悪魔のアリス

YO-SUKE

第8話 『殺人衝動』(脚本)

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〇綺麗な一戸建て
  津田沼紀夫(つだぬまのりお)の家の向かい側には一台の車が停車している。

〇車内
犬伏徹「今夜、犯人来ますかねえ」
佐川アリス「わからん。 ただ様子を見てみる価値はあるだろう」
犬伏徹「張り込みって9割空振りじゃないですか? でも、僕昔から好きなんですよね」
佐川アリス「お前も変わった奴だな」
犬伏徹「僕、親父も刑事だったんですよ。 それでよく、張り込みの話を聞いてて」
犬伏徹「親父は変わってましたけど、いい刑事でした」
佐川アリス「なんとなくわかるよ」
犬伏徹「え?」
佐川アリス「お前を見てるとな」
犬伏徹「・・・はあ」
佐川アリス「それより時間だ」
犬伏徹「へ?」
佐川アリス「あたしが時間と言ったら一つしかないだろ」
犬伏徹「あ、了解です! アンパンと牛乳買ってきます」
佐川アリス「父親か・・・」

〇ダイニング(食事なし)
佐川浩司「アリス、待たせてごめんな」
  あたしは父子家庭で育った
  母は早くに家を出て行き、商社マンの父は忙しかったがいつも優しかった
佐川浩司「おっ! ご飯、作ってくれたのか?」
佐川アリス「・・・うん」
佐川浩司「ありがとな! よーし、高い高いしちゃうぞー!」
  あたしは世界で一番、父のことが大好きだった

〇葬儀場
  だが父の死は突然だった
  ある日、仕事帰りに車に轢かれたのだ
  その日父は、珍しく酒を飲んでいたらしい
  あたしは父のつけていた金のブレスレットを抱きしめながら、ただじっと俯いていた
須藤清孝「一人でよく頑張ったな」
佐川アリス「・・・?」
  葬儀場で声をかけてくれたのが須藤だった
  須藤はアリスの頭の上に優しくポンと左手を乗せる。
  父の後輩である須藤は、あたしが養護施設に入った後も、度々訪ねてくれるようになった

〇森の中
佐川アリス「ハァッ・・・ハァッ・・・」
  そして、その年の夏──
  養護施設に入って二か月経った頃、あたしは事件に巻き込まれた

〇怪しげな山小屋
佐川アリス「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
  あの時、どんどん呼吸が浅くなるのを感じていた
  死がヒタヒタと、近づいてくるような感覚だった
佐川アリス「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
  後にも先にも、あの時ほど死を意識した瞬間はなかった
  恐怖と過呼吸で私は膝から崩れ落ちた
  アリスが充血した目で横を見ると、そこには切り取られた左腕が転がっていた。
  アリスはその左腕にはめられた金のブレスレットに手を伸ばす。
  その時、あたしの目に見えた金のブレスレットは父のものと同じだった
  それは偶然に過ぎなかったが、父があたしをどこかで見てくれているような気がした
  アリスは金のブレスレットを握りしめ、乱れた呼吸を落ち着かせる。
  それは精神安定剤のように、あたしの心を穏やかにしてくれたのだ

〇黒
  以来、ターゲットの腕に金のブレスレットをはめることで、あたしは免罪符を得たような気分になった

〇車内
  アリスは鞄から父の形見である金のブレスレットを取り出し、じっと眺める。
  そのとき、見張っている津田沼の家の中から一人の娘が飛び出してきた。
佐川アリス「!」
犬伏徹「お待たせしました。 ・・・って、どうしたんですか?」
佐川アリス「今おそらく津田沼の娘が出て行った! お前は後を追え!」
犬伏徹「わかりました! アリスさんは?」
佐川アリス「家の中の様子を見てくる!」

〇ダイニング(食事なし)
佐川アリス「何があったんですか!?」
津田沼紀夫「てめえまだいたのか!」
  散乱した部屋では、津田沼の妻である陽子が怯えた様子で立っている。
  陽子の頬には殴られたような跡があった。
佐川アリス「奥さん、この人に殴られたんですね?」
津田沼陽子「・・・・・・」

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