勇者様と勇者くんと各種転生者のみなさん

ぬゑ

流転回帰の呪術。(脚本)

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〇豪華な部屋
  部室という名の洋館──
桜白 季四香「──少々話が脱線したが、改めて活動を始めようと思う」
真野 勇者「活動って言われても、俺、何をするのかいまいち分かんないんだよね・・・」
惣 莉緒「もちろん、RPG部の活動ですよ」
真野 勇者「いや、余計わかんないんですけど・・・ 何するの? ゲーム?」
桜白 季四香「・・・ですが妙ですね。 この作戦は主に勇者様の発案だったのですが・・・」
桜白 季四香「なぜわからないのですか?」
馬峰 司「・・・季四香よ、忘れてはおるまいな。 勇者の記憶は、まだ蘇っておらぬ」
桜白 季四香「そ、そうだったな・・・」
桜白 季四香「申し訳ありませんでした、勇者様・・・ 私、すっかり忘れていまして・・・」
真野 勇者「は、ははは・・・別にいいから・・・」
ブレイブ「うーん・・・ 今度、少年と記憶なんかの共有をしていた方がいいのかもしれないね」
真野 勇者「可及的速やかに頼むよ・・・」
桜白 季四香「・・・活動と言っても、私達の目的は一つしかありません」
桜白 季四香「魔王の、捜索です」
真野 勇者「魔王ねぇ・・・」
真野 勇者「そんなのが現代にいるなら、とっくに騒ぎになってそうだけど・・・」
馬峰 司「魔王と言っても、儂らと同じようにこの世界の誰かに転生しているからの」
馬峰 司「それを探すのじゃよ」
真野 勇者「それってさ、この地球のどっかにいる顔も姿も名前もわからない奴を探すってことだよね?」
真野 勇者「ぶっちゃけ、無理じゃない?」
馬峰 司「それなら問題ないぞぇ」
馬峰 司「魔王軍の転生者達は、儂らの近くのどこかにいるからの」
真野 勇者「なんでそれがわかるんだよ」
馬峰 司「それこそが我が秘術、『流転回帰の呪術』であるからの」
真野 勇者「る、るてん・・・なんだって?」
ブレイブ「『流転回帰の呪術』──」
ブレイブ「発動者一帯の生命を巻き込んで、まるごと別の次元に強制転生させる秘術中の秘術のことさ」
真野 勇者「強制転生!? なんかまた物騒な・・・」
ブレイブ「昨日話しただろ? 魔王を倒すための秘策ってやつさ」
真野 勇者「な、なるほど・・・」
馬峰 司「流転回帰の呪術を使えば巻き込まれた者どもは転生し、“やがて回帰に至る”んじゃ」
馬峰 司「この場合の“回帰”とは、即ち、発動直前の状況の再現のこと。 つまり・・・」
桜白 季四香「私達と魔王が対峙した、その時その状況に戻るのです」
馬峰 司「儂らがこうしてこの場に集まっていることも大きいの」
馬峰 司「だからこそ、今がスタートラインというわけじゃ」
ブレイブ「まあ、そこにたまたま“勇者”なんて名前のキミがいたんだから間違われたわけなんだけどね・・・」
真野 勇者「ええと、ちょっと待ってよ?」
真野 勇者「ってことは、この世界のどこかで、魔王とまた戦うってことか?」
馬峰 司「そういうことじゃ」
真野 勇者「ヤベェじゃん! 俺、めっちゃ巻き込まれるじゃん!」
桜白 季四香「巻き込まれる? 何を言っているんですか?」
真野 勇者「へ?」
桜白 季四香「勇者様が先頭に立って、魔王めに立ち向かうのです」
真野 勇者「より一層ヤベェじゃねえか!!」
桜白 季四香「勇者様と宿敵たる魔王の対峙の再現・・・」
桜白 季四香「考えただけで武者震いがしますよね!」
真野 勇者「俺の方はガチ震えだよ!!」
馬峰 司「落ち着け、勇者よ」
馬峰 司「少なくとも、今から突然そうなるわけではない」
馬峰 司「絡まった糸が少しずつ解けるように、歪められた因果がこの世界において少しずつ戻っていくのじゃ」
ブレイブ「対策してさえいれば、こちらが後手に回ることはないから大丈夫」
ブレイブ「でも確実に先制できるように、まずはこっちが先に魔王の転生者を探そうってことさ」
真野 勇者「つまりはこっちが先に魔王を見つけられるかどうかが、俺の生存率に直結されるわけだな・・・」
真野 勇者「よっしゃ! そうと決まればさっそく探そう!」
真野 勇者「俺が生き残るために!!」
桜白 季四香「使命のためにここまで燃えるとは・・・」
桜白 季四香「さすがは勇者様です!! お供いたします!!」
馬峰 司「あやつの場合、“使命”と言うより“私命”じゃがの・・・」
ブレイブ「二人がヤル気出してるんだし、別にいいんじゃないかなぁ・・・」

