悪魔のアリス

YO-SUKE

第5話 『山奥の追跡』(脚本)

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〇警察署の医務室
須藤清孝「よう」
佐川アリス「・・・眠ってたんですか? あたし」
須藤清孝「まあ三十分くらいだよ。熟睡してたけどな」
佐川アリス「ご迷惑をおかけしました」
須藤清孝「最近あんまり寝れてないのか?」
佐川アリス「一日三時間は寝てますよ」
須藤清孝「ドヤ顔で言うな。 それは一般の半分の平均睡眠だ」
須藤清孝「ほら、これ」
佐川アリス「・・・これは?」
須藤清孝「俺が最近使ってる睡眠薬だ。 リラックス効果もあるから辛いときに飲みな」
佐川アリス「でも」
須藤清孝「大丈夫。俺の分はある」
佐川アリス「・・・ありがとうございます」
須藤清孝「今日はこのままここで休んでな」
佐川アリス「いえ、犬伏を呼んでもらえますか?」
須藤清孝「?」
佐川アリス「今日中に確認しておきたいことがあるんです」

〇警察署の医務室
犬伏徹「ちょっとアリスさん! 今から出るって本気ですか?」
佐川アリス「ああ。車出してほしい」
犬伏徹「さっきあんなに激しくぶっ倒れたのに」
佐川アリス「ただの過呼吸。昔から度々ある」
犬伏徹「いや、でも」
佐川アリス「さっきの犯人。 奴が撮影していた場所に、心当たりがある」
犬伏徹「!?」

〇車内
犬伏徹「やっぱり空いてますね、高速」
佐川アリス「平日だからな」
犬伏徹「そういえば一つ聞いていいですか?」
佐川アリス「なんだ」
犬伏徹「なんで、小屋のことを上に報告しないんですか?」
佐川アリス「心当たりといっても、確証はない。 報告は確認してからでもいいだろう」
犬伏徹「でももしそこに犯人がいたりしたら」
佐川アリス「・・・・・・」

〇霊園の駐車場
犬伏徹「アリスさん、ブラックでいいですか?」
佐川アリス「砂糖は2杯半だ」
犬伏徹「え、結構甘党だなぁ。早死にしますよ」
佐川アリス「長く生きるつもりはない」
犬伏徹「またまた~」
佐川アリス「しかし、何もないところだな」
犬伏徹「おいしい空気とおいしい水ならありますよ。 あとおすすめはほうとうですかね」
佐川アリス「お前山梨の出身なのか?」
犬伏徹「はい、北アルプス市です。いいとこですよ。 高速沿いは昔ながらのラブホばかりですけど」
佐川アリス「聞いてない」
犬伏徹「あっ・・・すみません!」
犬伏徹「ていうか、もしかしてアリスさんも山梨県出身なんですか?」
佐川アリス「いや、小さい頃に少し住んでいただけだ」
犬伏徹「なんだ同郷だと思ったのになぁ」
佐川アリス「少しだけ、な・・・」

〇森の中
佐川アリス「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
  暗い森に降りしきる雨の中を、幼いアリスが必死に走っている。
  あの頃。まだ幼かった頃
  あたしはいつも無力で、ただ逃げ回るしかなかった
  アリスが辺りを見回すと、森の奥に小さな小屋があった。

〇怪しげな山小屋
  息を切らせたアリスが入ってくると、後ろ手で扉に鍵をかけて辺りを見回す。
  小屋の壁には鹿の剥製が飾られてあり、その横に斧があるのが見えた。
佐川アリス「ハァ・・・ハァ」
  アリスはゆっくりと斧に手を伸ばす。
  ドン、ドン!
佐川アリス「!!」
  アリスは斧を構えて扉と対峙する。
  けれども、あの日。
  あたしは戦うことを選んだ──

〇車内
犬伏徹「アリスさん、起きてください。 着きましたよ」
佐川アリス「・・・ああ」
犬伏徹「大丈夫ですか?」
佐川アリス「何がだ」
犬伏徹「体調ですよ。 やっぱり良くないんじゃないですか?」
犬伏徹「だいぶ眠りが深かったみたいですし」
佐川アリス「いらん心配するな。眠剤が効いただけだ」
犬伏徹「・・・ったく素直じゃないんだよなぁ」

〇森の中
犬伏徹「本当にこんなとこにあるんですか?」
佐川アリス「わからん」
犬伏徹「え?」
佐川アリス「記憶が曖昧なんだ」
犬伏徹「ここまで来てそれ言います?」

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