聖夜の三択郎’s(脚本)
〇住宅街の道
一郎「おーい! 緊急事態発生~!!」
俺「どうした一郎!?」
一郎「例の家、とうとうオール電化になっちゃった!」
俺「Aエリアの家だな? じゃあ次郎、おまえが狙撃でカバーしろ! 天窓はまだアナログのはずだ!」
〇マンション群
次郎「了解、銃弾式鍵開けね・・・ それと三郎」
俺「お前もか! どうした?」
次郎「B-12の家、子供がゲームでオールするってさ。どうする?」
俺「くっ・・・一郎! 俺がAエリア半分受け持つから、おまえ催眠術できたよな!?」
〇住宅街の道
一郎「特別お手当出る?」
俺「出す出すいっぱい出す!」
一郎「じゃあやる!!」
〇マンション前の大通り
俺「オーケーおまえら! よし、今年こそはギリギリ予定通りに・・・」
〇おしゃれなリビングダイニング
息子「ねーパパ・・・」
息子「いや。『サンタさん』と呼ぶべきかな?」
父「ははは、なんだいいきなり? 早く寝ないと、サンタさん来てくれないぞー?」
息子「そうだね・・・ふふ。隠さなくったっていいんだよ、『サンタさん』」
父「いや、違うんだジョージ! サンタさんは本当にいるんだよ!」
息子「うん。プレゼント、楽しみにしているよ・・・」
父「ああっ、待ってくれ、ジョォォオオジ!!」
〇マンション前の大通り
俺「・・・・・・」
俺「俺も緊急事態発生!! おまえら助けてくれぇえ!!!」
〇東京全景
聖夜に子供の夢を守る!
それが俺達、チームサンタクロースの仕事だ!
・・・え? 名前の由来?
それは・・・
『散々苦労する』、からだよ・・・
〇見晴らしのいい公園
俺「はい、そういうわけで。12月25日、午前2時になったわけですが」
一郎「はーい」
次郎「はい」
俺「進捗どうですか皆さん」
一郎「Aエリアの宅配委託案件が残ってる。いつものとこ」
次郎「警備体制バッチリの高級住宅か。三郎、今年はステルス迷彩あるんだよな?」
俺「五分しか持たないけどな!!」
一郎「は!? 門から家まで五分かかるんですけど!」
俺「うるせぇ! 飛んで帰って来い!」
次郎「フッ・・・今年も秘密兵器『戦場のメリークリスマス』の出番か・・・」
一郎「やーだー! もう人間大砲はやーだー!!」
俺「んで? 次郎は?」
次郎「若干遅れてる。B-17、この家が新しく二匹の犬を飼い始めてな」
一郎「知ってる。シェパードだっけ? かっこいいけど、吠えられたら怖いよね」
俺「B-17っていうと・・・狙撃拠点にしてる、あのヘリポート付き五階建てか」
俺「・・・あれ? でも次郎おまえ、犬好きだろ?」
次郎「もう一匹が、ポメラニアンなんだ」
俺「うん」
次郎「もふには勝てん・・・もふもふもふもふ・・・」
俺「あっ、さてはお前」
次郎「もふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉ」
一郎「次郎が壊れた!?」
俺「毛塊中毒による突発性毛玉欠乏症だ。ほら次郎、ぬいぐるみだぬいぐるみ!」
次郎「もっふぁあ・・・」
俺「これでよし」
俺「さて、俺はだが・・・まあ厄介なことになってる。ぶっちゃけおまえらの知恵を借りたい」
一郎「いいよー。なになに?」
俺「・・・次郎は後回しだな。C-28の家なんだが・・・」
〇一軒家の玄関扉
次郎「C-28・・・この家だな?」
俺「ああ。じゃあおまえら、打ち合わせ通りに頼むぜ」
〇シックな玄関
婆「あら、いらっしゃい! 待ってたわよ!」
「お邪魔しまーす!!」
俺「えーっと、それで、お孫さんのクリスマスの件でしたよね」
婆「そうなの。これ、見てくれるかしら?」
『サンタさんへ。ことしはイケメンのサンタさんがほしいです。プレゼントはチョコでいいので、イケメンのサンタさんをください』
婆「サンタさん役はいつもパパなんだけど、去年顔を見られちゃってね・・・」
一郎「仮装のおかげでお父さんだとはバレなかったけど・・・」
次郎「お孫さんのお眼鏡にはかなわなかったと」
婆「そうなのよ。咄嗟に『サンタ派遣協会の者です!』なんて言っちゃったものだから・・・」
俺「・・・やるだけやってみましょう」
婆「お願いするわ。服は全員分用意しておきましたから」
〇ファンシーな部屋
サンタクロース(一郎)「・・・メリークリスマース」
サンタクロース(次郎)「・・・メリークリスマース」
サンタクロース(俺)「・・・メリークリスマース」
娘「・・・サンタさん。来てくれたんだ」
サンタクロース(俺)(んんん案の定起きていらっしゃる!)
娘「私のお願い、聞いてくれたんだよね?」
サンタクロース(一郎)「んーと、うん、まあ・・・」
娘「おひげでよく分かんないけど・・・去年のサンタさんよりはかっこよさそう!」
サンタクロース(俺)「マジで!? ありがとう!!」
娘「んーでもぉ・・・とってもイケメン! ってほどではぁ・・・」
サンタクロース(次郎)「すまない、これがサンタ派遣協会の限界なんだ・・・!」
娘「んー・・・まぁいっか」
娘「じゃあ三人だし、私が一番のイケメンを選んであげる!!」
サンタクロース(一郎)「・・・!!」
サンタクロース(次郎)「・・・!!」
サンタクロース(俺)「・・・!!」
〇黒
えーっと、一番はね・・・この人!!
〇見晴らしのいい公園
一郎「・・・くっそぉ・・・」
俺「元気出せって・・・」
次郎「フッフフフ・・・ハハハ・・・」
俺「おまえも空気読めって!」
俺「ほら、仕事はまだちょっと残ってるんだからな!!」
〇見晴らしのいい公園
一郎「うう・・・これで、全部だよね・・・ 全部、終わったよね・・・?」
一郎「――あ」
次郎「・・・朝だ」
俺「俺達、間に合ったんだな・・・」
〇東京全景
苦節五年。
ついに俺達は、目的を達成した。
だがクリスマスよ、来年こそは平穏無事であれ!!
~fin~
「毛玉中毒の突発性毛玉欠乏症」が頭にこびりついて離れません!本当にありそうな病名ですね!(笑)ギャグのセンスが盛りだくさんで面白かったです。
散々苦労する、三択でイケメンを選ばれるサンタクロース、楽しいです。リアルの中にギャグ要素を多分に含んでいて、読んでいて笑顔になる作品ですね、
タイトルがうまくリンクしていますね!(笑)まさかの三択。みんなの会話がテンポよく、とても楽しく読み進めさせて頂きました。