番外編 それぞれのペースで(脚本)
〇西洋の城
〇おしゃれな食堂
勇者マリー「いよいよ明日かあ」
勇者マリー「なんか感慨深いよね」
第一王子ミシェル「そうですね・・・」
勇者マリー「リュテスに初めて来たときは こんなことになるなんて思わなかったけど」
第一王子ミシェル「ええ・・・わたしもです」
勇者マリー「ミシェル様、緊張してない?」
第一王子ミシェル「はい・・・」
勇者マリー「ほんとに?」
第一王子ミシェル「・・・・・・」
第一王子ミシェル「・・・正直に申し上げますと 緊張で目眩がしています」
勇者マリー「一生に一度のことだもんね」
勇者マリー「でも、本番で倒れないでよ?」
第一王子ミシェル「あなたが隣にいてくださるなら わたしはだいじょうぶです」
勇者マリー「うん、まかせて」
勇者マリー「あたし、本番に強いから」
第一王子ミシェル「頼もしいです」
第二王子クレール「・・・・・・」
第一王子ミシェル「クレール様? どうされましたか?」
第二王子クレール「いや・・・」
勇者マリー「緊張で眠れないんじゃない?」
第二王子クレール「そういうわけではない」
第二王子クレール「ただ・・・」
第二王子クレール「・・・いや、なんでもない」
第一王子ミシェル「眠れずとも せめて身体をお休めになってください」
第一王子ミシェル「明日の主役はクレール様なのですから」
第二王子クレール「ああ、そうしよう」
第二王子クレール「ミシェル殿とマリーも早く寝るがいい」
第一王子ミシェル「ええ、おやすみなさい」
勇者マリー「クレールの言うとおり あたしたちももう休もっか」
勇者マリー「明日のクレールの戴冠式 頑張ろうね、ミシェル様」
第一王子ミシェル「はい!」
〇空
〇ヨーロッパの街並み
勇者マリー「戴冠式、すごかったね」
第一王子ミシェル「ええ、本当に」
勇者マリー(ゲームだと戴冠式って トラブルが起きることが多いけど)
勇者マリー(なにも起きなくてよかった)
第一王子ミシェル「あの、マリー様・・・」
第一王子ミシェル「・・・せっかくですから 町を見て回りませんか?」
勇者マリー「うん!」
勇者マリー「外国のお祭りって 一度行ってみたかったんだよね」
宮廷魔導師リゼット「・・・・・・」
勇者マリー「あっ」
第一王子ミシェル「リゼットも来てたのか」
宮廷魔導師リゼット「・・・こんにちは ミシェル殿下、マリー様」
勇者マリー「これから町を見て回るんだけど リゼットさんも一緒にどう?」
宮廷魔導師リゼット「・・・せっかくのお誘いですが 少し用事がありますので」
勇者マリー「そうなんだ?」
勇者マリー「残念だけど、しょうがないね」
第一王子ミシェル「夜には合流してくれるはずですよ」
第一王子ミシェル「この祭りは明日の朝まで続きますから」
第一王子ミシェル「それまでには用事も終わってるだろ?」
宮廷魔導師リゼット「・・・そうですね」
宮廷魔導師リゼット「では・・・」
勇者マリー「用事ってなんだろ」
第一王子ミシェル「さあ・・・」
第一王子ミシェル「今はわたしたちだけで回りましょうか」
勇者マリー「そうだね・・・あっ」
勇者マリー「おいしそうなお菓子がある!」
第一王子ミシェル「あれはリュテスの伝統菓子で・・・」
宮廷魔導師リゼット(まさかミシェル・・・ わかっていないのか?)
