ただ、癒されたかっただけなのかもしれない…

真弥

抜け出せない沼のように(脚本)

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真弥

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〇開けた交差点
  営業先からの帰り道、紘はぼんやりした斗真の様子が気になり声をかけた。
具平 紘「斗真さん」
波原 斗真「・・・」
具平 紘「斗真さん?」
波原 斗真「え?あ、悪い。考え事してて。どうした?」
具平 紘「どうしたじゃないですよ?さっきからずっと心ここに在らずで・・・何かあったんですか?」
波原 斗真「いや、その・・・」
波原 斗真(言えるわけがない。 元カノが同じ会社に派遣されてきて、彼女のことが気になって仕方ないだなんて・・・)
具平 紘(唯花さんと何かあったのかな。和坂さんのことが終わって、やっと唯花さんが苦しむ姿を見ずに済むと思ったのに・・・)
波原 斗真「いや。なんでもない。悪かったな。心配かけて」
具平 紘「いえ、それならいいんですけど。 そういえば、最近松永さん楽しそうですね」
波原 斗真「え? そ、そうか?」
波原 斗真(未来ちゃんのことが落ち着いたからかな? 俺も、葉子のことは忘れて、しっかりしないと。これ以上唯花と揉めたくない)
具平 紘「あの、新しく入った派遣の人と話が合うみたいでランチとかよく一緒にいるのを見かけますよ」
波原 斗真「そ、そうなのか?」
波原 斗真(新しい派遣って、葉子のことだよな? 元カノだってことはこの前話してあるし・・・仲良くしてるなら気にしなくてもいいか)
具平 紘(あの派遣の人の話をした途端、ソワソワし出したな。何か関係があるんだろうか?)
  斗真の様子が気になるものの、紘はそれ以上の詮索はやめることにした。

〇綺麗なリビング
並木 葉子「可愛らしいお部屋ですね」
  今日は急遽休日出勤となってしまった唯花は、仕事を手伝ってくれた葉子を夕食に誘った。
松永 唯花「ありがとう。ゆっくりくつろいでいてね。今コーヒー入れるから」
並木 葉子「あ・・・えっと」
  葉子はは何かを言いかけたが、唯花はそれに気づかずキッチンへと向かった。

〇おしゃれなキッチン
松永 唯花(せっかく葉子さんも来てくれたし、何を作ろうかな?そういえば、斗真もそろそろ帰ってくる頃かしら。お鍋でも作ろうかな?)
波原 斗真「ただいま。あれ?誰か来てるの?」
  斗真が帰ってきて、玄関の靴に気づいて唯花に尋ねてきた。
松永 唯花「おかえり。今日休日出勤だったでしょ?葉子さんも手伝ってくれたから、お礼に夕食に誘ったの」
波原 斗真「えっ?よ、並木さんが来てるの?」
松永 唯花「そうだけど‥なに?ダメだった?」
波原 斗真「い、いや。 そんなことはないよ。 夕飯なに?」
松永 唯花「お鍋にしようと思ってるの。 斗真着替えてきたら?」
波原 斗真「あ、あぁ。そうするよ」
波原 斗真(なんだって、葉子がうちに。 まいったな、できれば会いたくなかったのに)
松永 唯花(元カノだって聞いてるけど、あの様子、もしかして斗真って葉子さんのことまだ好きなの?)
松永 唯花(ううん。 私の気のせいだよね。 葉子さんは斗真のことなんとも思ってないみたいだし。私も気にしすぎるのはやめよう)

