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米子(公式)

第4話 ヒーローには救えない!(脚本)

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〇渋谷のスクランブル交差点
ひろし「・・・とんかつ旨かったよ」
ひろし「ありがとな」
凛子「ううん」
凛子「なんか無理に誘っちゃってごめん」
ひろし(何やってんだよ、俺・・・)
ひろし(凛子に気を遣わせて)
ひろし(こんなんじゃヒーロー失格だ)
  大型ビジョンからニュースが流れる
アナウンサーの声「昨夜●●区で」
アナウンサーの声「30代男性が刃物を持った女に 切りかかられ重傷──」
ひろし「あれ?」
凛子「●●区って、ここだよね」
アナウンサーの声「女は半年前から男性への ストーカー行為を繰り返していたとみられ」
アナウンサーの声「いまだ逃走中」
アナウンサーの声「警察は女を公開手配し 情報を呼びかけています」
ひろし「──え?」

〇木調
アナウンサーの声「女は住所不定、無職──」

〇渋谷駅前
女(どうしよう、見失っちゃった)
女(たしか帽子は黒で・・・)
「あの」
ひろし「黒い帽子の人なら 右のかどを曲がりましたよ」
女「え・・・あ」
女「ありがとうございます!」

〇渋谷のスクランブル交差点
凛子「怖いね 男の人、助かるといいけど」
ひろし「あ・・・」
ひろし「お、俺が」
凛子「ひろし?」
ひろし「俺が、道案内したから・・・」

〇大きな公園のステージ
  ヒーローショー終了後

〇更衣室
ひろし(だめだ、全然集中できなかった)
ひろし(ニュースは あの女はどうなった!?)
  新規メッセージ:三田村
ひろし「さんだーそん?」
  ひろし、この前はありがとな
  実は、言いにくい話なんだが──
ひろし「?」
  あの高校生が
  近所の別の店で万引きして捕まった
ひろし「!」
  今度また相談に──
ひろし「そんな・・・」

〇開けた交差点
(怖い──)
ひろし「・・・っ!」
(私、どうなるんだろ・・・苦しい)
ひろし(心の声か)
ひろし(・・・嫌だな)
ひろし(──嫌?)
ひろし(そんなの思っちゃだめだろ)
ひろし(・・・ヒーローなんだから)
ひろし(ただ)
ひろし(・・・気が重い)

〇大学病院

〇大きい病院の廊下
(“かのんちゃん元気になって” か)
(・・・こんな寄せ書き意味ないのに)
ひろし(声が近いな)
凛子「ひろし?」
ひろし「凛子! どうしてここに」
凛子「どうしてって、私の職場ここだから」
凛子「なに、誰かのお見舞い?」
ひろし「うん」
ひろし「かのん、って子なんだけど」
凛子「ああ、その子なら一番端の病室だよ」

〇病室のベッド
かのん「はい」
かのん「・・・あなた、誰?」
ひろし「急にごめん」
ひろし「少し話してもいいかな?」
かのん「・・・いいよ、入って」
ひろし「ありがとう」
ひろし「あ、俺、並野ひろし」
かのん「そう。私はかのん」
ひろし「安心して 怪しい奴じゃないんだ」
かのん「大丈夫、見れば分かるよ」
ひろし「ん?」
かのん「ポケットから見えてるキーホルダー」
かのん「エンパシオンでしょ?」
かのん「悪い人はそんなの付けないから」
かのん「私も似たの持ってるんだ、ほら」
ひろし「うわっ」
ひろし「それエンパシオンのフィギュアじゃん!」
ひろし「君、若いのに良い趣味してるねー」
かのん「歴代のヒーロー物は全部見てるけど」
かのん「エンパシオンは・・・ 特にストーリー良いから」
ひろし「ねえ、かのんちゃん」
ひろし「今何か困っていることない?」
ひろし「俺・・・君を助けにきたんだ」
かのん「それヒーローの真似?」
かのん「心の声でも聞こえたみたい」
ひろし「・・・どうして、それを!?」
かのん「え」
かのん「うそでしょ、あなたもなの?」
かのん「そっか」
かのん「それで私の所に来たんだ」
かのん「・・・あほくさ」
ひろし「おい、さっきから何を言って」
かのん「雷に打たれて」
かのん「エンパシオンみたいな力を 手に入れたんでしょ?」
ひろし「なんで分かるんだ?」
かのん「分かるよ」
かのん「私も同じだったから」

〇街の全景
  雷が落ちて
  心の声が聞こえるようになって
  嬉しかった・・・
  自分は特別な存在なんだと思えた
  そこから
  色んな人を救おうとしたけど・・・
  私の行動が、逆に誰かの
  不幸のきっかけになったり
  一時的な助けじゃ何も解決しなかったり
  ヒーローになるって、すごく難しかった

〇病室のベッド
かのん「だんだん 嫌になってきちゃって・・・」
かのん「そんなときに 自分の病気が見つかったの」
かのん「私の病気、肺なんだけど・・・」
かのん「治らないんだ」
ひろし「え・・・」
かのん「自分が救われない立場になって 初めて気づいた」
かのん「ヒーローなんて意味がないって」
かのん「それきり、心の声は聞こえなくなって」
かのん「私はヒーロー失格ってこと」
かのん「・・・こんなのに 憧れてたのがバカみたい」
ひろし「おい、やめろ!」
ひろし(ああ・・・ エンパシオンの足が折れた)
ひろし「バカみたいなんて言うな!」
ひろし「ヒーローはいつだって 皆を助ける希望の存在だ!」
ひろし「憧れたっていいだろ!?」
ひろし「俺はこの力で エンパシオンみたいに・・・」

〇黒

〇病室のベッド
ひろし「エンパシオン、みたいに・・・」
かのん「・・・っふ」
かのん「あはは!」
かのん「なら私のことを助けて」
ひろし「え」
かのん「病気を治して、私を救ってよ」
ひろし「それは・・・」
かのん「無理でしょ?」
かのん「そういうことなんだよ」
かのん「ヒーローなんて所詮、綺麗事なんだよ」
かのん「もう出てって」

〇病院の待合室
ひろし「すみません、テープお借りできますか?」
ひろし(エンパシオンの足はくっつけとこう・・・)
「あの」
かのんの母「かん違いだったらごめんなさい」
かのんの母「それ、娘の物に似ている気がして」
ひろし「え?」
ひろし「ああ、実は──」

〇病院の待合室
かのんの母「──そうだったんですね」

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次のエピソード:第5話 へろし!

コメント

  • うおぉ…数々の伏線がこんな形で収束するとは…😭
    長らくヒーロー物を観てると、「これでいいの…?」「正義ってこういうもん…?」みたいな回は少なからずあるので……ヒーローとは何か、救うとはどういう事かという問いに正面から向き合う事こそ、ヒーローたる第一条件とさえ思えます
    そこにたった6話程度で真っ直ぐ突っ込んでいくこの作品の素晴らしさよ!✨
    そして凛子さん…カッコいいぃ~!!😂

  • 医療従事者は本当に身近な存在ですよね。助けたくても助けられないことを何度も目の当たりにする。それをヒーローとの葛藤との交わらせることで本質が分かりやすくなると思いました。
    その場で助けたつもりでも、本当に相手を助けることに繋がっているのかも重たいテーマです

  • 「ヒーローの本質はおせっかい」「やらない善意より、やる偽善」
    ヒーローの本質に迫る神回でした👍👍👍👍👍

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