エピソード1(脚本)
〇シックな玄関
いつの間に降ったのか、雪が積もっていた。
去年の冬に盗んだブーツ、まだ奥にあったはず。
半座 衣流「よい、しょ」
半座 衣流「・・・・・・うわ」
下駄箱は靴が散乱していた。
乱暴にかき分け、奥からブーツを取り出す。
うん。少しキツいけど、履ける。
〇街中の道路
いつも通り、ドアを開け、鍵を閉め、トートバックにナイフを入れ、少し先のコンビニへ向かう。
〇コンビニの店内
いつも通り、「いらっしゃいませー」の言葉もない。まぁ、慣れたこと。
〇コンビニの雑誌コーナー
雑誌コーナーには、中年の男性が一人いた。
あ、新作でてる。
今日はこれにしよ。
そして、またいつも通り、トートバックに本を入れる。
中年の男性は・・・・・・うん。やっぱり、今日も気付かれない。
〇コンビニの店内
フードコーナーで、「新鮮!お買い得!」のシールがはられたサンドイッチを、また、トートバックに入れる。
そして、またいつも通り、店を出る。
〇コンビニ
帰るとき一応、店員の前で大きく手を振った。でも、やっぱり気付かれない。もうこんなの、何十年続いただろう。
〇アパートのダイニング
私は、気配がない。影が薄いというより、もう、存在自体がないのかもしれない。
─────────過去────────
自分の気配がないと知ったのは7歳の時。
お母さんは、私が小さい頃から病弱で、私が家事を手伝っていた。
お父さんは、浮気して、この家を出て行った。今思えば、ほんとにクソオヤジだわ。
家を出ることはほぼなかった。
あったとしても、お母さんと一緒に薬屋に行く程度。
それでも、私はお母さんが好きだった。
そんなお母さんも、私が5歳の時、とうとう死んでしまった。
でも、不思議と、なにも感じなかった。涙も出なかった。今もそうだけど、私は感情もないのかもしれない。
〇葬儀場
お母さんの葬式のとき、私は一人で後ろの方に座っていた。
でも、誰も、何も話しかけたかった。話しかけるどころか、見向きもしなかった。
そのころから、あぁ、自分には気配がないんだなって思い始めた。
〇一戸建ての庭先
でも、確信はなかったから、家の外の道路で、走り回ったり、変なダンスをしたり、時には人に触ってみたりもした。
だけど、誰も見向きもしない。たくさんの人が通ったけど、誰一人、私に気付くことはなかった。
〇教室
だけど、私が声をかけて触れることで、ようやく相手も気付くようになる。
最初は、大変だったし、涙が出そうになるときもあったけど、話しかけた。
でも・・・それも、9歳の頃に全てがどうでも良くなった。
小学校も、それ以来行っていない。
みんなの反応をこっそり見てたけど、誰一人、私の存在など最初からなかったかのように暮らしていた。
〇アパートのダイニング
そんな時、ふと犯罪をしてみたいと思った。最初は何度かとどまったけど、人間、だめと言われるとよけいやりたくなるものらしい。
〇コンビニの店内
最初は、近くのコンビニのオレンジジュースを盗んだ。気づかれるか、気づかれないか、ドキドキして冷や汗をかいたのを覚えてる。
でも、バレることはなかった。
〇街中の道路
それからというもの、いろんな所で盗みをした。
時には、足をかけて人を転ばせたり、後ろから突き飛ばして骨折させたこともある。
私ってすごい。
こんな風に、商品が減っていたり、なにもないのにつまづいたりするなど、原因不明のちょっとした事件・事故はほとんどが私だ。
そのおかげで、食料や暇には困らない。
〇街中の道路
だから今日も、いつも通り、ドアを開け、鍵を閉め、トートバックにナイフを入れ、少し先のコンビニへ向かう。
〇コンビニの店内
いつも通り、食べ物を選び、それを手に取り、トートバックに入れ・・・『ちょっと君!』・・・・・・。
木島 拓也「今、トートバックに何か入れたよね。見せてもらうよ」
コイツ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで、、私のこと、見えるの。
つまらない作品だと全く思いませんでした!
とても引き込まれて、何でこの子はそんなにも気配が無いのだろうと思いながら読んでいたら、最後には普通に万引きがバレていて、何でこの人にはわかるんだろう?と、とても続きが気になりました!