ゲルダの涙

星 凜

ゲルダの涙(脚本)

ゲルダの涙

星 凜

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ゲルダの涙
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〇水中
ゲルダ「アンドロイドは涙を流しません。それはアンドロイドに心が搭載されていないからです」
ゲルダ「アンドロイドは人を愛せません。それはアンドロイドに心が搭載されていないからです」
ゲルダ「アンドロイドは、私とは、一体なんなのでしょう」

〇シックなリビング
晴臣「アンドロイドがこの世に普及し始めて数年、俺の家にも一台アンドロイドが存在する」
晴臣「名前はゲルダ。当然にこりとも笑わない無愛想な奴だ」
晴臣「この場合無愛想というのは少々酷なのかもしれない。何故なら彼女には心が存在しないのだから」
晴臣「ゲルダ、今日の俺の予定は?」
ゲルダ「本日の晴臣様の予定はございません」
晴臣「我ながらクリスマスになんの予定もないというのも寂しいもんだな・・・・・・」
晴臣「そうだ、ゲルダ、お前には何か今日予定はあるのか?」
ゲルダ「いいえ、私は晴臣様のアンドロイドですので予定はございません」
晴臣「そりゃあそうか、なあゲルダ、もしよければ一緒に出かけないか?」
ゲルダ「私とですか?」
晴臣「そう、お前と俺で」
ゲルダ「構いませんが世間的には冷ややかな目で見られるかと思いますよ」
晴臣「基本的に暗黙の了解でアンドロイドには心がないため一緒に外出したりしていると好奇の目に晒されることも少なくはない」
晴臣「逆に自分にはアンドロイドしか一緒にいてくれる者がいないと言っている事の証左になり得るからである、特に祝い事なんかの時には」
晴臣「いいよ、構わない。出かけよう一緒に」
晴臣「俺はそんなことはどうでもよかった。こいつに本当に心がないのかどうしても確かめたかった。何より俺はこいつに・・・・・・」
晴臣「かくして俺とゲルダはクリスマスに出かける事となる」

〇海辺
ゲルダ「これが海というものなのですね、データベース上には登録がありますが実物を見るのは初めてです」
晴臣「そうか、どうだ?なにか感じたりするか?」
ゲルダ「いえ、特に何も」
晴臣「じゃあ別の場所に行こう、お前と行きたいところは沢山あるんだ」
ゲルダ「はい、仰せのままに」
晴臣「折角海まで来たんだ、今度は海の生物を見に水族館に行こう」

〇水中トンネル
晴臣「ここが水族館だ、どうだ?何か感じるか?」
ゲルダ「いえ、特には」
晴臣「そうか・・・・・・」
ゲルダ「ただ、なんでしょうか」
ゲルダ「海に生息していた生物が自由に優雅に揺蕩う様を見ていると、なにか、電子回路にノイズが走るような感覚があります」
晴臣「ノイズ?」
ゲルダ「はい、言葉ではうまく説明できないのですが、そのような感覚があるのです」
晴臣「興味深いな、じゃあ今度は一緒に食事をしよう。とはいっても俺が一方的に食べるだけになっちまうが」
ゲルダ「はい、構いません。日常的にその行為には慣れていますので」

〇レストランの個室
晴臣「いいレストランだろう、いつか来る日のためにリサーチしておいたんだ」
ゲルダ「私にはこれが良いのか悪いのかはわかりませんが、高級料理店だという事は分かります」
晴臣「折角来たんだから俺が美味しそうに物を食う様を見ていてくれ」
ゲルダ「はい、わかりました」
晴臣「流石に料理は美味しいな。周りの好奇の目がなけりゃもっと美味いんだろうが。なんだか急に恥ずかしくなりゲルダの顔を見る」
晴臣「少しにこやかに見えた。気のせいだろうか」
ゲルダ「晴臣様、頬に食事がついておりますよ」
晴臣「ああ、すまない」
晴臣「余計に恥ずかしくなって顔を背けてしまった」
晴臣「さあ、そろそろ店を出ようか」
ゲルダ「はい、かしこまりました」
晴臣「最後にお前に見せたいものがあるんだ」

〇クリスマスツリーのある広場
晴臣「それがここ、イルミネーションだ。クリスマスだしな。一緒に見ておきたかったんだ」
ゲルダ「木に色々な装飾を施した物ですね。データベース上に登録がございます」
晴臣「ああ、言葉で言えばそうだろうな。じゃあお前は心でこれをどう思う?」
ゲルダ「心で、でございますか?」
晴臣「そうだ、心で、だ」
ゲルダ「・・・・・・分かりません、ですが胸の辺りが少し熱を持つのを感じます。しかし私にはこれしか分からないのです」
晴臣「じゃあこれはどうだ?」
  俺はゲルダの首に雫の形をしたネックレスをかけてやった
  ゲルダは不思議そうにそれを見つめる
晴臣「クリスマスプレゼントってやつさ。よく似合ってるぜ。ゲルダ」
  顔を見上げるとゲルダの頬には一滴だけ雫がこぼれ落ちていた
  それが雨なのか、ゲルダの機械の身体から漏れ出した物なのかは分からない
  しかし俺には、それがゲルダの涙に見えた
ゲルダ「分からないのです、分からないのです」
ゲルダ「ずっとアンドロイドに生まれて来たことを考えていました」
ゲルダ「心について考えていました」
ゲルダ「それでも答えは見つからないのです」
ゲルダ「この焼けつくようなノイズはなんなのでしょう」
ゲルダ「私は一体なんなのでしょう。私は」
  ゲルダの言葉を俺が遮る
晴臣「お前がなんであっても俺の中では変わらずゲルダだ」
晴臣「俺のたった一人の愛するアンドロイドだよ」
晴臣「お前はお前でいいんだ。そうだろう。ゲルダ」
  ゲルダは数秒の沈黙の後、笑った
  人がそうするように
  まるで本物の人のように
ゲルダ「人はこういう時、笑うと記録されています」
ゲルダ「私もこれで人に近づけたのでしょうか?」
  人間とアンドロイドの恋はまだまだ始まったばかり
  クリスマスはまだ、始まったばかり
  恋はまだ、始まったばかり

コメント

  • 人間同士、人間とアンドロイド、関係は違っても、この世に愛が溢れることは喜こばしいことですね。人は愛せないけど、アンドロイドだったら愛せるという人が将来でてくるかもしれませんね。

  • 人間とアンドロイドの恋は果たして叶うのか。データベースに様々な情報をインプットすればその内人間に近づいて来ますかね。この先が楽しみの物語です。

  • 近未来に起こりうる話しですね、人は人、人とはちがう生物の間では「愛」の形は違うのでしょうか、、、どうすればもっと近づけるのでしょうか、、、

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