3話「囚われの身」(脚本)
〇牢獄
リンカ「予想以上だよ。君は」
アレックス・ワトソン「・・・」
リンカ「どんなに優秀なアサシンでも最短で一週間掛かる道のりをたったの1時間で来るなんてね」
アレックス・ワトソン「・・・」
リンカ「これで同じ牢屋に入ってなければ最高なんだけどなぁ」
アレックス・ワトソン「・・・うるせぇ」
私の切り札であるアレックス・ワトソンは牢屋に入った私と仲良く並んで監獄生活を始めようとしている。
リンカ「どうやったら私と同じ最上級の牢屋に数時間で入れられるの?」
アレックス・ワトソン「兵士を何人か殺した」
駄目だ。この人に期待した僕がバカだった。
アレックス・ワトソン「なあ、俺の娘を知ってるといったな?」
リンカ「ああ。嘘じゃないよ」
アレックス・ワトソン「俺の目を見て答えろ」
さっきまで死んでいた目から殺意に似たなにかを感じる。
言われた通り目を見るとミカと同じ赤い瞳が目に入った。
リンカ「本当だよ。君の娘さんとは友人だからね」
アレックス・ワトソン「そうか・・・なら俺の行動に合わせろ」
リンカ「え?」
アレックスはその場に突然倒れこみ腹を抱えた
アレックス・ワトソン「うぁあああ!誰か?!助けてくれっ!?」
騎士B「おい!うるせぇぞ!!どうしたんだ!」
なるほど演技か。ベタなやり方だが相手は観察し続けたことで新兵だとわかっている。
経験の浅い新兵相手ならうまく行くかもしれない。適当に合わせよう。
アレックス・ワトソン「うがぁあああああああああ!!!!」
リンカ「たすけて!!このままじゃあこのひとは死んじゃいます!!」
見張りの兵は舌打ちして、牢屋のカギを開けなかに入る。
応急処置をやろうと兵士が手を伸ばした瞬間、アレックスが動いた。
一瞬だった。兵士の口をふさぎながら、ナイフを奪い、首を切り裂いた。
辺り一面に血が撒き散らされ兵士は数秒苦しみながら暴れた後にすぐに動かなくなり人形になったかのようにたおれ込んだ。
「魔王殺しの英雄」ミカの父親だなと実感する。
ありふれた方法だが上手く行ったのはこの男の演技力と戦闘技術の賜物だろう。
アレックス・ワトソン「逃げるぞ。ついてこい」
リンカ「少し待ってくれ」
アレックス・ワトソン「急げ!時間がない」
地面に手をついて指で星をかく、地面には指でりの星が浮き上がり光を放つ。
頭のなかに周囲の情報が入ってきた。
地図のイメージと敵の位置がリアルタイムでわかるようになったためある程度は大胆に動ける
アレックス・ワトソン「お前!?なにやってんだ?!」
リンカ「魔術だよ。敵の場所を確認してるんだ 君にも情報は共有しとくからあんしんしなよ」
額に手を当てながらただ驚くアレックス。
当然の反応だろう。目の前で魔術を見るのは初めて、なおかつ魔術が空想状の世界から来た人間だ。驚くのも無理はない。
アレックス・ワトソン「こんなもん使えんなら自力で脱獄出来たんじゃないか?」
リンカ「戦闘は苦手なんだよ。魔術が使えても僕はか弱い女だからね」
〇教室
昼休みが終わり、机に座ると違和感を感じた。
引き出しを見ると、新聞の切れ端と、封筒が入っている。
勉強開始のチャイムが鳴り、入ってきたのは白夜先生ではなく毛の少ない教頭先生だった。
教頭「白夜先生は、体調不良で早退しました。昼からは自習になります」
「えー」と一同、がっかりしてしまっている。
白夜先生の担当は保険体育と体育だ。
今日は保険体育だったのだが、白夜の人気もありやたら生徒達のテンションは下がってしまっている。
教頭「今から自習にしますのでわからないとこはいい機会なので聞いてきてくださしい」
自習の時間こっそり新聞の切れ端を見てみると、
そこにはデカデカと「英雄の裏切り、魔術師リンカは魔王と繋がっていた。」とかかれている。
嘘だ。ありえない。リンカに限ってそんなことはあるはずがない。
リンカは私と同じく魔王を倒した英雄の一人だ。
私にとっては姉のような存在で、時間があれば何時も話していた戦友だった。
今は西の国の家族と暮らしているはずだったのに、新聞によると無期懲役になって地下牢入れられているらしい。
助けに行こうかと考えていたときもうひとつの物を思い出した。
手紙には「リンカの件は俺が片付ける。お前は首を突っ込むな。」と雑な殴り書きで書かれていた。
白夜先生からすれば大事な戦友で、なおかつ初めて出来た友人であるリンカがこんな状況に有るのが許せないんだろう。
思えば腕が折れようが、血をはこうが応急措置さえ受けようとせずに全線に立ち続けた人だ。気分が悪いからと早退するはずがない。
白夜らしい判断だが私に相談ぐらいしてほしかったな。