女城主(脚本)
〇屋敷の大広間
「いったい、どうしたらいいのやら・・・」
「まさか男が産まれないまま、殿が亡くなられるとは・・・」
「お子様も、幼い方々しかおらぬし・・・」
「やはり、姫様になっていただくしかないのか・・・」
〇屋敷の大広間
数年後
今川義元「これから、桶狭間へと向かう!!」
今川義元「相手はあの織田信長だ! たとえ、何時であっても気を抜くな!!」
「はっ!」
〇草原の道
今川義元「・・・」
爺「殿!」
今川義元「爺か」
爺「松平元康が城に向けて出立したそうです」
今川義元「そうか 元康なら必ずやってくれるだろう」
爺「・・・」
爺「殿は戦前に必ず一人になっていらっしゃいますが、なぜです?」
今川義元「そうだな 古くからの家臣以外に顔を見せぬようという意味もあるが、一番は・・・」
今川義元「もし、私が女子として育っていたらどうなっていたのかと考えている」
爺「・・・」
今川義元「妹達が、楽しそうにお茶や生花の稽古をしているのをみると少し・・・羨ましい 私も一通りしてはいるが詳しくはやっていないから」
今川義元「・・・ !!」
今川義元「すまない 戦前とはいえ、命をかける場でする話ではないな」
爺「この戦いが終われば養子の氏真殿が今川家当主になられます。女子として暮らしていけましょう」
今川義元「そうだな」
〇原っぱ
爺「ご報告申し上げます! 松平殿が、城への兵糧入りを成功させました!」
今川義元「そうか!」
今川義元「皆の者!よく聞け! 元康の成功により、我が軍は戦場へと赴く! 心してかかれ!!」
「はっ!」
〇原っぱ
今川義元「くっ! 拉致が開かない!」
今川義元「織田軍が強すぎる!」
家臣「援軍だぁーーーーー!」
今川義元「なんだと!? これ以上は・・・ くそっ!」
爺「殿ー! こうなれば、もうお逃げください!」
今川義元「なんだと!? 大将である私が、そのようなこと出来るわけがないだろう!」
爺「あなたは、まだ十七で女なのですよ! この様な戦は、本来あなたのすべきことではありません!」
今川義元「今さらなにを! ここまで来たのは私の意思だ!最後まで貫く!」
???「へぇ さすが今川軍の大将だな!」
「!?」
今川義元「お前は!」
今川義元「織田・・・信長!!」
織田信長「まさか、今川の大将が女だったとはな!」
今川義元「!!」
織田信長「まぁ、戦場に出てんだから命をかける覚悟はあんだろ・・・」
今川義元「くっ!」
爺「殿!」
織田信長「おっと! 邪魔すんじゃねえぞ爺ィ!」
織田信長「おいおい、このままやられっぱなしか? やり返してみろよ!今川ぁー!」
織田信長「おっと! そう来なくっちゃなぁ!」
〇原っぱ
今川義元「くっ!はぁはぁ」
織田信長「まぁ、なかなかやるじゃねえか」
織田信長「だが」
今川義元「うぅ」
織田信長「俺には勝てねぇ」
織田信長「今川の首、もらった!」
爺「やめろー!」
織田信長「邪魔すんじゃねえっていっただろ!」
今川家の家督相続の混乱はなはだしく義元が担ぎ出された史実もあるので、こういう設定が成り立つなーと納得してしまいました!この大胆な設定からの物語展開、楽しみにしてます!
戦の前に一人になる義元の心情を思うと切なかったです。女武将とか女城主という言葉には歴史好きのロマンを掻き立てる独特の魅力がありますね。このストーリーで義元を倒す信長にも、佐藤健一氏の「女信長」がありますし。女武将の心の機微を表現する物語が、歴史小説ジャンルの一つとして確立されたら嬉しいなあ。