〇綺麗なリビング
松永 唯花「今、準備してるからもう少し待っててね」
並木 葉子「私も手伝うわ」
松永 唯花「大丈夫。お鍋だから手間はかからないわ。ゆっくりしてて。今日は葉子さんのおかげでほんと助かったんだから」
並木 葉子「じゃあ、お言葉に甘えるね」
並木 葉子「あ、お邪魔してます」
波原 斗真「い、いらっしゃい」
  斗真は葉子の目の前に置かれたコーヒーを見て不意に声を上げた。
波原 斗真「あれ。よ、並木さんコーヒー飲めるようになったのか?」
並木 葉子「えっ、あ、う、うん、大丈夫」
松永 唯花「葉子さん、コーヒー苦手だった? あ、そういえばいつもお茶か紅茶だったっけ。ごめんね」
並木 葉子「こっちこそごめんなさい。 ちゃんと言えばよかったね。 でも、飲めないこともないのよ。甘くすれば」
波原 斗真「相変わらず甘党なんだな。 砂糖何杯入れる?3杯?4杯?」
並木 葉子「そ、そんなにいれないわよっ。 2杯くらいで大丈夫」
波原 斗真「それでも甘そうだな」
松永 唯花(なに、この2人の雰囲気って・・・)
松永 唯花「私、お鍋の準備してくるね」
並木 葉子「あ、ありがとう!」
波原 斗真「ほら、砂糖入れたから飲めるぞ」
並木 葉子「もう、揶揄わないで」
並木 葉子「あ、美味しい」
波原 斗真「相変わらず、苦いものも辛いものもダメなのか?」
並木 葉子「そうね、食の好みなんてそうそう変わらないわよ。斗真だって、相変わらずピーマン食べられないんじゃないの?」
波原 斗真「ピーマンって、いつのことだよ。 今は食べれるよ。・・・みじん切りにすれば」
  2人は思い出話に盛り上がった。

〇おしゃれなキッチン
松永 唯花(なんだか2人楽しそう。付き合っていたんだものね。思い出話に花が咲いてるってことかしら)
松永 唯花(でも、斗真はこっちを手伝いに来てくれたっていいのに。本当に気が利かないったら・・・)
松永 唯花「よし。準備もできたし、これ斗真に運んでもらおう」
  唯花はリビングにいる斗真を呼びに行った。

〇綺麗なリビング
波原 斗真「そういえば、この間、山先に会ってさ。前よりさらに前髪が後退してて、まじヤバかった」
並木 葉子「あー、山川先生あの時よりさらに?結構ストレス溜まってたもんね。あれは教授のせいだよね」
  2人は大学時代の話に盛り上がっていた。
波原 斗真(懐かしいな。葉子っていつも明るくて話題に尽きなくて楽しいんだよな)
並木 葉子「あ、私ちょっと唯花さんのところに行って手伝ってくるわ。やっぱり1人じゃ大変よ」
波原 斗真「唯花は手際がいいから大丈夫だよ」
並木 葉子「え、でも・・・。やっぱり気になるから・・・」
  ソファから立ち上がった葉子がバランスを崩してふらついた。
波原 斗真「葉子っ、」
並木 葉子「きゃっ、」
  倒れかけた葉子を、斗真は彼女の腕を引いて抱き寄せた。
並木 葉子「あ、ありがと。私ったらそそっかしい・・・」
  葉子は、斗真の耳元に口を寄せる。
波原 斗真(えっ、今の・・・)
  葉子は、斗真の首筋に唇を当てて軽く吸った。すぐに彼から離れて何もなかったように立ち上がる。
並木 葉子「ごめんね。大丈夫?」
波原 斗真「いや、あの‥今?」
並木 葉子「ん?なに?」
波原 斗真(き、気のせいだったのか? え、でも・・・)
波原 斗真(気のせいに決まってる・・・。葉子だってなんの変化もない)
並木 葉子「じゃあ、私キッチンに行ってくるね」
波原 斗真「あぁ」
並木 葉子(相変わらずね。 もう少し楽しめるかしら・・・)
  葉子はクスッと小さく笑いながら、唯花のいるキッチンへ向かった。

