飢餓の大地にアメが降る

千田陽斗

飢餓の大地にアメが降る 前編(脚本)

飢餓の大地にアメが降る

千田陽斗

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飢餓の大地にアメが降る
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〇荒地
  ここはニライ地方
  どこまでも荒涼な大地に
  小さな町や国が点在し
  人々は切り詰めた生活をしている
ホウセンカ「見つけた」
ホウセンカ「こんな荒野にも花は咲いている そしてこの花を育てれば・・・・・・」
ホウセンカ「町の人は言う 食べ物は増やせないと しかし本当にそうだろうか?」
ホウセンカ「私は観察し続けた 花が実を結び、その実が芽を出し 新しい花を咲かせ また実を結ぶことを」
  ニライ地方は
  度重なる戦災と経済的疲弊により
  人心は荒れ文化的水準が低下した
  そして人々は大地を耕すことを忘れ
  大国ゴールデンダイアの配給を
  当てにして依存的に
  刹那的に生きている
  ホウセンカは違った
  おぼろげながらも夢を見ていた
  人々が豊穣なる大地に根ざし
  共存する世界を

〇荒廃した市街地
ホウセンカ「こんにちは シスターテレサ」
シスターテレサ「こんにちは ホウセンカさん」
ホウセンカ「シスター これを見て」
シスターテレサ「まあ かわいらしいお花ですこと」
ホウセンカ「私ね この花を育てれば 食べ物が増やせる気がするんです」
シスターテレサ「まあ 面白い発想ですね」
ホウセンカ「でも本当にうまく行くか心配で」
シスターテレサ「ホウセンカさん 神さまが作ったこの世界に 意味のないことなんてないのよ」
シスターテレサ「あなたのがんばりが やがては誰かの励ましになりましょう」
ホウセンカ「ありがとう シスターテレサ」
ハイネ「ホウセンカお姉ちゃん!」
ホウセンカ「ハイネちゃん こんにちは」
ハイネ「お姉ちゃん 見て」
ホウセンカ「なにそれ デッっっかいアメじゃない!」
ハイネ「えへへ あそこにいる 水色のお姉ちゃんに貰ったんだ みんなに配ってるよ」
ホウセンカ「いやあ とにかくお礼を言わなきゃ」
ホウセンカ「あ、あ、あなたですね 町の子にアメをくれたのは ありがとうごさいます」
アジサイ「フフフ 私はアジサイ どういたしまして」
ホウセンカ「私はホウセンカです あなたは旅の人ですか?」
アジサイ「旅人?まあそんなものね ところであなた かわいらしいお花を持ってるわね?」
ホウセンカ「こ これは そのうち食べるんです いや花じゃなくて 育てて実が成れば・・・・・・」
アジサイ「あなた お腹が空いてるの?」
アジサイ「このウバーツの器を使えば・・・・・・」
ホウセンカ「アメが出た! しかもおいしい! ありがとうございます」
アジサイ「私は、こうしてニライ地方を巡って アメを配ってるんです」
ホウセンカ「どうして? そういう商売なんですか?」
アジサイ「お金なんかいらないのよ 私が望むのは人々の平穏 それには、お腹が満たされることが 第一条件だから」
ホウセンカ(言いたいことは分かる でもアメが湧くあの器は何? この人ホントは魔女だったりして)
名馬マンテンビャクヤ「アジサイさま 大変でございます」
ホウセンカ「しゃ 喋る馬?」
アジサイ「名馬マンテンビャクヤよ どうした?」
名馬マンテンビャクヤ「追っ手がすぐそこまで来ています!」
アジサイ「むう 早く逃げないと行けませんね さ あなたも乗って!」
ホウセンカ「えっ?私も?」
名馬マンテンビャクヤ「さ、お二人ともしっかりつかまって!」
アジサイ「ハイドー!」
ホウセンカ「え?えー?」
兵「すんでで逃げられたか 追うぞ」
兵「了解」

