仏陀は言った「わたしがサンタとなろう」

湫川 仰角

仏陀は言った「わたしがサンタとなろう」(脚本)

仏陀は言った「わたしがサンタとなろう」

湫川 仰角

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〇けもの道
シカ王「この世のすべての苦を、一晩で取り除いてもらおう!」
弟子「え!! 衆生の苦をたった一晩で!?」
シカ王「仏陀様なら出来るだろう。 それとも、覚者にも出来ねぇことがあるってのか?」
弟子「で、出来らあっ!」

〇雪山
弟子「と、見栄をはってみたものの。 やはり仏陀といえど無茶ですよ」
仏陀「わたしは何も言ってないのですが・・・・・・」
弟子「それは成り行きで仕方なく・・・・・・」
弟子「しかし仏陀よ。 なぜ弟子である私はシカになっているのですか?」
仏陀「・・・・・・弟子よ。 あなたはクリスマスなる催しと、四つ足の獣を駆るサンタという老爺を知っていますか?」
弟子「西洋の覚者生誕を祝う儀式と、紅装束を着た好好爺だと聞いています」
仏陀「では弟子よ。 そのサンタは、一年間良い行いをした者に空から褒美を与えることを知っていますか?」
弟子「褒美ですか・・・・・・」
弟子「はッ!!」
仏陀「まず、弟子であるあなたを神通力で空を駆けるシカに変化させる」
仏陀「そしてわたしがこうして紅装束に身を包めば・・・・・・」
弟子「こ、これはまさしくサンタとその一味!!」
仏陀「これで私が説法を行えば、苦を滅することは難しくとも、それを減ずる助けにはなるでしょう」
仏陀「とはいえ、一人一人回っていては時間が足りません」
仏陀「ですから──」
弟子「──さすがです仏陀!」

〇クリスマスツリーのある広場
男性「俺たちも、付き合って半年になるね」
女性「そうだね・・・・・・ それで、話ってなに?」
男性「そろそろ俺、いや、僕と。 けっ、結──」
女性(ごくり)
  仏説摩訶般若波羅蜜多心経
  観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色受想行
男性「僕と、般若心経を・・・・・・!!」
女性「般っ!?」
男性「あ、いや! じゃなくてえっと・・・・・・」
  識亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無眼耳鼻舌身意、無色声香味触法無眼界乃至無意識界
男性「は、般若心経が・・・・・・ 色即是空で・・・・・・」
女性「何の話!? 誤魔化さないで!」
男性「ち、違うんだ!!」

〇アーケード商店街
男の子「これがいいー!! これじゃなきゃやだー!!」
パパ「そんなこと言われてもなぁ・・・・・・ もう同じような物持ってるじゃないか」
男の子「違うやつなのー!!」
ママ「困ったわねぇ・・・・・・」
  愛別離苦──
  怨憎会苦──
  五蘊盛苦──
  求不得苦──
ママ「ぐふ・・・・・・え?」
パパ「いまのは、求不得苦・・・・・・ 四苦八苦、か・・・・・・」
パパ「そうか、この世のすべては『空』──」
男の子「パ、パパ・・・・・・?」
ママ「あなた、何を言ってるの?」

〇雪山
弟子「こ、これが、クリスマス・・・・・・」
弟子「なんと、徳の高い儀式・・・・・・」
仏陀「さらにだめ押しで御詠歌など詠みたいところですが・・・・・・」
弟子「よい考えですが、今時の者たちに通じるかどうか・・・・・・」
仏陀「そうですね。 時代を反映させることも大事でしょう」

〇クリスマスツリーのある広場
男性「般若心経を一緒に読みたいとか、そういうことを言ってるのじゃなくて、その、いや色即是空も関係なくてっ」
女性「じゃあどういうことなの!?」
男性「だ、だから──」
  We wish you a Merry Christmas
  We wish you a Merry Christmas♪
男性「だから── 僕と、結婚してください・・・・・・!!」
女性「結婚・・・・・・」
女性「やっと言ってくれた──!!」
男性「あ、あれ? う、うんそう、結婚! 結婚してください!」
女性「はい、もちろん──!」

〇アーケード商店街
パパ「すべては無・・・・・・ 一切が幻・・・・・・」
ママ「パパ、どうしちゃったのパパ!」
男の子「も、もう買わなくていいよパパ! 我慢するから!」
  We wish you a Merry Christmas
  We wish you a Merry Christmas♪
パパ「はッ!! わ、私は何を・・・?」
男の子「パパ、もう帰ろ?」
パパ「おもちゃはもういいのか?」
男の子「うん。 お家でみんなでご飯食べよ!」
ママ「いっぱい作ってあるから、みんなで食べようね!」

〇雪山
弟子「まさか、仏陀が異国の歌も嗜まれているとは知りませんでしたぞ」
仏陀「なに、サンスクリットに比べればあの程度は」
弟子「しかし、これでなんとか成し遂げることが出来ましたね」
仏陀「いいえ、まだ。 これで最後です」
弟子「えっ? しかし、仏陀のあまねく空中説法によって、苦はすべて滅せられたのでは? しかもここには誰もおりませんぞ」
仏陀「シカ王から示された史談の条件は、衆生の苦を取り除くこと、です」
仏陀「衆生とは、動物だけを指す言葉ではありません」
  そう言うと仏陀は、両の手を合わせながら東の空を見上げた。
  いつの間にか、曙光が夜空を端から染め始めていた。

〇朝日
仏陀「クリスマスとは、夜明けによってもたらされるものでしょう」
仏陀「一切衆生悉有仏性────」
弟子「おっ、と」
仏陀「衆生とは、動物だけではなく草木も指す言葉です」
仏陀「草木において陽光は欠かせぬもの」
仏陀「夜明けを迎えてこそ、真の意味で衆生の苦を取り去ることが出来るのです」
仏陀「衆生無辺誓願度──」
仏陀「衆生の苦は、必ず明けるということです」
仏陀「これからも修行に励みましょう」
弟子「はい──!!」
仏陀「さ、シカ王に謝りに行きますよ」
弟子「はい・・・・・・」

コメント

  • すごいクリスマスになっちゃいましたね!
    でも結果オーライって感じもします。
    いきなりお父さんがお経唱え始めたら、子どもさんはびっくりすると思います。笑

  • 独特な感じがするストーリで、作者様のセンスが感じられました。時折クスッと笑いながら最後まで読み進めさせて頂き、楽しかったです。

  • どこからともなく般若心経が流れてくるのを想像するとめちゃくちゃ不気味で笑いました。パロディがいくつかあったのでうーんと思いながら読み始めたのですが、パロディのおかげで笑いやすい軽さの衆生救済が見られました。

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