そのオーナメントは火を灯すのか

ブラックランプ

読切(脚本)

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〇渋谷のスクランブル交差点
  クリスマス
  どうにも苦手な1日だ
  街の雰囲気
  煌びやかな装飾
  どうにもまぶしく感じてしまう
  特別嫌な思い出があるというわけではないが、どうにも周りの雰囲気に苦手意識を持ってしまう
主人公「やっぱり寒いな・・・」
  温かな街の様子とは違い、
  刺さるほど正直な寒さを感じつつ過ごす
  クリスマスはまだ先だが、
  その日に向けた準備が着々と進んでいた

〇大会議室
主人公「欠員ですか・・・。 クリスマスツリーのデザイン。 なるほどですね」
  デザイナーの仕事をしていて、
  今回は欠員の出た案件を担当することになった
  断る理由もないため引き受けはしたものの・・・
女の子「よろしくお願いします!」
  見習いの女の子と一緒に仕事をすることになった
  稀に見習いの勉強も兼ねた案件もあり、
  今回はそのパターンだ
  人付き合いも得意な方ではないが、
  人手が多いのは助かる
主人公「よろしくお願いします」
女の子「はい! よろしくお願いします! 先輩!」
主人公(俺とは正反対の明るい女の子だなぁ・・・)
  なんとなく申し訳ない気持ちになる
  俺みたいなタイプより、もっと別の人と組んだ方が経験になるんじゃないかとか、
  そんなことを考えつつも、あまり時間もないので早速作業に取り掛かることにした

〇職人の作業場
  作業が始まるとお互いにいろんな意見が出てくる
主人公「ツリーの形は決まっているから、後はサイズが合うように装飾を選んでいこうか」
女の子「はい! あ!この装飾かわいいな〜」
主人公「カラーも大きさもいろいろあるな・・・。 不揃いにならないように気をつけないと」
女の子「なるほどですね・・・」
主人公(・・・)
主人公「せっかくだし、今回はもっと自由に考えてみようか」
主人公「今までにないようなパターンにしてみよう」
主人公「細かい修正はアシスト出来る様にするから、いろんなアイデアを貰えると助かるよ」
女の子「わかりました! いっぱい考えますね!」
女の子「ここはこれかな〜・・・」
  誰かと一緒に何かに取り組むのは久しぶりだ
  基本的に一人で気楽に考えるのがいつものパターン
  仕上がりもなんとなく達成できれば。
  そんな感覚
  今回の案件はいい機会かもしれない。
  そんなふうにも思えてきた

  ──数日後──

〇職人の作業場
ニュース「数日前に発生した台風の影響で交通に大きな乱れが発生しています。 今後の情報にも注意を・・・」
主人公「まずいな・・・」
  突然天気が崩れ始めた
  これの影響もあり、搬入予定だった装飾品が展示までに間に合わない可能性が出てきた
  そもそも展示そのものも出来るのかどうか・・・
女の子「そんな・・・」
主人公(・・・)
主人公(さすがにいつもの元気も無さそうだな、)
主人公「今回ばかりは仕方ないかもな・・・。 展示そのものも出来るか・・・」
主人公「先方に伝えて、また次のときにでも、」
女の子「ま、待ってください・・・!」
女の子「他の方法、とかはないですかね・・・?」
主人公「そうは言っても、この状況じゃなぁ・・・」
女の子「考えます!」
主人公「そんな無茶な・・・」
女の子「クリスマスは大事な日です! いろんな人がいろんな気持ちで過ごす日です!」
女の子「だから、どうかクリスマスだけは温かい気持ちになれるように・・・」
女の子「私はそうしたいです!」
女の子「少し時間を下さい! かならず先方さんにも、先輩にも・・・! 納得してもらえる内容を考えます!」
主人公「あ、ちょっと! 外は雨が・・・」
主人公「・・・」
  あきらかに無茶だった
  それでも気持ちさえあればなんとかなる。そんな根性論を見せられることになるとは・・・、この時はまだわからないわけで・・・

  ────当日────

〇イルミネーションのある通り

〇イルミネーションのある通り
街の人「クリスマスって感じだなぁ」
街の人「綺麗〜。 写真撮ろう〜」
主人公「うまくいったな」
女の子「はい! やっぱりクリスマスはこうでなくちゃ!」
  彼女は短期間の間に、使えそうな装飾品を展示場付近の住民や店に声をかけて集め回った
  当初の内容とは変わったけれど、
  そこにはどこよりも温かい気持ちのこもった作品が出来上がっていた
主人公「大活躍だったな。 君だからこそ達成できた案件というか・・・」
女の子「いや〜// ありがとうございます〜//」
女の子「クリスマスはほんとに大事な日なんです」
女の子「家族と過ごしたり、友達と過ごしたり、大切な人と過ごしたり・・・」
女の子「思い出がたくさん残る日だからこそ、今回はいろんな人の思い出に残れるようにって・・・」
主人公「なるほどな・・・」
  やはり俺とは真逆だ
  それでも今日は。
  クリスマスの苦手な俺でも
  価値観が変わった気がしなくもない
  仕事に対しての価値観も、また見つめ返すタイミングかもしれない
主人公「いいもんだな、クリスマスも・・・」
女の子「? 何か言いましたか?」
主人公「いや、なんでもないよ、」
  彼女ともに作り上げた作品。
  いろんな人の思いが詰まった作品。
  そんな作品が誰かの心を照らせば幸いだ

コメント

  • 人と関わると嫌なこともあるけど、良いことも多いですよね。
    それぞれの意見や考え方も勉強になるし!
    けどそれがストレスにならないようにしないといけませんが…。
    多少話がずれてしまいましたが、暖かくなるお話でした!

  • なにかをなし遂げたり、人々に感動を与えるのは、経験値や的確さよりも、熱い情熱だったりあきらめない希望や前向きさだったりするんだなぁと、この見習いの女の子から勇気をもらえたような気がします。

  • どちらかと言えば物事を冷めた目で見ていた主人公でしたが、真逆でポジティブな見習いの女の子と仕事をすることによって、心に変化が起こる―やはり人は他社との出会いで思いがけない自分に出会うのかもしれませんね。そんなことを考えさせられました!

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