〇荒野
  飢餓の大地にアメが降る
  前編

〇荒廃した教室
名馬マンテンビャクヤ「ここまで来れば なんとか しのげるでしょう」
アジサイ「ありがとう マンテンビャクヤ 水を」
名馬マンテンビャクヤ「これは貴重な水です みなさんで分け合いましょう」
アジサイ「そうね」
ホウセンカ「あ、あ、あのお・・・・・・」
アジサイ「あら ごめんなさいね 追っ手の気配が近かったから あなたまで巻き添えにしちゃって」
ホウセンカ「私 そろそろ帰っていいですか?」
アジサイ「一人で? 馬で駆けて来たけど さっきの道は毒サソリの道よ」
ホウセンカ「じゃあ 馬で送ってくれますか?」
名馬マンテンビャクヤ「そうしたいのは山々ですが 毒サソリ以外にも厄介があって 我々は追っ手に追われてます」
アジサイ「そうね 申し訳ないけど 確実に安全を保証できるまで 一緒にいてくれませんか」
ホウセンカ「えー? でも ここは従うしかないみたいですね 悪い人じゃなさそうだし」
アジサイ「私のこと魔女かなんかだと思った?」
ホウセンカ(見透かされてる?)
アジサイ「私は剣技の心得もあります いざとなったら騎士のように お守りいたしますよ」
アジサイ「それにしてもサファイが 遅いですね」
名馬マンテンビャクヤ「はい サファイは我らの数少ない理解者にして 協力者 優しすぎる男だが、気は回るやつですね」
ホウセンカ「なんかよく分からないけど  フクザツな事情がありそうね ところで」
ホウセンカ「アジサイさんが持ってる 不思議な器はなんですか? 私 食べ物を増やすことに 興味があるんです!」
アジサイ「これ?」
アジサイ「これはウバーツの器 栄養満点のアメがたくさん出てくる 魔法の器よ」
ホウセンカ「ちょっとだけ触らせてくれませんか?」
アジサイ「えー これ回数制限があるんだけど どうしようかな」
アジサイ「ま 一回ぐらいよいでしょう」
ホウセンカ「ありがとうございます!」
ホウセンカ「へー これが? なんか面白い」
ホウセンカ「!?」
ホウセンカ「なんか見慣れないものが出てきた! こわい」
アジサイ「これはケーキじゃない!」
アジサイ(もしかして私より この子の方がウバーツの器を 使いこなすセンスがあるの?)
名馬マンテンビャクヤ「アジサイさま ただいま狼煙が上がりました サファイの合図です 追っ手は去った模様 サファイはウポツの町にいるようです」
アジサイ「そうか ウポツの町は まだ訪れてなかった このケーキを持って行ったらよかろう」
ホウセンカ「すいません 私もウポツの町に連れて行って くれませんか?」
アジサイ「? ウポツに行く前に、あなたを 送り帰せますが」
ホウセンカ「そのケーキって食べ物を 出したのは私です そのケーキが届けられるまで 見届けたくなりました」
アジサイ「なるほど ではウポツの町に向けて出発!」

〇荒廃した街
名馬マンテンビャクヤ「着きました ここがウポツの町です」
ホウセンカ「あまり自分の町を出たことが なかったけど ニライ地方ってどこもこうなのね」
アジサイ「さあケーキを 皆さんに振る舞いましょう 甘美なる平和の宴を」
食いしん坊グール「ケケケ なんか美味しそうな食べ物が ある! ぜんぶいただいちゃうよーん!」
ホウセンカ「食いしん坊グール!」
アジサイ「独り占めはいけません! 食いしん坊グールさんも 列にお並びなさい!」
サファイ「食いしん坊グールが 皆の食べ物を奪おうとしている?」
アジサイ「サファイ! やっと合流できましたね!」
食いしん坊グール「邪魔する気か! おりゃー!」
サファイ「暴力を行使するなら やむを得ない!」
食いしん坊グール「とかなんとか 言ってる隙に、その食べ物 食べちゃうゾー! バク」
サファイ「しまった!」
アジサイ「あの子ケーキを丸呑みした?」
食いしん坊グール「げ?なんか変な気分 この食べ物腐ってない?」
アジサイ「まさか できたてホヤホヤですよ」
食いしん坊グール「ウワー!」
サファイ「食いしん坊グールの姿が・・・・・・」
アジサイ「ケーキみたいな姿に変化した!」
オカシナカイブツ「な、なんだ? おいらオカシナカイブツに なっちゃったの?」
サファイ「いずれにせよ 皆の食べ物を台無しにした報いは 受けてもらうぞ 覚悟!」
オカシナカイブツ「ひ、ヒィィイ!」
ホウセンカ「やめてー!」
サファイ「な、なんだ君は この怪物をかばうというのか?」
ホウセンカ「彼はちょっと欲張りかもしれないけど 悪い怪物じゃない!」
ホウセンカ「簡単に罰として命を奪っても なんの解決にもならないと思う」
サファイ「う、うーん」
ホウセンカ「ケーキという食べ物も 私が作り出したものです! 私がその怪物の面倒を見ます だから殺さないで!」
サファイ「そこまで言うなら 分かりました」
オカシナカイブツ「ありがてえ ありがてえ・・・・・・」

〇暖炉のある小屋
ホウセンカ「ちなみに アジサイたちは何から逃げてるの? そもそもあなたたちは誰?」
アジサイ「まだ全部は明かせないけど 私たちは、ウバーツの器を 悪い人たちに独占させないために 戦ってるんですよ」
サファイ「こんな飢餓の大地で 皆に糧食を配るのは 当たり前の正義! だから私はアジサイさまに 協力しています」
ホウセンカ「なるほど・・・・・・」
ホウセンカ「私も この大地がもっと豊かだったら みんなギスギスしないで 暮らせるのになあって思います」
アジサイ「花がたくさんの実を結んでくれたら」
サファイ「しかし、こちらにはウバーツの器が あります これがあれば人々を満腹にすることなど 難しくはない」
アジサイ「でも ウバーツの器には 回数制限があって 効率よく平等にアメを配らないと なりません」
サファイ「そこなんですね 悩みどころは」

〇荒廃した街
兵「いったん奴らを油断させておいて よかったな」
兵「ああ、おかげで 簡単に尾行することができたよ フフフ」

次のエピソード:飢餓の大地にアメが降る 中編

コメント

  • 雨ではなくてアメだったことにまず驚きました。打出の小槌のようなウバーツの器の存在は、ありがたいと同時にトラブルの元凶にもなるということですね。扱う人間によって出てくる食べ物が違うのも興味深いです。それと、白い馬にマンテンビャクヤ(満天白夜?)というネーミングがとにかくステキ!

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