エピソード2:死して、尚(脚本)
〇コンビニのレジ
生きがいも、やりがいも
特に無かった
『どうして、そんなに無気力なの?』
理由?
他人への無関心も
無頓着な性格も
事情が必要なのか?
「ありがとうございましたー」
コンビニ店員「さっきの娘、 めっちゃ可愛いかったですね!」
しがない元コンビニ店員「ん? そうだったね」
コンビニ店員「なんすか、そのテンション!! もっとアガりません!?」
先ほどの客
知るか
『顔が可愛い』事実は理解るが
それで『気分がアガる』ことはわからない
口にはしないが
しがない元コンビニ店員「‥‥いやさ」
しがない元コンビニ店員「俺みたいなおっさんが女子高生相手に 「可愛い」って興奮するのは‥‥」
しがない元コンビニ店員「正直、イタい」
コンビニ店員「確かにっ!!」
〇コンビニ
しがない元コンビニ店員「お疲れ様でしたー」
しがない元コンビニ店員(早く帰って、録り溜めの消化を‥‥)
無い
〇無機質な扉
「あのおっさん相手にするの マジ、キツいんですけど!」
‥‥俺もキミの相手するの、キツいんだけど
「こっちから話題ふっても、全然続かないし!!」
‥興味ない話だし
「すぐ自虐ネタ言って、何でも言い訳する!」
自虐した方が、
場が和んで楽なんだよ
自分をへりくだり、低く見せる
この処世術は、俺に適していた
「あの人、35いってますよね? その歳でコンビニのバイトってww」
「それで彼女なし、お友達なしって 人生終わってるでしょ」
「あんな風に生きたくないなぁー」
「確かにっ!」
しがない元コンビニ店員「‥‥‥‥‥」
別に何とも思わない
他人の評価、世間体‥‥
気にしないからこそ、この体たらくだろ
さすがに、
この中に入る気もないが
(歩いて帰るか‥‥‥)
不帰 希人
『フキ マレビト』
【死因】
軽自動車に跳ねられ
頭部を強打する
──10分前──
〇コンビニのレジ
店員さん「こちら500円の【手鏡】1点で お間違いないでしょーか?」
美亡人「はい」
店員さん「そんなに『顔』にこだわります?」
店員さん「”来世もこの顔でありたい”と?」
店員さん「美人に生まれたら 人生変わるんでしょーね♪」
しがない元コンビニ店員(失礼すぎるだろ‥‥)
美亡人「私の顔、全顔フル整形なんです」
美亡人「ずっと素顔がコンプレックスで 整形自体が生きがいでもありました」
美亡人「「人間、顔じゃないよ」と説得されたり 「モテたいの?」と揶揄されました」
しがない元コンビニ店員「‥‥‥‥‥」
美亡人「ちがうんです」
美亡人「私は自分を好きになりたかった」
美亡人「来世では ”ありのままの自分を好きになりたい”‥‥」
店員さん「かしこまりました」
店員さん「ご来店ありがとうございました」
店員さん「よい来世を♪」
店員さん「希望を持ってる人って‥」
店員さん「いいっすよね♪」
しがない元コンビニ店員「まあ、そういうものでしょう」
しがない元コンビニ店員(俺には想像できないが)
店員さん「お客さんは気にならない?」
店員さん「このコンビニの存在理由」
しがない元コンビニ店員「‥‥‥‥」
店員さん「むかーしの話なんだけど‥」
〇手
この世界で、あるモノが
大量発生して問題になったらしいよ
何が、って?
転生したくない亡者が♪
現世は辛く、苦しい‥‥
生きる限り続く苦悩に
もう二度と生まれたくない、ってね
転生すれば記憶がリセットされるのに
昔は転生させるのも一苦労だった
そんな時に、昔のお偉いさんが
転生を促す為に考えたわけ
”来世に望む願いを叶えることを”
〇小さいコンビニ
店員さん「わずかな光でも、 人には希望が必要だった」
〇コンビニのレジ
店員さん「知らんけど♪」
店員さん「お客さんは決まった? ”叶えたい願い”ってヤツ」
しがない元コンビニ店員(無い)
しがない元コンビニ店員(”願い”?)
そんな冴えない人生
ずーーーーーっと続けんの?
