読切(脚本)
〇タクシーの後部座席
長いこと、タクシーの運転手をやってると、変なことに巻き込まれるなんてザラにある
酔っ払いにゲロ吐かれたり、漏らされたりなんてものから、幽霊に無賃乗車されたりとかね
さて、今回の客はどんな厄介事をもってくるのか
客「空港まで、大急ぎで」
(・∀・ )「お客さん、仕事帰り? 強盗? それとも殺人?」
客「あぁ、組を一つ潰してやって・・・」
客「って、俺達は犯罪者じゃねぇよ! 人を見た目で判断すんな」
(・∀・ )「またまた~。その顔で空港は、高飛びしかないじゃん」
客「違ぇよ! 兄貴が海外で結婚式あげるんだよ。仕事が長引いて遅れそうだから急いでるの」
Σ(・∀・ )「血痕式? 何、その物騒なの。裏稼業の儀式か何か?」
客「結婚! 兄貴が家族を持つんだよ!」
(・∀・ )「あー、あれね。夫婦の盃ってやつね。うん、知ってる」
客「三々九度を親子の盃みたいに言うなよ! お前の会社の教育どうなってんだよ」
(・∀・ )「うち? うちはSDGS完備してるよ。多様性認めてるよ」
客「会社は立派じゃねぇか。こいつがダメなだけかよ」
(・∀・ )「うちの会社は、客を年齢や性別、子連れか反社かどうかで区別しないって声明だしてるもの。社長は裏稼業とズブズブだし」
客「駄目だろうが、それ」
(・∀・ )「えー? 客を年齢や性別、子連れかどうかで区別しろっていうの? やだなー」
客「反社かどうかを区別しろって言ってんの」
(・∀・ )「はは、冗談だって。ちゃんと反社は警察に突き出してるよ。それで、お客さんはどこのムショに送ればいいの?」
客「空港に行け!」
〇タクシーの後部座席
客「ったく、ろくでもねぇタクシー拾ったぜ」
(・∀・ )「やだなぁ、お客さんに言われたくないよ」
客「なんでだよ」
後ろから、眩しいライトで照らされ、続けてクラクションを鳴らされる
(・∀・ )「あちゃー、煽り運転だ。お客さん、何やったの?」
客「なんでこっちに振るんだよ! お前が何かやったんじゃないのか?」
(・∀・ )「失礼な。そりゃ、ボクは三日に一回は煽られるけどね、二日続けてなんて、たまにしかないんだ。絶対、お客さんが原因だよ」
客「思い切り、お前が原因じゃねぇか。つーか、昨日も煽られてるし。何したんだよ」
(・∀・ )「何もしてないよ。ゴールド免許だし、SNSでは煽り運転はクソってスタンスを三日おきに投稿してるし」
客「やっぱお前が原因じゃねぇか! ったく、さっさと無線で通報しろよ」
(・∀・ )「はいはい。あー、もしもし? 今、指名手配犯と思しき二人組を乗せてるんだけど」
客「俺達じゃなくて、煽り運転を通報しろ」
(・∀・ )「もしもし? 煽り運転もセットでお願い」
客「ファストフードの注文じゃねぇんだよ」
(・∀・ )「そんなに言うなら、お客さんが注文すればいいのに」
客「注文じゃなくて、通報な。俺のはさっき、仕事でがさ入れしたときに乱闘騒ぎがあってな、壊しちまったんだよ」
(・∀・ )「カチコミでスマホを鈍器代わりにしたと。バイオレンスー!」
客「カチコミじゃねぇよ、がさ入れ! あんま言いたくないけど、俺達、警察なんだよ。ほら、警察手帳」
(・∀・ )「詐欺もやってるの?」
客「もう、やだ、このタクシー」
〇タクシーの後部座席
(・∀・ )「この先、渋滞してるね。反社を捕まえるのに、検問やってるみたい」
客「俺達じゃねぇからな」
(・∀・ )「証拠を残すようなヘマはしてねぇぜ」
客「反社じゃねぇってことだよ! こっちは急いでるってのに、どうしてこうろくでもないことばっか起こるんだよ」
(・∀・ )「警察ならパトランプ持ってないの?」
客「持ち歩かねぇよ。持ってても、私用で使っちゃダメだろ」
(・∀・ )「じゃあ、仕方ない。そっちの兄貴」
(・∀・ )「そう、兄貴、ちょっと屋根に乗ってくんない? みんな避けるから」
客「兄貴をパトランプ代わりにすんな! もっと、こう裏道みたいなのあるだろ」
