第13話 『美琴』(脚本)
〇墓石
佐川アリス「長いこと顔出せなくてごめんな、美琴ちゃん」
アリスが古びた墓石の前で手を合わせる。
墓石には「美琴」の文字が刻まれていた。
佐川アリス「あれから二十年か」
佐川アリス「今のあたしなら、守ってあげられたのに──」
〇応接室
美琴「明日って、ほんまですか!?」
鍵原「亀岡さん、今日近くに泊まるみたいでね」
鍵原「予定より少し早いけど、美琴ちゃんが問題なければ明日にでもって」
美琴「うちは問題なんてあらへん!」
亀岡将司「良かったぁ。 実はもう、美琴ちゃんの部屋は出来てるんだ」
亀岡将司「家内も、早く会いたいって楽しみにしてるよ」
美琴「へへへ。うちも楽しみです!」
佐川アリス「美琴ちゃん。やだよ・・・」
美琴「アホ。しゃーないやろ」
亀岡将司「この子は?」
鍵原「最近入った子なんですけど、見ての通り、美琴ちゃんにべったりでして」
亀岡将司「君、お名前は?」
佐川アリス「・・・・・・」
美琴「おい。アリス。なんか言えや」
亀岡将司「へえ。アリス・・・変わった名前だね」
美琴「こ、こいつ緊張しとんのです! いつもはもっとニコニコしとんのに」
亀岡将司「アリスちゃんは、美琴ちゃんと一緒にいたいのかな?」
亀岡の言葉にアリスは黙って頷く。
亀岡将司「そうか・・・ならアリスちゃんも、うちに迎えなくては、ですね」
美琴「それホンマですか!?」
亀岡将司「手続きもあるし、美琴ちゃんと一緒にとはいかないでしょうけど」
亀岡将司「明日は無理でも、いつかアリスちゃんも迎えに──」
佐川アリス「触らないで!!」
亀岡がアリスの頭を撫でようとするが、アリスは両手で彼を突飛ばした。
佐川アリス「!!」
美琴「亀岡さん、これ落とし──」
亀岡将司「僕の手帳に触るな!」
美琴「・・・っ!」
美琴「・・・すんません」
佐川アリス「美琴ちゃん、私いま──」
美琴「うっさい。あんたは亀岡さんに謝れ」
佐川アリス「・・・・・・」
美琴「アリス! ちょっと待てや!」
鍵原「なんだか申し訳ありません」
亀岡将司「いや、僕のほうこそ。 急に大きな声を出してすみません」
亀岡将司「あの子には嫌われちゃったかなぁ」
〇木の上
美琴「あんた、アホなんか?」
佐川アリス「・・・・・・」
美琴「玉の輿ってだけやない、うちらが引き取られれば、ずっと一緒におられるんやで」
佐川アリス「・・・・・・」
美琴「ここでは、いつかはみんなバラバラになるの知ってるやろ?」
佐川アリス「美琴ちゃん。私ね・・・写真見た」
美琴「写真?」
佐川アリス「さっき、あのおじさんが手帳に入れてたの」
佐川アリス「血の付いた何かが見えた。 多分、人の足だと思う」
美琴「なんや、それ。写真全部見たのか?」
佐川アリス「・・・ううん。チラっと見えただけ」
美琴「なら適当なこと言うなや!」
美琴「亀岡さんがそんな写真持ってるわけないやろ!」
佐川アリス「でも怖かった!」
美琴「アホ! アリスのバカ!」
美琴「怖いってなんや! あんたの見間違えや!」
佐川アリス「・・・・・・」
美琴「あんたのせいで、うちまで嫌われたらどうしてくれるんや!」
佐川アリス「美琴ちゃん・・・私・・・」
美琴「もう知らん。勝手にしい。 今日であんたとは絶交やからな」
佐川アリス「・・・・・・」
〇大ホールの廊下
部屋をこっそりと抜け出したアリスは、廊下で電話をかけている。
・・・あーちゃんか。待ってたぞ
佐川アリス「うん」
昼間頼まれた件だけどな、調べたら色々気になることがあった
佐川アリス「・・・・・・」
亀岡って男は、過去にも別の養護施設で二人の養子を迎えているが、二人とも事故死しているんだ
佐川アリス「!」
ただ事件性がないから、警察は動けない
佐川アリス「須藤さん。私は──」
いいかい、アーちゃんが頭いいのはよくわかっているつもりだ
でもアーちゃんはまだ子どもだからね
佐川アリス「・・・・・・」
だから俺に任せてくれ。な?
俺も明日、そっちに行くから
佐川アリス「・・・うん」
〇児童養護施設
鍵原「美琴ちゃん、元気でね」
美琴「おじちゃんもやで」
亀岡将司「じゃあ美琴ちゃん。車に乗ろうか」
美琴「・・・・・・」
亀岡将司「どうかした?」
美琴「いや、あいつ送りもせんのやなって」
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