クリスマスプレゼント

奈村

クリスマスプレゼント(脚本)

クリスマスプレゼント

奈村

今すぐ読む

クリスマスプレゼント
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇荒廃した市街地
増田直紀「ハァハァハァ・・・」
増田徹「立つんだ」
増田徹「早く!」
増田直紀「なんなんだよ!」
増田直紀「あの化け物は!」
増田徹「ウィルスは進化するんだ!」
増田徹「だからある日突然 変異してもおかしくない」
変異型ゾンビ「ヴァォォォォン!」
増田直紀「見つかった!?」
変異型ゾンビ「ヴァアアアアン!」
増田直紀「く、来る!」
増田直紀「父さんだけでも逃げて!」
増田徹「い、嫌だ」
増田徹「約束したんだ!」
増田徹「京子と約束したんだ!」
変異型ゾンビ「キシャャャャ!」
増田直紀「うわぁぁぁぁ!」
増田徹「直紀ーっ!」

〇研究開発室
  5年前
  202X年
  某国の研究所から流出したウイルスは

〇東京全景
  瞬く間に世界に広がり

〇おしゃれな住宅街
ゾンビA「ヴォォォ!」
  感染した人をゾンビに変えた
ゾンビB「ギシュュュ!」
  政府は未感染者の救出に全力を注いだが

〇一戸建て
  それでも多くの人が未だ取り残されていた
「直紀!」

〇綺麗なリビング
増田徹「・・・全身が火のように熱い」
増田京子「駅前の薬局に行ってくる」
増田京子「まだ薬が残っているはずだから」
増田徹「でも外はゾンビだらけだよ」
増田京子「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
増田京子「直紀が死んじゃうかもしれないのよ!」
増田徹「・・・僕が行く」
増田徹「僕が薬を取ってくる」
増田京子「徹が?」
増田京子「虫一匹殺せもしないのに?」
増田徹「・・・」
増田京子「ごめん 言い過ぎた」
増田京子「でもね 私はそんな徹を好きになったんだよ」
増田徹「・・・うん」
増田京子「ねえ 約束して」
増田京子「もし私が帰ってこなかったときは 何があっても直紀を守るって」
増田徹「帰ってこないなんてそんな・・・」
増田京子「もしもよ もしもの時だから」
増田徹「・・・わかった」
増田徹「約束するよ」
増田京子「・・・じゃあ 行ってくるね」
増田徹「待って!」
増田京子「どうしたの?」
増田徹「これ」
増田徹「忘れてた?」
増田徹「今日はクリスマスだよ」
増田京子「もしかして作ってくれたの?」
増田徹「あまり良い出来じゃないけど」
増田京子「・・・ごめん」
増田徹「どうして謝るの?」
増田京子「あげられるものが何もないから」
増田徹「帰って来て」
増田徹「僕と直紀のもとに」
増田徹「それがクリスマスプレゼントだから」
増田京子「わかった」
増田京子「薬を持って必ず返ってくる」

〇一戸建て
  ピンポーン♪

〇玄関内
増田徹「お帰り」
増田徹「きょ・・・」
特殊部隊員A「救助に来ました」
特殊部隊員A「お一人ですか?」
増田徹「奥に息子がいます」
特殊部隊員A「おい」
特殊部隊員B「ハッ」

〇綺麗なリビング
特殊部隊員B「安心してください」
特殊部隊員B「避難所には医療施設もありますから」
増田徹「よかった」
特殊部隊員A「ではお父さんも行きましょうか」
増田徹「待って下さい」
特殊部隊員A「どうしました?」
増田徹「薬を取りに行った妻がまだ戻って来ていないんです」
特殊部隊員A「出て行かれたのはいつ頃ですか?」
増田徹「7時間前です」
特殊部隊員A「・・・」
増田徹「必ず帰ってくるって言ったんです!」
特殊部隊員A「残念ながら我々にはもう待てる時間の余裕はありません」
増田徹「お願いします」
増田徹「少しだけでもいいんです」
特殊部隊員A「無理です」
増田徹「じゃ、じゃあ僕はここに残ります」
特殊部隊員A「この一帯は警戒区域に設定されてます」
特殊部隊員A「ですから強制的に連れて行くこともできるんですよ」
増田徹「・・・」
特殊部隊員A「お父さん」
特殊部隊員A「もしあなたがここに残ったら 病気の息子さんは誰が看病するんですか?」
増田徹「・・・」
増田徹「わかりました」
特殊部隊員A「では行きましょう」
増田徹(必ず迎えに来る)
増田徹(迎えに来るから)