〇綺麗なリビング
松永 唯花「お待たせ」
並木 葉子「美味しそう」
波原 斗真「唯花はほんと料理上手いから」
並木 葉子「いただきます。 美味しい!お出汁から取ってるんですね。 手間がかかってすごく美味しい」
松永 唯花「お口に合えば嬉しいよ。 たくさん食べてね」
並木 葉子「斗真さんはいつもこんなに美味しいものを食べてるのね。感謝しないと」
波原 斗真「か、感謝してるよ。俺には勿体無いくらいの彼女だよ」
  何気ない2人の言葉に、唯花はうっかり聞き逃しかけたが、葉子が斗真のことを名前で呼んだことにモヤッとした。
波原 斗真「葉子は相変わらず時短料理がメインだろ」
並木 葉子「兼業主婦は忙しいの! 弟達は量もたくさん食べるし、時短でもおいしいならいいでしょ」
松永 唯花(2人とも気付いてないみたいだけど、自然と名前で呼び合ってる。あの短時間の間に何を話していたんだろう)
松永 唯花「そうよ。料理なんてお腹が満たされればいいんだから。弟さんのお世話もしてるなら毎日大変でしょ?」
並木 葉子「生意気なことは言うのに、家のことは何もしないからね。全く・・・。斗真さんも、家事は分担しないと!」
波原 斗真「相変わらず厳しいなぁ・・・。 分かったよ、ちゃんと家事分担するよ。 な、唯花」
松永 唯花「そうね。保留になってるゴミ捨て係から始めてもらおうかしら」
  唯花は平静を保ちつつも、2人のやり取りに気持ちが沈むのを止められなかった。
  3人はお酒も飲みつつお鍋をつつきながら、穏やかに見える時間を過ごした。

〇マンションの共用廊下
並木 葉子「今日はごちそうさま。とっても美味しかったし、楽しかったわ。また明後日ね」
松永 唯花「私も楽しかったわ。また一緒にご飯しましょ」
波原 斗真「俺下まで送ってくるよ」
松永 唯花「え、そ、そうね。 お願いします。 葉子さん、斗真にタクシー呼んでもらってね」
並木 葉子「大丈夫よ。まだ終電も動いてるし・・・」
松永 唯花「夜も遅いし、弟さん達も心配するから、ね?」
波原 斗真「そうだぞ。下でタクシー呼ぶから行こう」
並木 葉子「分かったわ。ありがとう。じゃあまたね」
  葉子も斗真もほろ酔い状態でマンションの廊下を歩いていく。その後ろ姿を見送りながら、唯花は小さくため息をついた。

〇川沿いの公園
  マンションの下まで降りてきた2人は、酔い覚ましをして帰ると言う葉子に付き添い川辺を歩いている。
並木 葉子「あーお腹いっぱい。 すっかり酔っちゃったわ・・・」
波原 斗真「相変わらず酒に弱いな。そんなんで帰れるのか?」
並木 葉子「心配性なんだから・・・平気よぉ」
波原 斗真「ほら、フラフラしてる。 全く葉子は普段はキリッとしてんのに、酒が入ると一気に頼りなくなるんだよな」
並木 葉子「うるさいわねぇ・・・。 でも、ほんといい彼女見つけたよね。私とは大違い?」
波原 斗真「どうしたんだよ、いきなり。 葉子だって偉いじゃん。仕事しながら弟の面倒見て」
並木 葉子「でもね、そう言う生活だと潤いがなくて、さらにギスギスした女になるのよね」
波原 斗真「そんなことないって。 葉子はいつでも魅力的な女性だよ」
並木 葉子「あー!斗真がお世辞言うなんて。 ふふっ、おかしい」
波原 斗真「お世辞じゃないって・・・。俺、あの時本当は別れたくなんてなかった・・・」
並木 葉子「何言ってるの?」
波原 斗真「俺たちさ、あの時別れなかったら、今頃どうしてたかな・・・?」
  葉子は斗真から距離を取るように、遊歩道から少し奥まった公園の立ち並ぶ木の方へ向かう。
並木 葉子「斗真も酔ってるんでしょ。酔い覚まししなきゃ」
波原 斗真「葉子・・・待てって・・・」
  斗真は木の影に隠れた葉子を追っていく。
波原 斗真「葉子・・・」
並木 葉子「斗真・・・?」
  お互いの名前を呼び合い、2人は見つめ合う。自然と距離が近づいてきた時、葉子が不意に目を閉じた。
  2人の影が重なる。
並木 葉子「斗真・・・」
波原 斗真「葉子・・・」
  2人はお互いの吐息を感じながら、甘いキスを交わす。
  そのうち、斗真の右手が葉子の身体を撫で始めた。
並木 葉子「だめよ、こんなところで・・・。 待てができない男はダメだって言ったでしょう?」
波原 斗真「葉子・・・俺、もう・・・」
並木 葉子「ダメ。今日はもう帰って? 今度、また会いましょう?」
波原 斗真「う、うん。 また会えるのか?」
並木 葉子「ええ。 今日はお互いちゃんと帰るべき場所に帰りましょう?」
波原 斗真「わ、分かったよ・・・。 で、でも、もう一回だけ・・・」
  斗真は甘えるように言って葉子に強引にキスをした。お互いの唾液が混ざり合う音が静かな夜の公園に響いていた。

