結果よりも成果(脚本)
〇ファンシーな部屋
家に帰ってすぐに
助けてくれた彼の学校を特定すべく
近辺の学校の制服を調べていた私は
ついに制服から
学校を見つけることに成功した
どうやら彼はあの場所から
車だったら数十分で行ける距離にある
普通の公立高校の生徒だったようだ
通っている学校がわかったならば
次は個人の特定をするしかない
学校ホームページの記事を
一つずつ丁寧に確認して
どこかに映り込んでいないか探していく
桜花「・・・みーつけた」
[校内美化活動]と
タイトルの付いた記事には
ゴミを拾う彼の姿が端っこに写っていた
桜花「ふふっ・・・」
桜花「キミは真面目なんだね」
彼のことがもっと知りたくて
他の記事も読み漁るが
それ以外はまったく見当たらない
どうやら収穫はこれまでのようだ
桜花「もっと、もーっと・・・」
桜花「彼のことが知りたいなぁ」
私がそう言って深いため息をついた時
部屋に付けられている内線電話が鳴った
桜花「・・・はい」
桜花「・・・はい、わかりました」
桜花「今から行きます、はい」
電話を戻して、食事をしに
ダイニングまで向かう
・・・私の楽しい時間が
終わってしまった
明日はもっと、時間をかけて
彼について調べよう
〇おしゃれなリビングダイニング
「早く座りなさい」
桜花「・・・はい」
「まだ制服から着替えてなかったの?」
「ほんと、ノロマな子ね」
桜花「・・・ごめんなさい」
「帰ってきたら着替えなさいって」
「何回言わせれば気が済むのかしら」
桜花「・・・ごめんなさい」
お母さんの顔が見られない
怖くて、逃げてしまいたくなるから
「ねぇ、アナタも何か言ってください」
「・・・たまには」
「そんな日もあるのではないでしょうか」
「お嬢様もまだお若いですし」
「失敗する日だってあると思いますので」
「本日のところはお怒りをお静めください」
「・・・チッ」
お母さんの傍に立ち
死んだ魚のような目で
お母さんを窘めたこの人は
お母さんの秘書で
私の、実の父親だ
・・・お母さんのせいで心が壊れて
自分が配偶者であることを
すっかり忘れてしまってはいるが
私のことを娘扱いはしなくても
ちゃんと優しくしてくれるし
甘やかしてくれる
お母さんよりもずっと親らしいことをしてくれる
だから私はお父さんのことは好きだ
・・・お父さんって呼ぶと
困った顔になるけど
お母さんに迫られても
旦那様に悪いので、って断るらしいけど
旦那は貴方なんですよ、可哀想なことに
桜花「・・・・・・」
お母さんの前で食べる食事は
とてもじゃないけど味がしなかった
〇ファンシーな部屋
さぁ、眠ろう・・・と
暗くした部屋で目を閉じる
今日はアリスちゃんと
なんだか変なアフロ頭の人と話せて
とっても楽しかった
もうアフロの人の顔は思い出せないけど
会話の面白さだけは忘れられそうにない
「・・・んふふ」
お友達としたらしい
餃子パーティーの話は
何回も聞きたくなるほど面白かった
誰が何を入れてるのか分からない状態で
キムチチーズを引き当てて喜んだ直後
チョコレートなめ茸を選んでしまって
吐きそうになったり
コーラに牛乳を入れたら
透明になるって聞いて
他の炭酸ジュースにも
牛乳を入れて実験してみたり
私が今までに経験したことが無いような
友達との楽しい思い出を
なんだか味見させてもらえたような気分だ
「・・・・・・」
「私もしてみたいな・・・」
お互いの家にプライベートで行くような
親しい関係の友達など私には居ない
大好きなアリスちゃんだって
私の家にはわざわざ来ないだろう
だから自分じゃ叶わぬ夢だって
ちゃんと分かってるのに
つい、望んでしまう
友達との楽しい時間を・・・
友達を家に呼べるような
平和な家庭を・・・
「・・・もう寝よう」
暗い部屋の中で
どうか夢の中だけでも
幸せでありますように、と
祈りながら眠りについた