」
須藤清孝「激辛豚キムチ。ちなみに特盛サイズ」
佐川アリス「激辛・・・なら水持ってきます」
須藤清孝「ははは。そういうとこは素直だな」
〇大会議室
須藤清孝「アーちゃん、あんまり無理すんなよ」
佐川アリス「何がです? 特盛なら3つまで行けますけど」
須藤清孝「そうじゃない、捜査だよ」
佐川アリス「ああ」
須藤清孝「あんまり寝てないだろ?」
佐川アリス「須藤さんからもらった眠剤がよく効くんで、寝られない時はそれで」
須藤清孝「・・・・・・」
佐川アリス「人のことより、自分はどうなんです?」
須藤清孝「何がだ」
佐川アリス「咳ですよ。 ずいぶん長引いてるじゃないですか」
須藤清孝「バカ言うな。こんな──ゴホッゴホッ」
佐川アリス「言ってるそばから」
須藤清孝「うるさい。それ食べたら、家帰れ」
佐川アリス「綾子に調査頼んで報告待ちなんです。 なので須藤さんお先どうぞ」
須藤清孝「俺はまだ──」
佐川アリス「歳なんですからご自愛ください」
須藤清孝「ったく、ジジイ扱いしやがって」
そう言って立ち上がり、部屋を出ていこうとする須藤。
アリスはカップ麺の残りを食べようとするが、須藤の視線に気づく。
佐川アリス「・・・須藤、さん?」
須藤清孝「一つ言い忘れたことがあったんだ」
佐川アリス「?」
須藤清孝「ハッピーバースデー」
佐川アリス「あ、今日あたし・・・誕生日か」
〇古い倉庫
亀井綾子「・・・だからぁ、電話してこないでって言ったよね?」
頼む。話だけでも聞いてほしい
亀井綾子「そんな暇ないの」
亀井綾子「私はアリスさんに頼まれた仕事で忙しいんだから」
頼まれた?
亀井綾子「そう。犬くんの代わりに。 私が新パートナーだから」
パートナーってお前──
亀井綾子「あっ! ちょっと待った!」
綾子が倉庫の方を見ると、男の人影が中に入っていくのが目に入る。
亀井綾子「そういうわけで私忙しいから。またね」
っておい! ちょっと待て――
〇高級マンションの一室
佐川アリス「・・・結局、綾子から連絡なかったな」
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