勇者様と勇者くんと各種転生者のみなさん

ぬゑ

ゴブリンの憂鬱(脚本)

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〇見晴らしのいい公園
  運良くいきなり魔王軍の一人であるゴブリンを見つけた勇者達・・・
  彼から話を聞くべく、一行は、街から少し離れた公園へと移動した・・・
ゴブリン「僕の名前は、五部倫太郎・・・」
ゴブリン「・・・僕は、確かにゴブリンの転生者さ」
ゴブリン「かつて魔王様の下で働き、旅人や村を襲っていたことも事実・・・」
ゴブリン「もちろんそれを正当化するつもりはない。 襲われた人々にとっては、そんなのは関係ないだろうからさ」
ゴブリン「ただ、僕らも生きることに必死だったのさ」
ゴブリン「魔王城で勇者たちと戦い、この世界に人として転生し早30年。 本音を言えば、もはや過去のことだと思い始めていたけど・・・」
ゴブリン「・・・過去はいつまでも付いてくる、ということなのだろうね」
真野 勇者「・・・・・・え? なにこれ」
馬峰 司「過去の懺悔編・・・といったところかのぉ」
ブレイブ「誰にでも、脛に傷があるということさ」
真野 勇者「っていうか、人に転生した? うっそだぁ・・・」
真野 勇者「こんな全身真緑の人間なんていたら、それこそSNSも毎日お祭り騒ぎじゃん!」
桜白 季四香「勇者様・・・先程から、少し様子がおかしいようですね・・・」
馬峰 司「ふむ・・・・・・」
馬峰 司「勇者よ、改めてとなるが、お主には五部倫太郎がどう見えておるのじゃ?」
真野 勇者「どうって・・・さっきから言ってるだろ?」
真野 勇者「上半身裸で、耳が尖ってて、牙があって、ふんどし姿で、身長が低くて猫背で・・・」
真野 勇者「全身真緑の、THE・ゴブリンみたいな見た目だよ!」
馬峰 司「ふむ・・・やはり、お主の目には少し違って見えておるようじゃの」
真野 勇者「違って見えてる? どういうこと?」
馬峰 司「端的に言えば、この五部という男、儂らには普通の人間にしか見えておらぬ」
馬峰 司「魔力も皆無じゃし、ぶっちゃけ本人がゴブリンと認めとる今でも、未だ半信半疑なところもあるんじゃよ」
真野 勇者「なんで!? こんな全身真緑の半裸なのに!?」
ブレイブ「その全身真緑の半裸というところも、僕らには普通の服を着た普通の肌にしか見えていないんだよ」
馬峰 司「儂らからすると、勇者が突如として見知らぬ男を指さし、ゴブリンだゴブリンだと騒ぎ始めたようにしか見えなかったんじゃ」
真野 勇者「ただのとんだド失礼野郎じゃん!」
桜白 季四香「申し訳ありませんが、勇者様、体調が悪いのかと思いまして・・・」
惣 莉緒「私も、勇者さんも毒舌ですねぇ、としか思いませんでした」
馬峰 司「いずれにせよ、こうして魔王軍の転生者を見つけたのは事実のようじゃな」
馬峰 司「なぜ勇者に見つけることができたのかは一先ず置くとして・・・」
馬峰 司「今は、その成果を褒めてやるとするかの」
桜白 季四香「私達だけでは到底見つけることなどできなかったでしょう」
桜白 季四香「さすがは勇者様です」
真野 勇者「い、いやぁそれほどでも・・・」
ブレイブ「・・・・・・・・・」
ブレイブ(五部倫太郎なる彼がゴブリンの転生者であることは間違いないようだ)
ブレイブ(僕達だけでは、ゴブリンの転生者を見つけ出すことなどできなかったこともまた事実。 しかし・・・)
ブレイブ(なぜ勇者くんはゴブリンを見つけられた?)
ブレイブ(五部くんには、間違いなく魔力など残っていない。 僅かにでも魔力が残っていれば、僕はまだしも、司なら必ず感知していただろう)
ブレイブ(僕や司ですら感知できない転生者を、何の魔力も持たない勇者くんは容易く見つけ出した・・・)
ブレイブ(なぜだ? なぜ、勇者くんにはわかったんだ?)
馬峰 司「・・・ブレイブ。 お主の考えていることはわかる」
馬峰 司「じゃが、先も言った通りじゃ。 今は捨て置け。 どうせ考えたところで、今のところわかるはずもあるまいて」
馬峰 司「しかし、儂らで目を光らせる。 よいな?」
ブレイブ「・・・わかった」
天馬・ノニ・バーシャ「それで、いかがいたしますか?」
桜白 季四香「どういう意味だ?」
天馬・ノニ・バーシャ「無論、ゴブリンめの処遇です」
惣 莉緒「ここは『サクッ♪』と討伐しますか?」
ゴブリン「え゛っ」
真野 勇者(この人、なにげにヤバい思考回路してるよなぁ・・・)
桜白 季四香「ならば私に任せるがいい。 見事華麗に首を一刀両断してくれる」
