クリスマスぼっち男たちの逆襲

大杉嵐雪

クリスマスぼっち男の逆襲(脚本)

クリスマスぼっち男たちの逆襲

大杉嵐雪

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〇渋谷のスクランブル交差点
  12月24日。町中にジングルベルが鳴り響くクリスマスイブの日
  街はカップルで溢れ賑わっていた
  しかしこんな中、一人牛丼チェーンに入る男がいた
喪手内仁史「今年も彼女はナシ、今日も一人で牛丼屋に入る俺、惨めすぎる・・・」

〇ファストフード店の席
喪手内仁史「チクショウ。いつもはおっさんしかいない牛丼店もクリスマス一色に染まってやがる」
喪手内仁史「それに・・・」
喪手内仁史「なんで俺以外の客が全員カップルなんだ・・・」
喪手内仁史「さっさと食って帰ろう・・・」
???「うわ。あの人、一人でご飯食べてるよ」
???「あの貧乏くさいオッサン。きっと彼女いないぜ」
「ヒソヒソ」
???「ヒソヒソ」
喪手内仁史「ウガァー!! もう辛抱ならん! クリスマスなんてクソ喰らえ!」
喪手内仁史「クソカップル共、俺はお前たちに宣戦布告をする!」
喪手内仁史「俺はクリスマスを変えてやるからな!!」
喪手内仁史「ごちそうさま!!!」
  喪手内は叫び散らしながら店を後にした。この出来事が後のクリスマス半裸の男騒動の発端となるとは、誰も思わなかった。

〇オフィスのフロア
  数時間後。紀勢警察署
  並木巡査は食堂で見ていたテレビの速報を見るやいなや、立川警部補のデスクへ全力で駆け込んだ。
並木真五郎「立川さん! 現れました! ヤツです! 喪手内です!」
立川麗美「ついに動き出したか。モテない男たちによる祭りが」
並木真五郎「やはり牛丼チェーン店の不審者が予告通り動き出しましたね」
立川麗美「さっそく現場に向かうわよ!」

〇渋谷駅前
  街中駅前には多くの人だかりが出来ていた。
  その中心にある大きな神輿の上に立つのは、モテない男たちの代表喪手内だった。
  その周りにはアローンボーイズと呼ばれる、彼女がいない男達が、下着姿で神輿を囲っていた
喪手内仁史「ウォー!! モテない男共! 今こそ立ち上がれ!」
喪手内仁史「今年のクリスマスは俺たちが主役だ!! この街のクリスマスをぶち壊し、新たなるクリスマスを創造するのだ!」
アローンボーイ「ウォー!!!」
  アローンボーイズは喪手内に賛同するかのように一斉に叫んだ。
  喪手内とアローンボーイズが盛り上がる中、一台のパトカーが集団の近くに停まった。
立川麗美「なんなのこの下着姿の集団は・・・」
並木真五郎「モテない男達ですよ。早く応援を呼ばないと暴動が起こってしまいそうだ」
立川麗美「そうね。並木君は応援を呼んでちょうだい」
立川麗美「私はちょっと行ってくるから!」
並木真五郎「立川さん! 行くってまさか!」
  立川麗美は拡声器を握りしめ、アローンボーイズの輪の中に割り込む。
立川麗美「警察だ! 今すぐにこの集団を解散させなさい!」
喪手内仁史「断る!」
立川麗美「なぜこんな事をする? 街にとって大迷惑よ!」
喪手内仁史「毎年、クリスマスの時期は苦痛だった。街に出れば男女二人が寄り添う姿が嫌でも目に入る」
喪手内仁史「俺たちは日本の腐ったクリスマスを壊し、新しいクリスマスを作る!」
喪手内仁史「そして真の目的の達成に向けて我々は神輿を担ぎ、全てを変えてやる!」
喪手内仁史「お前ら! 早くソイツをつまみ出せ!」
  しかしアローンボーイズは並木を触る事すら出来なかった。
  当たり前の事だった。彼らは女性を知らない上、どう扱っていいかわからないのだ。
喪手内仁史「クソ! 移動するぞ! 野郎共! 神輿を担げ! 公園に特攻じゃ〜!!」
  アローンボーイズは神輿と共に公園がある方向へ、逃げるように去っていった。
立川麗美「並木君! 応援はまだ?」
立川麗美「ちょっと並木君、なんなのその姿!?」
並木真五郎「立川さんすいません! 俺、なぜだか涙が止まらないんです!」
立川麗美「あなた、もしかして・・・」
並木真五郎「俺だって女の子とクリスマスイブを過ごしたかった・・・」
並木真五郎「彼女いない歴イコール年齢の俺の気持ちなんか、あなたにはわかりっこないんですよ!!」
立川麗美「落ち着いて! ほら、私だって女の子でしょ?」
並木真五郎「確かにそうですが、あなたは上司であり、尊敬する刑事なんです!」
並木真五郎「だからすいません行かせてください!」
並木真五郎「ウォー!!」
立川麗美「ちょっと!? 並木君!!」
立川麗美「まったく! とにかく、公園に行かなくちゃ」

〇クリスマスツリーのある広場
  大きなクリスマスツリーがある公園。ここには多くのカップルと家族連れで賑わっていた
  立川は公園の異様な光景に驚いていた。
  喪手内とアローンボーイズは、子供達を集めてプレゼントを渡していたのだ
喪手内仁史「はい、押さないで! 順番にね」
立川麗美「ちょっと、これはどう言う事よ?」
喪手内仁史「見てわかりませんか? 子供達にプレゼントを渡してるんですよ」
立川麗美「急にどうして?」
喪手内仁史「我々の真の目的は、カップルに家族の良さを知ってもらう事なんですよ」
喪手内仁史「俺たちがモテない原因は、もちろん俺たち自身にあるかもしれない」
喪手内仁史「だけど、日本の人口減少も原因の一つなんじゃないかと思って」
立川麗美「つまり、出会うべき運命の女性が、人口減少によって少なくなってきていると?」
喪手内仁史「そう言う事だ。だから将来、クリスマスの時期は家族いっぱいの公園にしたい」
喪手内仁史「最近は友達以上、家族未満の中途半端な関係が、ダラダラ続くカップルが多いと聞いた」
喪手内仁史「だからカップル達に家庭を持つ良さを知ってもらうために、」
喪手内仁史「我々はSNS映えする公園で子供達にプレゼントを配っているのだ」
並木真五郎「喪手内さん! 追加のプレゼント買ってきました!」
立川麗美「並木君も頑張ってるのね」
並木真五郎「はい!」
立川麗美「私も手伝っていいかしら?」
喪手内仁史「もちろんだ! さぁ! プレゼント会の再開だ!」
  半裸のサンタクロースの影響で数年後、少子化問題は解消した。
  今年のクリスマスも、どこかの公園でアローンボーイズたちがプレゼントを配っているのかも知れない・・・
  完

コメント

  • モテない男子たちが未来の国を救う壮大なストーリーですね。女にとことんモテなくても、全人類に敬愛される男子になろう。共感します。

  • タイトルと導入で、残念な男達がただただ暴動を起こしてメチャクチャにしてしまう展開を想像したのですが、まさかの少子化問題へのメスで驚きです。勢いのある作品に楽しませてもらいました。

  • えらい半裸アローンボーイズ!くやしさを怒りにせず愛情にかえた行動力。女子にぺこぺこしている男子達より彼らの方に魅力を感じてしまいました!

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