クリスマスにサンタクロースはプラスドライバーで木ねじを外す

銀次郎

反町第三小学校 中島先生と林先生の話 その2(脚本)

クリスマスにサンタクロースはプラスドライバーで木ねじを外す

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〇散らかった職員室
林多恵「・・・ってタイトル、どう思います?」
中島さゆ「は? なんてタイトルだって?」
林多恵「ですから『クリスマスにサンタクロースはプラスドライバーで木ねじを外す』ってタイトル、どう思います?」
中島さゆ「どうも思わないけど・・・」
林多恵「いいタイトルだと思うんですけどねー」
中島さゆ「タイトル? それってもしかして・・・」
林多恵「クリスマス会に行う子供達の演劇ですよ。だって今はその打合せをしてるんじゃないですか」
中島さゆ「そりゃそうだけどさ、そのタイトルってどうなのよ?」
林多恵「どうなのって?だめですか?」
中島さゆ「だめっていうか・・・ちなみにそれって、 どんな内容なの?」
林多恵「それはですね、サンタクロースがクリスマスにやってきて、プラスドライバーで木ねじをはずして・・・」
中島さゆ「待って待って、タイトルのまんまじゃない?」
林多恵「そうですよ」
中島さゆ「なんか内容をそのままタイトルにするって、ちょっと安易じゃない?」
林多恵「中島先生、いまはこれが主流なんですよ」
中島さゆ「主流?」
林多恵「タイトルで内容がわからないと、読者に手に取ってもらえないじゃないですか?」
中島さゆ「読者・・・とは?」
林多恵「いいですか、今のラノベ業界は従来のような作家の自慰的なタイトルの付け方ではダメなんです!」
林多恵「緩慢で貧相なユーザーの創造力と知性を補うために、タイトルだけで内容が読み取れるように努力をですね・・・」
中島さゆ「なぜラノベ業界の話になっているのか‥しかもさらっと2つくらい毒を吐いてるし」
林多恵「今の出版業界の苦境をどう乗り切るか!それはこのタイトルの付け方にかかっているんです!」
林多恵「最近の書店の店頭を見ましたか!もはやタイトルだけで売ってしまえという狂気の沙汰としか思えない自己啓発本の山を!」
中島さゆ「あー、毒が止まってないなー」
林多恵「だからこそ私も業界ために、このクリスマス会向けにこのタイトルをつけてみたんです」
中島さゆ「いや、だから子供たちの演劇会だから。 出版業界関係ないから」
林多恵「まあ、そうなんですけどねー、てへ」
中島さゆ「てへ、じゃねえよ。なんかでも、そういったタイトルの付け方って・・・ほら、あれもそうじゃなかった?」
林多恵「あれとは?」
中島さゆ「AV」
林多恵「はい?なんですって?」
中島さゆ「ラノベのタイトルの付け方はAVといっしょだなぁって。ほら、AVもタイトルだけで内容がわかるようになってるじゃない?」
林多恵「じゃない?って言われましても・・・」
中島さゆ「例えば「今流行り、街中を■■■■・■■■■で歩いてる■■■女子を探せ!! 見つけた女子に■■■■■■■■■の取材と言って」
中島さゆ「■■■■■■■のお願い! 困った■■に■■■■■でお願いし■■に■■■■・■■チェック!!実は■■が■■■■の■な女子は」
中島さゆ「■■■■OKか!?」ってタイトルの作品があるんだけど、これなんてタイトルだけで内容がわかるじゃない?」
林多恵「ほとんど伏字なので何がなにやら・・・それに何もこんな事に3コマもつかわなくても・・・あの、よくご覧になるんですか?AV?」
中島さゆ「いや、その、よくっていうか、たまたま、ほらね、ちょっと知識としてー」
林多恵「あーそうですかそうですか」
中島さゆ「なに!その心のこもって無い返事は!」
林多恵「ただ仰ることはわかります。やはりタイトルと言うのは、ある程度の内容を伝えたほうが、見ようという気持ちをそそりますから」
中島さゆ「まあ確かにね、それは言える。たださっきのあのタイトルは・・・」
林多恵「『クリスマスにサンタクロースはプラスドライバーで木ねじを外す』ですか?」
中島さゆ「うん、なんかさ」
林多恵「何か気になります?」
中島さゆ「なんか最近つぶれ始めた高級食パン屋さんの店名みたいで」
林多恵「・・・中島先生もなかなか毒を吐きますね」
中島さゆ「なんかこう、もうちょっとひねりを利かせたほうがいいんじゃない?」
林多恵「ひねり?」
中島さゆ「ほら、サンタクロースを匂わせるんだけど、それでいて何か引き込まれるような」
林多恵「ほうほう、例えば?」
中島さゆ「『プラスドライバーを持ったサンタクロースは枕元に立っている』とか」
林多恵「そちらのほうがよっぽどホラー感が強いですよ」
中島さゆ「じゃあじゃあ、『返り血を浴びたような真っ赤な服の無精ひげの男が、ベッドで寝ている娘を見つめている』」
林多恵「・・・サンタクロースを無精ひげの男って言ったのは中島先生が初めてじゃないですか?」
中島さゆ「じゃあじゃあじゃあ」
林多恵「中島先生・・・楽しんでません?」
中島さゆ「えへへー、ばれた?」
林多恵「ばれた?じゃないですよ、まったく」
中島さゆ「ほら、林先生がラノベのなんたらで楽しそうだったからさ、ついのってきちゃって」
林多恵「まあ、楽しんでいただけてるのなら何よりですが」
中島さゆ「ところでさ、ほら、さっきの『クリスマスにサンタクロースが・・・』なんだっけ?」
林多恵「『プラスドライバーで木ねじを外す』のことですか?」
中島さゆ「そうそう。それってようはサンタクロースがやってくる過程を言ってるんでしょ?」
林多恵「まあ、そうなりますかね」
中島さゆ「じゃあさ、タイトルは『サンタがおうちにやってきた』だけでもいいんじゃない?」
林多恵「いやダメです。それだとラノベ業界が求めている、貧相で緩慢な読者におおまかなあらすじを伝えるという大命題が」
中島さゆ「読者に毒を吐くな毒を。だいたい大命題でもないでしょうし、そもそもラノベ業界関係ないから」
林多恵「あー」
中島さゆ「あー、じゃねえよ。これは小学校の演劇会だから」
林多恵「ねー」
中島さゆ「ねー、って・・・」
林多恵「じゃ、それで」
中島さゆ「それでって、えー・・・」
  おしまい

コメント

  • 林先生の「そうなんだけど、そうじゃないだろ!」感が良い感じ

    後、サンタさんの髭ってまあ確かにあれですよねえ

    サクサク感がうれしいシリーズですね

  • 散りばめられた毒がおもしろかったです。笑
    たしかに最近のタイトルは、内容をそのままにしてるのが多いですね。
    出版社の意向の場合もあるみたいですが。

  • 会話のテンポもいいですし、何よりも内容が面白いです。ラノベと読者、AV、新興食パン屋さん、、、様々な分野の人を敵に回しながら楽しさを追求されてますねw

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