宮廷魔導師リゼット(・・・なんにせよ 夜まで時間を潰さないとな)
〇空
〇謁見の間
皇帝トビアス「ただいま」
皇女マイカ「おかえり、お父さま」
皇女マイカ「クレールくんの戴冠式、どうだった?」
皇女マイカ「お姉ちゃんとミシェルくんが 玉座の前まで冠を運んだんでしょ?」
皇女マイカ「あたしも行きたかったなー」
皇帝トビアス「皇帝と皇女が2人揃って 国を空けるわけにはいかないからな」
皇女マイカ「お姉ちゃん、ちゃんとやれてた?」
皇帝トビアス「ああ」
皇帝トビアス「隣に立つミシェル王子は ずいぶん緊張しているようだったが」
皇女マイカ「そっか、よかった」
皇帝トビアス「おまえの結婚式も あれぐらい立派な式にしたいものだ」
皇女マイカ「気が早いなあ」
皇帝トビアス「おまえは皇女なのだぞ 婿を迎えて帝国の民を導かなければ」
皇女マイカ「うーん」
皇帝トビアス「ミシェル王子はどうだ?」
皇女マイカ「えっ」
皇帝トビアス「リュテスとの同盟にも繋がるし 悪くないだろう」
皇女マイカ「嫌に決まってるじゃん」
皇帝トビアス「おまえはミシェル王子に 好意的だと思っていたが」
皇女マイカ「お姉ちゃんのことを好きな人は さすがに嫌でしょ」
皇女マイカ「顔は好きだけど」
皇帝トビアス「は・・・?」
〇噴水広場
第一王子ミシェル「みんな、楽しそうですね」
勇者マリー「ミシェル様は?」
第一王子ミシェル「えっ」
勇者マリー「楽しんでる?」
第一王子ミシェル「もちろんです」
勇者マリー「けど他の人のことばっか気にしてない?」
第一王子ミシェル「リュテスは長らく緊張状態で 祭りなどできませんでしたから」
第一王子ミシェル「こうやってみんなが楽しんでくれて うれしくて・・・つい」
第一王子ミシェル「お気に障りましたか?」
勇者マリー「そんなことはないけど」
勇者マリー(もう少し自分のこと考えればいいのに)
勇者マリー「ミシェル様らしいなーって思っただけ」
第一王子ミシェル「えっ」
第一王子ミシェル「それはどういう意味ですか?」
勇者マリー「どういう意味って・・・えーっと」
勇者マリー「あっ」
勇者マリー「あっちにおもしろそうな店があるよ!」
第一王子ミシェル「あ・・・待ってください!」
〇謁見の間
皇女マイカ「気づいてなかったの?」
皇帝トビアス「・・・うむ」
皇女マイカ「皇帝なんだから 人の機微には敏感でなくちゃ」
皇帝トビアス「・・・そうだな」
皇帝トビアス「ミシェル王子は勇者を望んでいるのか?」
皇女マイカ「それはどうだろ?」
皇女マイカ「好きだからって 恋人になりたいとは限らないし」
皇帝トビアス「では勇者はどうなのだ」
皇女マイカ「悪い気はしてないと思うけど」
皇女マイカ「お姉ちゃんの恋愛経験値は 中3レベルだからなあ」
皇女マイカ「見た感じミシェルくんも同レベルだし」
皇女マイカ「とにかく、そういうわけだから ミシェルくんとは結婚しないよ」
皇帝トビアス「そ、そうか・・・」
〇ヨーロッパの街並み
〇怪しげな酒場
勇者マリー「かんぱーい!」
第一王子ミシェル「一気に飲んだら身体に悪いですよ」
勇者マリー「いやー、つい」
勇者マリー「じゃあまず、枝豆とチキン南蛮・・・」
勇者マリー「・・・があるわけないから、えーっと」
勇者マリー「マリネとリエットとバゲットかな」
勇者マリー「すいませーん」
第一王子ミシェル「聞こえていないようですね」
勇者マリー「ちょっと頼んでくるね」
宮廷魔導師リゼット「ミシェル、なぜわたしを呼んだ?」
第一王子ミシェル「用事が済んだら合流するって 言ってたじゃないか」
宮廷魔導師リゼット「せっかく気を回したのに」
宮廷魔導師リゼット「2人きりになれる機会は少ないだろう?」
第一王子ミシェル「えっ・・・」
宮廷魔導師リゼット「今は城で暮らしてらっしゃるが 今後どうなるかわからないだろ」
宮廷魔導師リゼット「現状に甘んじていないで一歩踏み出・・・」
第一王子ミシェル「ちょっと待ってくれ!」
第一王子ミシェル「リゼット・・・ 僕の・・・その」
第一王子ミシェル「僕の気持ちにも気づいてるのか・・・!?」
宮廷魔導師リゼット「気づかれていないと思っていたのか?」
宮廷魔導師リゼット「みんな知ってるぞ」
第一王子ミシェル「みんなって!?」
宮廷魔導師リゼット「みんなはみんなだ」
第一王子ミシェル「い・・・いつから?」
宮廷魔導師リゼット「マリー様が初めてリュテスに来た日だな」
第一王子ミシェル「最初からじゃないか!」
〇戦線のテント
騎士団長ヴァレリー「・・・もしや殿下」
騎士団長ヴァレリー「勇者殿のことが気がかりで 眠れなかったのですか?」
第一王子ミシェル「・・・ヴァレリー いったい、なんの話を・・・」
〇怪しげな酒場
第一王子ミシェル「そうか! だからヴァレリーはあんなことを・・・!」
第一王子ミシェル「ああー・・・!」
勇者マリー「頼んできたよ!」
勇者マリー「どうしたのミシェル様」
勇者マリー「もう酔っちゃった?」
