エピソード60(脚本)
〇暗い洞窟
洞窟へ飛び込み、昨夜走った道を一心不乱に駆け抜ける。
テケテケがどんどん近付いてきているようで、徐々に地響きは大きくなっていた。
このままじゃ洞窟も崩れかねない。
茶村和成(薬師寺・・・、薬師寺・・・!!)
息を荒げながら、あいつのことを考える。
出会ってから今までたった数ヶ月の出来事だ。
それにしては、あまりにも濃いけれど。
あいつと出会ってからの日々はハチャメチャで、大変で、面倒で。
──でも決して、退屈ではなかった。
茶村和成(・・・薬師寺、・・・俺はさ・・・)
茶村和成(・・・俺は・・・)
広い空間に出る。
そこには変わらず、薬師寺がいた。
薬師寺廉太郎「・・・なんで、戻ってきちゃったの」
茶村和成「ハアッ、ハアッ・・・」
薬師寺廉太郎「さっきから響いてるコレって、テケテケ? 吾妻の奴・・・。またか」
茶村和成「・・・テケテケはお前を狙ってる」
こうして話をしている間にも、揺れはますます大きくなっている。
薬師寺廉太郎「あー、もしかして心配してくれた? 俺なら大丈夫だよ。」
薬師寺廉太郎「だから、早く・・・」
茶村和成「薬師寺」
薬師寺廉太郎「・・・・・・」
茶村和成「お前の本心を教えてくれ」
薬師寺廉太郎「・・・・・・」
薬師寺廉太郎「・・・もう、俺のことはほっといてよ」
薬師寺廉太郎「茶村には関係ないでしょ」
茶村和成「・・・・・・」
薬師寺廉太郎「だいたい・・・、どうして茶村がここまでするの?」
薬師寺廉太郎「俺のことなんて忘れたらよかったじゃん!」
茶村和成「あのな・・・」
薬師寺廉太郎「・・・・・・」
茶村和成「いいか、よく聞けよ」
茶村和成「仮に俺が、なにかのために自分を犠牲にしようとしてたら絶対お前は止めるだろ」
茶村和成「・・・俺だって、同じなんだよ」
茶村和成「面倒ごとばっか持ってくるし、鬱陶しいことも多いけど、それでも」
茶村和成「もう俺の日常にはお前がいるんだ」
薬師寺廉太郎「──!」
茶村和成「俺はお前と一緒にいたい」
茶村和成「だからお願いだ、お前も、責任とかそういうんじゃなくて・・・。 お前自身の気持ちで答えてくれ」
薬師寺廉太郎「・・・そんな・・・、こと・・・」
すう、と息を吸い込んで薬師寺の目を見つめたまま、言葉を発する。
茶村和成「俺に、お前が抱えてる問題も悩みも、一緒に考えさせてくれ」
薬師寺廉太郎「・・・・・・」
茶村和成「・・・頼む」
薬師寺廉太郎「・・・・・・」
薬師寺廉太郎「・・・茶村は、昔からこうなんだ」
薬師寺廉太郎「暗く淀んだ場所でうずくまってる俺になんの迷いもなく、光を向ける・・・」
茶村和成「? なんの話だ?」
薬師寺廉太郎「・・・参りましたってことさ」
茶村和成「!」
ニッと微笑んだ薬師寺と目が合った。
俺はポケットから総二郎にもらった石を取り出す。
そして、その尖った石を、薬師寺の周りを囲んでいるしめ縄に振り下ろした。
しめ縄が切断された瞬間、まばゆい光が場を包み、溢れ出したエネルギーがはじけだした。
茶村和成「・・・・・・」
光がおさまると、そこにはすこしやつれた薬師寺が、結界の外に立っていた。
茶村和成「薬師寺・・・、お前・・・」
ゴォォォオン!!
その時、轟音とともに洞窟の中にまばゆい外の光と土煙が満ちた。
洞窟の壁に大きく空いた穴からは、ぶよぶよと膨れ上がったテケテケの顔が見えた。
おマ゛エええ゛エエエ! キツね゛ノオ面ンンン!
肉塊になりはてたテケテケは、宿敵の姿を見つけて大きく吼えた。
茶村和成(山を掘って無理矢理穴を開けたのか!?)
見ると衝撃で洞窟が崩れ始めていた。
茶村和成(ここにいると危ない・・・!)
茶村和成「薬師寺!」
薬師寺廉太郎「はぁ、こいつもしつこいね」
薬師寺廉太郎「・・・じゃあちゃっちゃと片付けちゃおうか」
薬師寺は戻った力を確かめるかのように、手のひらを握ったり開いたりしている。
薬師寺廉太郎「・・・今度は絶対に戻ってこれないくらい、徹底的に消してあげるよ」
すると薬師寺の姿が消え、そこには1匹の純白の狐がいた。
見上げるほど大きいその狐は、この世のものとは思えないほど美しく、俺はその荘厳な姿に言葉を失った。
ウォォォオオオン!!
純白の狐は大きな咆哮をあげると、テケテケめがけて一直線に突っ込んでいった。
茶村和成(・・・・・・)
俺は突然のことに目の前の光景が信じられず、驚きのあまり呆然としてしまっていた。
ガンッ
〇黒
あったかい。
俺は頬にあたる暖かくて柔らかいものをもっと感じたくて顔を埋めた。
それは日光にあたった洗濯物のようにいい匂いがして、俺はとても穏やかな気持ちになった。
〇黒
茶村和成(あったかい・・・、ずっとこうしてたい・・・)
茶村和成(あれ? でも俺はこの感触を知ってる・・・。 前にどこかで・・・)
茶村和成(あれは・・・、そう・・・昔。 俺がまだ小さかったころ)
燃え盛る炎、あたりにはサイレンが鳴り響きそこらじゅうから助けを求める声が聞こえる。
その中で、俺はなにかあったかくて柔らかいものに乗せられて、どこかに運ばれて・・・
〇日本庭園
俺が目を開けると・・・
さっき見た大きな純白の狐の背中に俺は乗せられていた。
狐は俺が目を覚ましたことに気が付いたのか地面に伏せると降りるように促した。
茶村和成「・・・・・・」
毛並みのいい背中に手を添えながら、そっと地面に降りる。
あたりを見回すとそこは洞窟の外、薬師寺家の敷地内だった。
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まじでここで終わりなんですか!!面白かったけど、面白かったからちょっとすっきりしないです...