〇綺麗なリビング
波原 斗真「ただいま」
松永 唯花「おかえり、随分遅かったのね」
波原 斗真「よ、並木さんが酔い覚まししたいって言うからそこの公園でお茶飲むのに付き合ってたんだよ」
松永 唯花「そうなの?で、彼女は?」
波原 斗真「タクシー呼んでちゃんと乗って行ったよ」
松永 唯花「そうなの?飲ませすぎちゃったかな」
波原 斗真「大丈夫だろ。あ、俺シャワー浴びてくるよ」
松永 唯花「わかったわ」
松永 唯花(2人きりで何かあったのかと思ったけど、斗真の様子を見たら何もなかったみたいね。やっぱり気にしすぎだったのかな)

〇清潔な浴室
波原 斗真(ちょっと焦ったけど、葉子の言う通り、事実半分嘘半分なら俺にも焦らず話せるんだな。 うん、確かに嘘は言ってないもんな)
波原 斗真(それに未来ちゃんの時みたいなことになったら今度こそ唯花に愛想尽かされちまう。 唯花を失いたくはない)
波原 斗真(でも・・・。俺はやっぱり葉子のことは忘れられない。彼女のことも手放したくない・・・)
  斗真は葉子に言われた通りに唯花に話をし、彼女を騙すことに躊躇いを消した。
  今は葉子を失いたくないと思った。

〇オフィスのフロア
並木 葉子「おはよう。 一昨日はごちそうさまでした。とっても楽しかったわ」
松永 唯花「結構飲ませちゃったみたいだけど大丈夫だった?」
並木 葉子「うん。平気。 波原さんに送らせちゃってごめんね」
松永 唯花「酔い覚ましに付き添うくらい、全然いいよ。斗真も結構酔ってたから自分も酔い覚ましになったと思うし」
並木 葉子「2人って本当に仲がいいのね。 お互いを信頼しあってる感じ」
松永 唯花「そうかな?」
並木 葉子「唯花さんすごく彼に尽くしてるんでしょう?彼も感謝してた。羨ましいな、そんな関係になれるなんて」
松永 唯花「あ、あの。こんなこと聞いたらいけないって思うけど・・・」
並木 葉子「ん?もしかして、私たちが別れた理由?」
松永 唯花「あ、言いたくなかったらいいの」
並木 葉子「平気よ。もう過去のことだし。 波原さんとは価値観が違ったの。 私は弟達のことが大切だったし、仕事は効率よく稼ぎたかった」
  葉子は斗真と付き合っていた時代のことをポツポツと話し始めた。
並木 葉子「斗真の真面目すぎるところが、ちょっと窮屈だったの。私は給料のいいところがあれば、今いる会社に未練はなかった」
並木 葉子「斗真はコツコツと進んでいくのが当たり前って人だったからね。私が耐えられなくなったの」
松永 唯花「そうなんだ。 働き方は人それぞれだもんね」
松永 唯花(と言うことは、斗真は葉子さんの事を嫌いで別れたわけじゃない。葉子さんだって・・・)
並木 葉子「心配しなくても、今も私の考え方は変わってないの。だから、彼に未練はないわ」
松永 唯花「あ、あ、そんな‥別に疑ってたりしないよ。 葉子さんみたいにしっかりした人、斗真には勿体無いもん」
並木 葉子「そうね笑」
並木 葉子(でもね、真面目に付き合うつもりはなくても、寂しい夜に添い寝して欲しくなる時はある。その相手が斗真でも、他の誰でもいいの)
並木 葉子(幸せそうなあなたには分からないでしょうけどね・・・)
  葉子の本音には気づかないまま、唯花はひとまず斗真と葉子の関係を疑うことはやめようと思ったのだった。