宮廷魔導師リゼット「お気になさらず そのうち治ります」
勇者マリー「ならいいけど」
宮廷魔導師リゼット(本当に気づかれていないつもりだったのか)
宮廷魔導師リゼット(おそらくマリー様も気づいていると思うが)
宮廷魔導師リゼット(この様子だと教えないほうがいいだろうな)
第二王子クレール「ここにいたのか」
第一王子ミシェル「クレール様? なぜここに・・・」
第二王子クレール「わたしが来たらまずいのか?」
第一王子ミシェル「いえ、そんなことは・・・」
勇者マリー「クレールの様子、おかしくない?」
宮廷魔導師リゼット「すでにお酒を飲まれているようですね」
第二王子クレール「さあ、飲むぞ!」
第一王子ミシェル「は、はい」
勇者マリー「・・・だいじょうぶかな」
〇空
〇怪しげな酒場
第二王子クレール「どんどん飲め! 今日はわたしのおごりだ!」
第一王子ミシェル「クレール様、少しペースを落として・・・」
勇者マリー「テンション高いなー」
宮廷魔導師リゼット「戦後処理、帝国との同盟 そして今日の戴冠式」
宮廷魔導師リゼット「一通り終わって安心されているのでしょう」
第二王子クレール「ミシェル殿、グラスが空だぞ!」
第一王子ミシェル「お、恐れ入ります」
第一王子ミシェル「クレール様もどうぞ」
第二王子クレール「よくない!」
第一王子ミシェル「えっ」
第二王子クレール「よくないぞ、ミシェル殿!」
第一王子ミシェル「無作法がありましたか?」
第二王子クレール「いつまでクレール様などと呼ぶ気だ!」
第二王子クレール「わたしは今日の戴冠式を以て王になった」
第二王子クレール「王位を脅かさないというアピールは もう必要ないだろう!?」
第一王子ミシェル「そ、そうですね」
宮廷魔導師リゼット「酔ってますね」
勇者マリー「自分もミシェル殿って呼んでたじゃんね」
勇者マリー「自分から歩み寄らないくせに なんか図々しくない?」
第二王子クレール「聞こえてるぞ!」
勇者マリー「うわっ」
第二王子クレール「リゼットが城に来たとき ミシェル殿はなんて言ったと思う」
〇貴族の応接間
第一王子ミシェル「きみ、僕の従妹なんだろ?」
第一王子ミシェル「なのになぜ他人行儀なんだ?」
リゼット「ミシェル様は王のご子息ですから」
第一王子ミシェル「せめて、2人だけのときは 家族として接してほしい」
第一王子ミシェル「ダメかな?」
リゼット「・・・わかったよ、ミシェル」
〇怪しげな酒場
宮廷魔導師リゼット「知っておられたのですか」
第二王子クレール「なぜ同じことをわたしに言わない!」
第一王子ミシェル「す、すみません」
勇者マリー「身分が高いほうが言うべきじゃないの」
第二王子クレール「マリーもそう思うだろ!」
勇者マリー「なんであたし?」
第二王子クレール「ミシェル殿、今こそ踏み出せ!」
第二王子クレール「マリーも待ってるぞ!」
勇者マリー「ちょっと!」
第一王子ミシェル「急に言われましても・・・」
宮廷魔導師リゼット「でも、確かにいい機会だな」
宮廷魔導師リゼット「マリー様」
宮廷魔導師リゼット「わたし、同年代の友人がほしかったのです」
宮廷魔導師リゼット「これから友人として接してもいいですか?」
勇者マリー「もちろん!」
勇者マリー「じゃ、あたしもリゼットって呼ぶね」
宮廷魔導師リゼット「よろしく、マリー」
「・・・・・・」
宮廷魔導師リゼット「ミシェル!」
第一王子ミシェル「いてっ!」
宮廷魔導師リゼット「わたしが作った流れになぜ乗らない!」
第一王子ミシェル「脛を蹴るなよ!」
第一王子ミシェル「その・・・まだ心の準備が」
第二王子クレール「我が兄ながら奥手すぎるな」
第二王子クレール「ここはマリーから行け!」
勇者マリー「このガキ・・・」
勇者マリー「ま、確かに いつまでもお互い様づけってのもね」
勇者マリー「じゃあ・・・」
勇者マリー「・・・・・・」
勇者マリー「・・・ごめん やっぱ待って」
第二王子クレール「わたしやリゼットへの対応とは ずいぶん違うな、マリー?」
勇者マリー「うっさいなー、もう!」
勇者マリー「店員さーん! 一番高いワインくださーい」
第二王子クレール「おい!」
第一王子ミシェル「急いで距離を詰めることはないですよ」
第一王子ミシェル「わたしたちのペースでやりましょう」
勇者マリー「そ、そうだね ミシェル様・・・」
宮廷魔導師リゼット(・・・前途多難だな)
ぷんすこクレ様よ……😇
1番高いワインを注文されて「おい!」な庶民感よ……😇
なんだか、可愛さと壮大さの塩梅が良い作品でしたなぁと思います。と、ゲスいキャラもいいスパイスで!😊
最高のボーナストラック、嬉しすぎです!
恋愛経験値が中3レベルの2人のために割かれた番外編、もう最高です!絡み酒のクレール様、安定の毒舌の舞花さんを含め、各人の本音が見られるお話に笑いっぱなしでした。
各キャラが魅力的なこの物語、サイドストーリーやアフターストーリーをもっと読みたいという欲張りな気持ちが湧き上がってきました!