ゴリラ・タワー

千田陽斗

9.人として……(脚本)

ゴリラ・タワー

千田陽斗

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〇塔のある都市外観
山田カテル「どういうことだよ!父さん! 父さーん!」

〇警察署の入口
山田カテル「はあはあ・・・・・・」
警官「!? 警察署に何の用ですか」
山田カテル「父さんと、 父さんと話がしたいんだ」
警官「あなた、お名前は?」
山田カテル「カテル 山田カテル」
刑事「君、山田ヤマヲの息子かね」
山田カテル「はい!」
刑事「彼なら、今この建物の中にいる 少しだけ話すかね?」
警官「いいんですか?」
刑事「昭和的な温情ってやつだが 今日くらいいいだろう」
山田カテル「ありがとうございます!」

〇取調室
刑事「山田ヤマヲさん あなたに会いたがってる人がいます」
山田ヤマヲ「・・・・・・」
山田カテル「と、父さん?」
刑事「さ、飯でも食いながら話すといい」
山田カテル「すいません 今の俺には時間がありません」
山田カテル「父さん・・・・・・ 父さんがカルト宗教ってどういうこと? 俺に嘘ついてたの?」
刑事(息子は、山田ヤマヲが カルト宗教の幹部なのを 知らなかったのか)
山田ヤマヲ「カテル」
山田カテル「はい」
山田ヤマヲ「君に言ったとおり 私の仕事はノルマはきついが やりがいある仕事だ」
山田ヤマヲ「たくさんの人を現世的な価値から 開放し その対価を得て ささやかながら幸せな家庭を築いた」
刑事「その、あなたの仕事とやらのおかげで 多額の借金を背負い 人生が破壊された人たちもいた」
山田カテル「う・・・・・・」
山田ヤマヲ「今の苦しみを、どう受け止めるかは それぞれの人次第 私はすべきことをしたまでです」
刑事「山田ヤマヲさん あなたになんの権限があって 人を苦しめる自由があるというのか」
刑事「失礼 感情的になってしまいました・・・・・・」
山田カテル「父さんは悪いことをしていたの? 人を平気で傷つけていたの?」
山田カテル「ねえ?父さんが俺につけてくれた この名前の意味は何? 俺はもうこの名前を誇れないよ」
山田カテル「さっきまで、争奪杯を戦ってきたのに なんのために戦えばいいの?」
山田ヤマヲ「勝ちにこだわるというのは大事なこと 自分が開放されるために それが宇宙の・・・・・・」
山田カテル「もういい! そんなインチキな話聞きたくない!」
刑事「ヤマヲさん 立場上言いづらいですが あなた、相当壊れていますね 人として・・・・・・」

〇休憩スペース
名取キクオ「カテルはまだか? 早く戻らないと棄権と見なされる」

〇近未来の闘技場
職員「さあこちらの最終ステージでは ラストの試練 サイバーバトルの準備が着々と行われています」
職員「サイバーバトルは ゲームとリアルのバトルが 渾然一体となった競技!」
職員「ゲームの中で技を出せば それがリアルファイトにも反映されます たとえば」
職員「こうやってゲームキャラが ファイヤーアタックを繰り出せば」
職員「このように リアルファイトのフィールドにも ファイヤーアタックが出現します」
職員「それではサイバーバトルの開始まで しばしお待ちください」

〇休憩スペース
丸山サクラ「シャー! スタ! ついにゴリラタワー本体に 潜入!」
丸山サクラ「カキツバタさんは、本業の 弁護士の仕事があるので 今日は拙者一人じゃ」
クラゲ「あ!丸山サクラだ!」
丸山サクラ「こんにちは クラゲさん」
クラゲ「あなた、争奪杯に参加してないわよね? なぜここに?」
丸山サクラ「せ、拙者はボランティアスタッフとして ここで働いてるんじゃ」
クラゲ「ふーん 無給で税金を浮かせるための ブラックボランティアか ま、いいわ」
クラゲ「わたしが聞きたいのはカテルのこと」
クラゲ「カテルを焚き付けて この争奪杯に参加するよう 仕向けたのあなたね」
丸山サクラ「話の大筋は相違ない」
クラゲ「わたしが言いたいのは あなたカテルの気持ち考えてるの? ってこと」
丸山サクラ「・・・・・・」
クラゲ「ソッチョクに言うけど カテルはあんたに惚れてるわよ? その気持ちをあんたはカネで 弄んでるんじゃない?」
丸山サクラ「うむ 外形的にはそう見えてしまうかもしれん」
丸山サクラ「しかし、彼は拙者にとってよい働きも しておる 約束は破らん」
クラゲ「・・・・・・  あなたの考えって機械的で 機微ってものが読めないわね」
クラゲ「あんたが、そうやって屁理屈 言ってる隙に カテルを奪ってやるんだから! 今に見てなさい!」
丸山サクラ「落ち着きなされ そもそも個人は誰かの所有物では ないのだ 奪うとか意味が分かりかねますじゃ」
クラゲ「もういい!」
丸山サクラ「行ってしもうた」
丸山サクラ「とにかく・・・・・・ あの人も、このタワーのどこかに いるはず あんな恐ろしい計画は 早々に止めさせねば」

〇研究開発室
  ここはゴリラ・タワー内部の
  秘密の研究室
ザンデス丸山「山田ヤマヲ逮捕・・・・・・ 我らが手足として働いてきた あのカルト教団も潮時か」
ザンデス丸山「しかし、争奪杯のラスト試練という このタイミングはある意味良い なんてシンボリックな日に なるだろう」
ザンデス丸山「その前に」
ザンデス丸山「腹が減っては最終戦争も 出来ぬというものじゃ ラーメン♪ラーメン♪」
ザンデス丸山「さて・・・・・・」

〇黒

次のエピソード:10.運命との対峙

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