〇豪華なベッドルーム
波原 斗真「葉子・・・俺、」
並木 葉子「斗真、今は何も言わないで。 お互いの望むことをしましょう・・・」
  斗真と葉子は、鍋をした日の翌日の深夜、2人きりで会っていた。葉子が会いたいと連絡をしてきたためだ。
並木 葉子「シャワー浴びてくるわね」
波原 斗真「あぁ」
波原 斗真(俺、本当にこのまま葉子と? 唯花を裏切ってまで俺は葉子とこうなりたいのか?でも、俺はまだ葉子を・・・)
波原 斗真(自分でも信じられない。未来ちゃんの時は、唯花を失う怖さが大きかった。裏切るなんて考えもしなかった)
波原 斗真(俺は、唯花と別れるべきなのか・・・?)
並木 葉子「斗真もシャワー浴びてきたら?」
波原 斗真「あぁ」
並木 葉子(ふふ、後悔してるのかしら。 私は今が楽しければいい。斗真の家族を壊すつもりはないし。肌寂しさを癒してくれればそれで)
並木 葉子(斗真の流されやすい所は変わらないのね。あんなしっかりした、尽くしてくれる彼女がいながら元カノの誘惑に簡単に乗るなんて)
並木 葉子(男なんて、これだから信じられないのよ)
並木 葉子「斗真、ほら、髪濡れてる。 乾かさないと」
波原 斗真「葉子・・・」
  2人は見つめ合い、先に目を閉じた葉子に応えるように、斗真は自身の欲望のまま彼女を抱きしめた。

〇綺麗なリビング
松永 唯花「斗真、今日も残業なんだ」
松永 唯花(葉子さんがきた日以来、斗真の様子が少し変。でも、葉子さんは普段と変わらないからきっと2人は関係ないと思うけど)
松永 唯花「待っていても仕方ないし、今日は先に休もう」
  唯花は斗真を待たずに先に休むことにした。
  この日はなかなか寝付かことができなかった。

〇開けた交差点
具平 紘(最近は唯花さんとすれ違ったばかりでなかなか会えていないけど、元気にしてるんだろうか?また夕飯にでも誘ってみようかな・・・)
  紘は夕飯の買い物をして、家に帰る途中だった。辺りは暗くなって、人通りも少なくなっているその視界の先に見知った人影を見た。
具平 紘「あれは・・・斗真さんと、並木さん?」
  仕事帰りなのか、2人ともスーツ姿だったが妙に近い距離感に紘は訝しく思い、後をつけた。

〇公園のベンチ
波原 斗真「次はいつ会える?」
並木 葉子「ふふっ、いつも会ってるじゃない」
波原 斗真「そうじゃない。分かってるんだろう? 相変わらず焦らすのが好きだよな葉子は」
並木 葉子「斗真可愛い。 その私が欲しくて仕方ないって顔を見てるとゾクゾクするの。 ・・・私が欲しいの?」
波原 斗真「あぁ、今すぐにでもこの前のように葉子を愛したい」
並木 葉子「ダメよ。唯花さんが家で待ってるんでしょう?早く帰らないと・・・」
波原 斗真「・・・分かってる。 でも、また時間を作ってくれるんだろう?」
並木 葉子「はいはい。 そうね、次の金曜日の夜ならいいわよ」
波原 斗真「分かった。金曜日、仕事が終わったらこの間のホテルで会おう」
並木 葉子「ええ、いいわよ」
具平 紘(なんだよ、今の会話。 完全に黒じゃないか。斗真さん、元カノとそんな関係になってるなんて。唯花さんは気づいてないのか?)
  紘は2人の会話を聞き、斗真に対して激しい怒りを覚えた。2人が帰っていく背中を見ながら紘は唯花を思い胸を痛めた。

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