ゴブリン「え゛え゛え゛っ!!??」
真野 勇者(あ、もっとヤバい人がいた・・・)
馬峰 司「これこれ、揃いも揃っていきなり物騒なことを言い出すでない。 少し落ち着け」
ゴブリン「ほっ・・・」
馬峰 司「まずは尋問し、魔王の情報の引き出すことが先じゃろうて。 討伐だろうが斬首だろうが拷問だろうが、殺るのはその後じゃよ」
ゴブリン「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ん!!!」
真野 勇者「ヤバい奴ばっかりじゃん! あんたらホントに勇者一行かよ!」
ブレイブ「前の世界だと、魔物相手に情け容赦なんてしてたらこっちが危なかったからね」
ブレイブ「まぁ、大目に見てくれないか?」
真野 勇者「大目に見る限度超えてるっつーの!」
真野 勇者「あんたらこの世界に転生して十数年経ってんじゃん! こっちの世界に馴染む発言しろよ!」
真野 勇者「そもそも、このゴブリンはあんたらには人間に見えてるんだろ!?」
真野 勇者「モンスターに見えてんのは俺だけじゃん! 人間に見えてるあんたらはどんな神経して言ってるんだよ!」
ゴブリン「モンスターに見える・・・ですか」
真野 勇者「え?」
ゴブリン「確かに私の転生した姿は、この世界でも相当醜いようですね」
ゴブリン「モンスター・・・そうですね。 僕なんて、どこに転生しようともモンスターなんですね・・・ははは・・・」
真野 勇者「え、ええと・・・そういう意味で言ったわけではなく・・・」
桜白 季四香「勇者様、少し言い過ぎでは・・・」
惣 莉緒「人のことをモンスターモンスターと連呼するとは、勇者様も容赦ありませんね・・・」
馬峰 司「勇者、なかなかにヤバい奴じゃな・・・」
真野 勇者「あーーもぉ! なんでこうなるかなぁ!!」
ゴブリン「いいんですよ。 勇者さんに何ら罪はありませんし」
ゴブリン「このような醜い容姿の人間に転生したのも、おそらく秘術の影響なのでしょ?」
ゴブリン「これがきっと僕の贖罪なのでしょう。 甘んじて受け入れますし、魔王様についても話しましょう」
真野 勇者「五部さん・・・」
馬峰 司「ゴブリンよ、お主は何を言っておる?」
ゴブリン「え? ですから、秘術のせいで醜い人間に転生したのだと・・・」
馬峰 司「それは違うぞ? 儂の放った秘術は、あくまでも対象生物を別世界に転生させるもの・・・」
馬峰 司「転生後の容姿については、何も干渉しておらぬ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・え゛っ」
馬峰 司「更に言えば、転生後の姿はどうやら転生前の姿に準じておるようじゃの。 儂もそこまで知らなんだが」
桜白 季四香「確かに、私も司も莉緒も、容姿は前世とあまり変わっていないな」
惣 莉緒「みんな相変わらず可愛いですねぇ」
「・・・・・・・・・」
馬峰 司「別種族への転生についても、おそらく同様であろう」
馬峰 司「つまり、五部の容姿については、前世のゴブリン内での容姿レベルと同レベルになっているはずなんじゃよ」
真野 勇者「え、ええと・・・」
ゴブリン「で、でも前世じゃ友達はみんな僕のことをイケゴブだって言ってくれてて・・・」
天馬・ノニ・バーシャ「五部さん、それはきっと、皆があなたを傷つけないように気遣っていたのでしょう」
惣 莉緒「五部さんのお友達さんは、きっとお優しいゴブリンばかりだったのですね」
桜白 季四香「本当のことを言えば傷付けてしまうと、皆で嘘を言っていたのだろう」
ゴブリン「・・・・・・・・・」
真野 勇者「ヤバい・・・俺ちょっと今、五部さんを直視できない・・・」
真野 勇者「なぁブレイブ、五部さん、今どんな表情してる?」
ブレイブ「ええと・・・うん」
ブレイブ「勇者くんが想像している通りだと思うよ」
馬峰 司「して、五部よ。 そろそろ魔王について話してもらおうか」
ゴブリン「・・・・・・・・・」
馬峰 司「どうした? 早く話さぬか」
ゴブリン「・・・・・・断るッ!」
馬峰 司「なぬ!?」
ゴブリン「僕は絶対に喋らない! 拷問だろうが尋問だろうが、絶ッッッ対に、喋らないからな!!!!」
馬峰 司「な、なぜじゃ! 話が違うではないか!」
真野 勇者「うん、もう話してくれないと思う。 たぶん・・・絶対・・・」
  その後、あーだこーだと勇者一行総出で説得し、ようやく五部倫太郎は魔王についてはなすのだった。
  何も知らない、と──・・・

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