〇一戸建て
「京子っ!」

〇荒れた倉庫
増田直紀「ハアハア・・・」
増田徹「ここなら安全だ」
増田直紀「あんな化け物に体当たりするなんて無茶だよ」
増田徹「お前を守るためならなんだってするさ」
増田直紀「母さんってどんな人なの?」
増田徹「覚えていないのか?」
増田直紀「父さんから見た母さんを知りたいんだ」
増田徹「とても強くて とても優しい人だよ」
増田直紀「それなら俺の知ってる母さんと一緒だね」
増田徹「でも涙もろいのは知らないだろ?」
増田徹「初めてのデートの時に映画を観たんだけどわんわん泣いちゃってさ」
増田直紀「へー意外」
増田徹「だろ?」
増田徹「それで僕はこの人を守りたいって思ったんだ」
増田徹「結局 守られてたのは僕の方だったけど」
増田直紀「・・・母さんは生きてるよね」
増田徹「絶対に生きてる」
増田徹「だから今日は休んで 明日、また探そう」
増田直紀「もう一つ聞いていい?」
増田直紀「初めてのデートで観た映画って何だったの?」
増田徹「それは二人だけの秘密」
増田直紀「ケチ」

〇荒廃した街
「うう・・・」

〇荒れた倉庫
増田直紀「ううう・・・」
増田徹「どうした?」
増田徹「凄い熱・・・」
増田徹「いつからだ?」
増田徹「いや どうして黙ってたんだ?」
増田直紀「言ったら母さんを探しに行くのやめてたでしょ?」
増田徹「当然だ」
増田直紀「だから言わなかったんだ」
増田直紀「俺の所為で父さんは5年も我慢していた」
増田直紀「これ以上 足枷になりたくなかったんだ」
増田徹「・・・」
増田直紀「ごめんなさい」
増田徹「やっぱり親子だな」
増田徹「すぐに謝るところが京子にそっくりだ」
増田直紀「・・・そんなことないよ」
増田徹「薬がいるな」
増田直紀「大丈夫だって 時間が経てば治まるから」
増田直紀「それに父さん一人じゃ無理だよ」
増田徹「どうして身体の弱いお前を連れてきたと思う?」
増田直紀「母さんとの約束を守るため?」
増田徹「ずっと後悔してたんだ」
増田直紀「後悔?」
増田徹「あのとき京子を一人で行かせるんじゃなかった」
増田徹「皆で行くべきだったって」
増田徹「だからお前を背負って行く」
増田徹「もう二度と離ればなれにはならない」
増田直紀「・・・うん」
「キシャャャャ!」
「!?」
増田徹「まさか・・・」
変異型ゾンビ「キシャャャャ!」
増田直紀「あいつどうして俺たちを付け狙うんだ!」
増田徹「こうなったら殺るしかない」
増田徹「直紀は隠れていろ」
増田直紀「父さん!」
増田直紀「これを」
増田直紀「避難所から持ってきたんだ」
増田直紀「こんなのしかなくて ごめん」
増田徹「ほら」
増田徹「また謝った」

〇荒廃した街
「キシャーーーン!」

〇荒れた倉庫
増田徹「ハァハァハァ・・・」
増田直紀「や、やった・・・やったね」
増田直紀「父さん!」
増田徹「・・・」
増田直紀「どうしたの?」
増田直紀「どこかやられた!?」
増田徹「いや ゾンビがこれを握り締めていたんだ」
増田直紀「薬?」
増田徹「そうみたいだ」
増田徹「だけど どうしてこんなものを・・・」
増田直紀「プレゼントだよ」
増田徹「プレゼント?」
増田直紀「だって今日はクリスマスだよ」
増田徹「あ・・・」
増田徹「すっかり忘れてたよ」

〇荒廃した街
「隊長 これ見て下さい!」

〇荒れた倉庫
特殊部隊員A「変異型か・・・」
特殊部隊員A「あの親子がやったのかな?」
特殊部隊員B「あの親子がこんなのと戦えますかね?」
特殊部隊員A「まあ無理だろうな」
特殊部隊員A「まったく どこへ行ったんだか」
特殊部隊員B「隊長のお子さんって幾つですか?」
特殊部隊員A「なんだ? 急に?」
特殊部隊員B「こいつの腹の傷口からこんなのが出てきたんで」
特殊部隊員B「クリスマスプレゼントにどうかなって」
特殊部隊員A「そんなもの気持ち悪くてやれるわけないだろ」
特殊部隊員B「ですね」
特殊部隊員B「捨てます」
特殊部隊員B「でも こいつ殺されたのに穏やかな顔してますね」
特殊部隊員A「そうか?」
特殊部隊員B「それでいて泣いてるような」
特殊部隊員A「気のせいだろ?」
特殊部隊員A「化け物が泣くかよ」

〇入り組んだ路地裏
増田直紀「母さーん!」
増田徹「京子ーっ!」

コメント

  • OMG,
    か、考えたくない‥😱
    主役達が倒したゾンビの正体なんて
    😭

  • 短い中に、まるで映画のようなボリュームを感じました。
    家族愛って、決して消えるものではないんですね。
    お母さんもあんな姿になり理性は消えても、二人をわかっていたという…。

  • なんて事だ…😭自我を失っても妻であり、母であり続けたんですね…ゾンビものでありながら、とても切ない読後感でした!

コメントをもっと見る(7件)

ページTOPへ