〇街中の道路
  街中──
真野 勇者「それで? 街に来たのはいいけど、どうやって探せばいいんだ?」
馬峰 司「さぁ・・・知らん」
真野 勇者「酷く投げやりだな・・・」
馬峰 司「こればっかりは、いつ誰と遭遇するかなんて分からぬからの」
桜白 季四香「神のみぞ・・・というものだな」
惣 莉緒「神様・・・お会いしたいですね」
真野 勇者「神様はいないと思うよ・・・うん・・・さすがに・・・」
天馬・ノニ・バーシャ「・・・・・・」
真野 勇者「天馬先生? どうかしましたか?」
天馬・ノニ・バーシャ「いえ・・・みなさんを歩かせていることに、申し訳なさを感じているのです・・・」
天馬・ノニ・バーシャ「せめてキャリッジさえあれば・・・私が引っ張って行けるのに・・・」
真野 勇者「キャリッジあってもやらないでください」
馬峰 司「ブレイブよ、どうじゃ? 何か感じぬか?」
ブレイブ「・・・今のところは、特に」
ブレイブ「司、キミの感知魔法の方は?」
馬峰 司「だめじゃな。からっきしじゃ・・・」
真野 勇者「これ、こんなブラブラしてるだけで見つかるものなのか?」
馬峰 司「運次第、としか言えぬの」
ブレイブ「せめて魔王軍の誰かでもいれば、ヒントになるかもしれないんだけどね」
真野 勇者「魔王軍? 魔王じゃなくて?」
馬峰 司「言ったじゃろ? 流転回帰を使えば、一帯の者どもを転生させると・・・」
馬峰 司「儂らが最後にいたのは、魔王城。 つまり──」
ブレイブ「魔王軍の何人かは巻き込まれてても何ら不思議はない・・・というわけさ」
真野 勇者「魔王だけじゃないのかよ!」
馬峰 司「安心せい。 魔王は確かにすこぶる強いが、魔王軍程度であれば儂らの方が上じゃて」
ブレイブ「少なくとも遅れを取ることはないよ。 上手く捕縛できれば、魔王のことを聞き出せるかもしれないしね」
真野 勇者「でも、そうそう上手くいくなんて──」
真野 勇者「・・・・・・ん゛ん゛?」
桜白 季四香「勇者様、どうかされましたか?」
真野 勇者「い、いやぁ・・・なんていうか、ちょっと嫌な感じが・・・」
真野 勇者「・・・うん? あれは・・・」
ゴブリン「・・・・・・」
真野 勇者「・・・・・・・・・うーーーん?」
馬峰 司「なーにを唸っとるんじゃ、さっきから」
ブレイブ「何かあったのかい?」
真野 勇者「いやぁ・・・うーん・・・」
真野 勇者「・・・いや、なんでもない。 たぶん、ちょっと疲れただけだと思う」
桜白 季四香「疲れた!? それはいけません!」
桜白 季四香「て、天馬! 今すぐに宿の準備を! それと、タクシーの手配!」
天馬・ノニ・バーシャ「お任せください!」
馬峰 司「やめいやめい いちいち大袈裟なんじゃよ」
真野 勇者「そ、そうそう。 ちょっと見間違えただけだから大丈夫──」
ゴブリン「・・・・・・」
真野 勇者「・・・・・・・・・・・・」
真野 勇者「・・・ごめん、やっぱ、見間違えじゃないみたい・・・」
ブレイブ「・・・何か、気付いたことでも?」
真野 勇者「気付いたというか、普通に見つけた・・・」
真野 勇者「・・・たぶん、ゴブリン・・・」
馬峰 司「なんじゃと!?」
桜白 季四香「どこですか!?」
真野 勇者「いや、すぐそこに・・・」
ゴブリン「・・・・・・」
「???」
真野 勇者「あれ? なんか、反応が・・・」
馬峰 司「・・・勇者よ、お主もなかなかに酷い奴じゃのぉ」
真野 勇者「酷い?」
桜白 季四香「勇者様・・・あれはどう見てもただの人ですよ?」
桜白 季四香「確かに背は小さくお世辞にも整った容姿とは言い難く、勇者様が見間違えるのもわかりますが・・・」
真野 勇者「え? いや、だって・・・」
ゴブリン「・・・・・・」
真野 勇者「あんなに全身真緑なのに!?」
馬峰 司「さっきから何を言っとるんじゃ・・・」
惣 莉緒「では、聞いてみましょうか」
馬峰 司「聞く?」
桜白 季四香「お、おい莉緒!」
惣 莉緒「あのぉ、すみません・・・」
ゴブリン「はい? 何か・・・」
惣 莉緒「ええと、聞いてもよろしいですか?」
惣 莉緒「あなたは・・・ゴブリンさんですか?」
ゴブリン「え、ええ・・・そうですが・・・」
惣 莉緒「やっぱりゴブリンさんなんですね」
真野 勇者「やっぱゴブリンじゃん」
馬峰 司「ゴブリンじゃと!?」
桜白 季四香「ゴブリンなのか!?」
ブレイブ「ゴブリンとは・・・」
  ゴブリンだった

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