しがない元コンビニ店員(続くだろうな、来世でも)
俺には、向上心が皆無だった
底辺が心地よかった、とも言える
他人を気にせず、
無理に自分に期待しない‥‥‥
他人への関心‥‥
せめて自分自身への期待が‥‥
あれば、ちがったか?
いや‥俺には
あんな直向きな精神は持てない
しがない元コンビニ店員「‥‥この店で 一番売れている商品は?」
店員さん「それ、一番つまんないヤツ! なんっも考えてないっしょ!!」
店員さん「見せちゃうけどね! うちの自慢の人気商品!!」
見せるのか
店員さん「これぞ、当店限定特別商品!!」
店員さん「『異世界転生くじ』!!!!」
しがない元コンビニ店員「これはっ‥‥」
店員さん「そう!これぞ!!」
店員さん「今やすっかり人気ジャンルと化した 異世界転生モノの主人公になれるくじ!!!!」
店員さん「賞品は、有名タイトル・定番能力から 独断と偏見より選ばれしもの!」
店員さん「性別、自由選択式! ラストワン賞『前世の記憶引継』!!」
店員さん「──とまあ」
店員さん「オタクっていうコア支持層 あっての人気だけど‥‥」
店員さん「‥‥おたく、お好きで? こーゆーの」
しがない元コンビニ店員「誰がオタクだ」
しがない元コンビニ店員(いや、さっき「陰キャオタ」言ったか‥‥)
しがない元コンビニ店員「少し待ってくれ、 ガラにもなく気持ちが‥‥」
しがない元コンビニ店員(俺もオタクの端くれだったか)
しがない元コンビニ店員「別にやると決めたわけじゃ‥」
店員さん「いやいや、 発案者としての喜び♪」
店員さん「まあ、あとは」
店員さん「人間、自分で思ってるより 自分の感情把握してないもんでしょ」
〇小さいコンビニ
〇コンビニのレジ
店員さん「あっひゃー‥‥」
しがない元コンビニ店員「あの人たちって、つまり‥‥ 急にあんな大勢!?」
店員さん「この時間で団体さんかー、 夜行バスでも事故ったかな?」
しがない元コンビニ店員「呑気に言ってる場合じゃないでしょう! 20人ぐらいますよ」
店員さん「うん、俺1人で対処はムリ☆」
しがない元コンビニ店員(いかん‥‥)
しがない元コンビニ店員(昼のピークに新人と2人きりだった時の フラッシュバックが‥‥)
店員さん「‥‥致し方なし」
店員さん「奥の手、使いますかぁ!」
〇小さいコンビニ
『後生コンビニ』にお越しの皆様〜
ここは死後の世界であり、
生まれ変わるための場所であり
死者が来世への願いを託す
前世と来世の通過地点
転生の通過儀礼の場でございます
〇コンビニの雑誌コーナー
皆様、お持ちの所持金500円
その金額分、商品の購入が可能です
その購入する商品に、お客様が来世に託す
望み‥願いをイメージしてください
なおかつ、価格相応の内容でお願いします
〇コンビニの店内
商品をレジに通すまでが
転生に必要な工程です
500円以下の商品をお買い上げの場合、
残金の『お金』も願いに反映されます
〇コンビニのレジ
尚、当店でのお客様同士のトラブル・窃盗
暴力などの迷惑行為を行った場合──
お客様と見なしません
異物です
店内の正常化の為、
速やかに排除されますので──
店員さん「あしからず♪」
店員さん「ご質問などございましたら、 お気軽にご相談ください〜」
‥‥なぜだ
なぜ俺は死んでまで回避したはずの
バイトにあの世で駆り出されている‥‥
『無理しなくていいんすよ〜』
『由々しき事態と知りながら
助けを求める者を見捨てられるなら♪』
〇コンビニのレジ
『接客するんで、レジ頼んます』
普段通りにすればいい、
ただのレジ打ちと何も変わらないだろう
しがない助っ人コンビニ店員「‥‥‥こちら200円の【マヨネーズ】1点で お間違いないでしょうか」
「はい‥‥」
しがない助っ人コンビニ店員(引くな俺!何を買おうが自由だろう!?)
金、やっぱ金だよ、金
あとは‥‥
マヨネーズがあれば
生きていける!
