第1話 ヒーロー現る!(脚本)
〇黒
共心戦士 エンパシオン「何かを成し遂げることが 全てではない!」
共心戦士 エンパシオン「どんな状況でも決してあきらめず」
共心戦士 エンパシオン「困っている者の心に寄り添い」
共心戦士 エンパシオン「手を差し伸べる!」
それが──
〇大きな公園のステージ
エンパシオン「ヒーローだっ!!」
敵「ぐぁぁ」
敵のボス「くそっ」
敵のボス「今日のところは退くぞ」
デパート横
ヒーローショー会場
司会のお姉さん「みんな〜」
司会のお姉さん「もう安心だね」
司会のお姉さん「ヒーローに大きな拍手~!」
敵(ひろし)(最高だ、ヒーロー!)
凛子「・・・・・・」
〇東急百貨店
ヒーローショー 終了後
〇大きな公園のステージ
「凛子!」
凛子「お疲れ様」
ひろし「よかっただろ?」
凛子「よかっただろって・・・」
凛子「ひろし敵役じゃん!!」
凛子「絶対見ろって念押すから 夜勤明けのまま来たのに・・・」
ひろし「まあまあ」
ひろし「俺が主役じゃないのは いつものことだろ」
ひろし「今日のは ”伝説ヒーロー復刻公演”だったから」
ひろし「凛子にも見てほしかったんだよ」
凛子「あれが伝説のヒーローなの?」
ひろし「あぁ、今日の主役は15年前放送の 『共心戦士エンパシオン』」
ひろし「敵役を演じさせて頂いたのも 名誉な事なんだぞ」
凛子「へぇ」
ひろし「いいか、ストーリーはこうだ」
〇街の全景
なんの特技もない男が
ある日落雷をきっかけに
『困っている者 』の
心の声を聞く力を手に入れる
男はその力だけで奮闘し
ヒーローとして皆を救う
ひろし「なんと言っても 自らの命を犠牲にするあのラスト!」
凛子「とにかく!」
〇大きな公園のステージ
凛子「ひろしがその エンパシオンが好きっていうのは分かったよ」
凛子「どんな形でも ショーに出られてよかったね」
ひろし「おう」
ひろし「来てくれてありがとな」
凛子「うん」
凛子「もうバイト終わるんでしょ? お昼どこかで食べてく?」
ひろし「あー」
ひろし「俺今日はパス」
凛子「まだ何かあるの?」
ひろし「ないけど」
ひろし「今月ショーの回数少なくて・・・」
ひろし「その」
ひろし「ちょっと金欠でして・・・」
凛子「・・・ふーん」
凛子「私、今日誕生日なんだけどな」
ひろし「あっ」
凛子「・・・やっぱり忘れてたか」
凛子「期待して損した」
ひろし「いや、違う、えっと・・・」
ひろし「肉食べ行く?」
凛子「もういいよ」
ひろし「ごめんって! ちゃんと埋め合わせするから!」
凛子「はぁ・・・」
凛子「ひろし」
ひろし「ん?」
凛子「ヒーローに憧れるのはいいけど」
凛子「そろそろ現実も見たら?」
凛子「じゃあまた」
〇大きな公園のステージ
ひろし(あー)
ひろし(またやっちまった)
ひろし(・・・上手くいかねーなぁ、色々)
ひろし(でも俺は)
人とは違う特別な何かを
絶対持ってる
いつか俺が
ひろし(伝説のヒーローになるんだ!)
ひろし「共振戦士ひろしおん!」
ひろし「なんつってー・・・」
ひろし「はははは!!」
ひろし「あれ?」
〇空
(なんか急に曇ってきたな)
(ん?)
〇大きな公園のステージ
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
〇黒
あれ? 暗い
え、嘘!? 俺死んだ!?
嫌だっ、無念すぎる、頼む
誰か
「誰か助けて」
誰だ? 女の子の声?
「助けて・・・でも」
「──ヒーローなんていない」
〇大きな公園のステージ
「うわぁぁぁ!」
ひろし「・・・生きてる」
ひろし「──俺、雷に打たれたはずじゃ!?」
ひろし「・・・晴れてるな、女の子もいないし」
ひろし「怖っ、疲れてんのか」
ひろし(荷物とって帰ろ)
〇ビルの地下通路
(はぁ、どうしよ)
ひろし(・・・誰もいない)
ひろし(今、男の声したのに)
(さすがに今日は言わないと)
ひろし(声が、だんだん大きくなってる)
ひろし(どうなってんだよ一体・・・呪いか!?)
〇更衣室
男子ロッカー
ひろし「・・・おつかれ」
松田「おつかれ様でーす」
ひろし(ん?)
ひろし(松田君の声、さっきの声と同じ?)
松田「今日のショーきつかったっすねー」
松田「俺、Tシャツの汗やばいですよ」
ひろし「やっぱり同じだ」
松田「え、このシャツですか?」
松田(これ)
松田(兄貴から借りパクしたやつだな)
ひろし「なぁ・・・そのシャツって」
ひろし「お兄さんから借りパクしたやつ?」
松田「そうなんですよ。言いましたっけ?」
〇大衆居酒屋(物無し)
(沖縄料理の居酒屋で)
(飲みすぎて吐いた日に 泊まって借りたやつだな)
「ちょっと試しに聞くけど」
〇更衣室
ひろし「沖縄料理の居酒屋で飲みすぎて 吐いた時に借りたやつ?」
松田「そうですけど・・・」
松田「え、俺この話 並野さんにしてないですよね?」
ひろし「してない、な」
ひろし「そうだよな」
ひろし「・・・まじか、これ」
松田(なんで並野さんが知ってるんだ!?)