(・∀・ )「お客さんと違って、日の当たる人生しか送ってないからなぁ」
客「人生の裏道じゃねぇよ。あまり使われてない脇道とかないのかよ」
(・∀・ )「あることはあるけど、幽霊でるよ?」
客「んなもん迷信だろ?」
(・∀・ )「通りがかると女が現れて『違う、お前じゃない』か『お前だー!』っていうんだ。稀に男がでたときは『お前だ―!』確定だよ」
客「パチ屋の演出かよ」
(・∀・ )「あ、お客さんの隣に女が」
二人の男の間には、いつの間にか髪を振り乱した、気味の悪い女の姿があった。女は二人組を見ると、カッと目を見開き──
幽霊「お前だー!」
(・∀・ )「やっぱり!」
客「何がやっぱりだ! 失せろ、このゴミカス! こっちは急いでんだよ!」
男の一喝に驚いたのか、幽霊はすっと消えた
(・∀・ )「睨み一つで幽霊を追っ払った。さすが、マフィア」
客「警察だっつってんだろ!」
〇タクシーの後部座席
客「この調子なら、飛行機に間に合いそうだな」
(・∀・ )「これでもタクシーの運転手は長いからね。警察でも反社でも、ちゃんと送り届けるよ」
客「だからヤクザは余計だっつーの。まあ、口は悪いが腕と度胸は確かだな」
(・∀・ )「ヤクザはそう言ってにやりと笑う。この時、お互いに何かを認め合えた気がした」
客「だから、ヤクザじゃ──」
突然の銃声が響き渡る
客「なんだ?!」
今まで煽り運転をしていた後続車の間に、複数の黒塗りの車が割って入って煽ってきた
ガラの悪い男が窓から体を出して、銃を撃ってきている
(・∀・ )「オジキ、よその組のもんが!」
客「誰がオジキだ! ありゃあ、さっきガサ入れした組のもんだ。まさか報復に来たのか」
(・∀・ )「嫌な検問から逃げて、裏道なんて通るからだよ。まるでオジキの人生みたいだ」
客「そんな人生送ってねぇよ! しかし、このままじゃ、民間人を巻き込んじまう」
(・∀・ )「兄貴を車の上に乗せようか?」
客「だから、兄貴はパトランプじゃねぇよ!」
(・∀・ )「じゃあ、手榴弾とか火炎瓶でいいよ」
客「よくねぇよ! そもそも持ってねぇよ! 仕方ねぇ、俺が降りて時間を稼ぐ。その間に兄貴を空港まで頼む」
(・∀・ )「そんなことさせられないよ」
客「お前、心配なんてガラにもねぇこと」
(・∀・ )「心配だよ。オジキが皆殺しをやりかねないのに!」
客「なんで、俺が全員、殺る前提なんだよ! 俺の心配をしろよ」
(・∀・ )「なあに、この通りを真っすぐ行けば、警察署だ」
客「なるほど。そこでまとめて叩くわけか」
(・∀・ )「オジキ共々、まとめてムショ送りにしてやるぜ、ヒャッハー!」
客「てめぇもムショ送りにしてやろうか!」
〇警察署の入口
客「おら、さっさと行け!」
客「後は任せた」
警官「はい!」
客「大量に逮捕できたな」
(・∀・ )「本当に警察だったんだ」
客「何度も言ってるだろ」
(・∀・ )「反社の抗争は、こうして終わりを告げた」
(・∀・ )「しかし、戦いはまだ終わっていない。そう、兄貴という反社が警察内部に深く根付いているのだから」
客「だから、反社じゃねぇって言ってんだろが!」
客「ったく。随分とかかったが、今からなら、空港までギリギリでいけそうだな」
(・∀・ )「乗ってく?」
客「いや、パトカーで行くわ」
(・∀・ )「結局使ってるじゃん、パトランプ」
運転手さんの発言がすごく面白かったです!
いろんな意味で飛ばしすぎな運転手さんがやばいですね。いっそのこと、パトランプがわりに屋根に上った兄貴を振り落とすところまでやってほしかったな(注:冗談です)。警察官は暴れる相手に手錠はかけれても暴れるお口にチャックをする権利はないから苦しかったでしょうね。
あはは!😂面白かったですー!!!!!✨
警察官って課によっては、犯人相手に舐められないように反社のような雰囲気に寄せるらしいですよね!!もちろん見た目だけですが!!
タクシー運転手と警察官2人の掛け合いが面白かったですー!!
そして幽霊がすぐに引っ込んだのも面白かったです✨