しがない助っ人コンビニ店員「えっ‥!?」
『ちなみに
うちのレジ、ちょっとユニークなんで』
『多少動揺しても、客は回して♪』
しがない助っ人コンビニ店員「‥ご来店、ありがとうございました」
しがない助っ人コンビニ店員「よい来世を‥」
‥‥今の声は‥?
‥‥‥バーコードを読み取った瞬間
相手の心を読み取ったのか‥‥?
そうか、この機能があれば『何を望み』
『何でその商品を選んだ』か理解──
しがない助っ人コンビニ店員(できていいのか、プライバシー的に!!)
しがない助っ人コンビニ店員「‥次のお客様、どうぞっ」
しがない助っ人コンビニ店員(今は無心に仕事をこなそう‥‥)
【覆面】500円
もう少し整った顔に
生まれたい
【総入れ歯】500円
綺麗な歯並び
歯並びが悪いと審美性の阻害だけでなく
体に様々な悪影響を及ぼす為、云々──
【四つ葉】500円
何でもいいから
幸せになりたい!
愛・健康・幸運・富
『わたしのものになって』
『約束』
【薬】500円
病まない精神
【アルバム】500円
良好な人間関係
まともな親
信頼できるキョウダイ
気の合う友人
【カツラ】500円
フサフサの髪を取り戻す
今度はハゲの遺伝子を持ってない
親のもとで生まれたい
【カツラ(長髪)】500円
サラサラストレートヘア
美容室で、もう
縮毛矯正を勧められたくない
「あの‥‥2人一緒でお願いします」
【ペアマグカップ】各500円
せめて来世で一緒になりたい
【キューピットの矢】500円
他者を愛せる自分
〇コンビニのレジ
何を考えている
『最後の客だ、やっと終われる』
なのに
『終わってしまう』
『まだ、終わりたくない』
──と思う反面
『早くこの客の願いを知りたい』
と思ってしまった
しがない助っ人コンビニ店員「ご来店、ありがとうございました」
しがない助っ人コンビニ店員「よい来世を」
店員さん「乙〜♪」
店員さん「いやー、助かったわ! ガチで疲れたでしょ?」
店員さん「ざっと20人以上の心情・事情 一気に視たんだから」
しがない助っ人コンビニ店員「どうして、あんな機能を?」
店員さん「面白かったでしょー、 外側だけじゃわからないことを知るって」
傍から見たら意味不明な物も
本人にはちゃんと理由があって
似た物を選んでも事情も動機も
全くちがう
そして、他人に知られたくない動機を
秘めてる客が圧倒的多数
店員さん「俺はそういう“秘密を知る快感”に 取り憑かれた人間ってワケ」
店員さん「機能自体は、俺がこの世界に来た頃から あったから理由は知らんけど」
しがない助っ人コンビニ店員「‥‥元々、死者‥?」
店員さん「特に転生したい思わなかったしさ 成り行きで店員になったけど‥」
店員さん「初めて人の心を読んだ時、キタね」
俺はこの声を聞くために
死んだんだ
それはアリなのか?
生きること、生まれることではなく
死に意味を見出すのは
知る快感に溺れるのは
転生しないことは──
店員さん「あと断然、事情わかってる方が」
店員さん「「よい来世を」って思うじゃん」
〇黒背景
いろんな客がいた
いろんな願いがあった
いろんな価値観があった
けど‥
俺はまだ
たった20人そこらしか
視れていない
〇病室の前
〇病室
〇モヤモヤ
〇小さいコンビニ
〇コンビニのレジ
「らっしゃいませー」
〇小さいコンビニ
”叶えたい願い”
──とやらは、まだわからない
ただ、ここで多くの客を視ていたら
見つかる気がした
もし、見つかったら──
俺が死んだ意味もあるかもしれない
よい来世を
僕は……キャットフード
愛され甘やかされる飼い猫になりたいですね( =^ω^)
でも主人公の保留という終わり方がなんだか心地良さそうですね🤤
面白かったです🌟死後のコンビニという設定、自分じゃまず思いつかないです💦キャラクター背景も練られていて読み応え抜群でした☺️
面白かったです!!自分にはなんの望みもないと思い込んでいた主人公の心情の変化が、なんだか胸が熱いですね。
あと来世ではせめて一緒になろうとするカップルが切ない😢色んな悲喜交交がこのコンビニから生まれそうですね!