ひろし「間違いない」
ひろし「心の声だ!」
ひろし「雷に打たれて 心の声が聞こえるようになる」
ひろし「この流れ・・・まさにエンパシオン!」
松田「はい?」
ひろし「とうとう俺は選ばれたぞ!」
ひろし「ヒーローに!!」
松田「何言ってんすか?」
ひろし「そんなことより松田君!!」
ひろし「今何か悩んでるんだろ? 俺に話してみろよ」
松田「悩みなんて、別に」
ひろし「いや! 悩んでるって、顔に出てる」
松田「・・・なんか」
松田「今日の並野さん、すごいな 全部見透かされてる」
ひろし「え、まあな」
ひろし「ヒーローたるものこれくらいお見通しよ」
ひろし「ははは!」
松田「実は、所属してる劇団で」
松田「急遽代役で 主役をやらないかって話が出て」
ひろし「おぉ!」
松田「引き受けたいんですけど」
松田「ヒーローショーと日程が 重なる部分があるんですよ」
ひろし「まじか」
松田「ヒーローの主演 やっと巡ってきたとこなのに」
松田「劇団の方優先して休むってのは 印象悪いし」
松田「どうしたらいいかなって」
ひろし「そうだったのか・・・」
松田(まずい、俺すごい失礼なこと言った)
松田(並野さん年上だし まだ主演やったことないのに)
ひろし「松田君」
ひろし「俺がそんな小さいことを 気にするわけないだろ!?」
松田「え?」
ひろし「やべ、いや・・・」
ひろし「事情はよく分かったよ」
松田「まぁ」
松田「自分でどうにかするんで大丈夫です」
ひろし「大丈夫じゃないだろ?」
ひろし「一緒に対策を考えようぜ」
松田「でも」
ひろし「俺が松田君を助けたいんだ!」
ひろし「君の役に立たせてくれ、なんとしても!!」
ひろし「な!?」
松田「あ・・・じゃあ、ぜひ」
〇更衣室
数分後
ひろし「よし、思いついた」
松田「どんなのですか?」
ひろし「名付けて松田ひろし作戦!」
ひろし「この先、松田君は 毎日同じような服を着る」
松田「はい」
ひろし「マスクとサングラスで行動し」
ひろし「出勤後は速やかに ヒーロースーツに着替える」
松田「・・・はい」
ひろし「俺達、髪型と体型似てるだろ?」
ひろし「日程が重なった時だけ 俺と入れ替わろう」
松田(そんな低レベルな作戦? マジかよ・・・)
ひろし「失礼だな、大マジだよ!」
松田「はい?」
ひろし「あ、いや、何でもない」
松田「それ普通にばれません?」
ひろし「そうか? 俺だったら気づかないと思うけど」
松田(でも確かに──)
松田(次元が低すぎるからこそ)
松田「意外と、気づかない・・・ かもしれません」
ひろし「そうだろ? なら決まりだな」
松田(本当に大丈夫なのか・・・これ)
松田(もし)
松田(並野さんが誰かにばらしたら)
ひろし「大事な夢なんだろ?」
ひろし「誰にも言わない。そこは安心しろよ」
松田「並野さん・・・」
松田「分かりました。頼みますよ」
ひろし「あぁ、大丈夫!」
ひろし「絶対に上手くいく! 自信を持て!」
松田「はい!」
〇空
一週間後
「きゃあ〜!」
〇大きな公園のステージ
司会のお姉さん「助けてヒーロー」
エンパシオン(ひろし)「皆の平和は俺が守る!」
エンパシオン(ひろし)(ばれてない)
エンパシオン(ひろし)(ばれてないぞ松田ぁ!)
エンパシオン(ひろし)(この力があれば、上手くいく)
エンパシオン(ひろし)(俺は)
本物のヒーローになれる!
〇黒
「こんなに苦しくて、辛いなら・・・」
共心戦士 エンパシオン「ヒーローになんて」
共心戦士 エンパシオン「なりたくなかった」
この時の俺はまだ知らなかった。
ヒーローには
喜びだけでなく
苦しみも
伴うということを・・・
気になったので読んでみたところ、いい1話でした!何気ない理由でTapNovelという世界に入ってしまったのですが、表紙から魅力的な作りで最高です。ひろしが今後どうなっていくか気になるところです。自分のペースで続き読ませていただきます!!
うぉぉお、構成上手いぃぃ……😭 しかもヒーロー×弱いとか、自分の好みどストライクで最高です……!😭😭
敵(ひろし)で笑いました😂 あの一番最初に聞いた女の子?の心の声は、いつか関わってくるのでしょうか……?
米子先生らしい、地に足のついた王道と絶妙なハズし具合、最高のヒーローものになりそうで楽しみです!😭😭
ワクワクする〜と、思っていたけど、ラストがすごくドキドキス!