勇者様と勇者くんと各種転生者のみなさん

ぬゑ

集いし者達。(脚本)

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〇学校の部室
  私立栄優学園────。
  都心から少し離れた位置に建設された、広大な広さと莫大な生徒数を誇る地区随一のマンモス高校・・・。
  空に暗雲漂う中、その学園の一室にて、
  “彼ら”が集う時が訪れていたのだった・・・。
桜白 季四香「──・・・全員、集まったようだな」
  少女の言葉に、その場に集まった一斉に者は頷く。
桜白 季四香「私は、今は桜白季四香(おしろ きしか)と名乗っている。 好きに呼んでくれて構わない」
桜白 季四香「魔法の腕は衰えておらぬだろうな? 魔法使い────」
馬峰 司「もちのろん、じゃよ」
桜白 季四香「結構。 今は、馬峰司(まほう つかさ)という名であったか?」
馬峰 司「うむ。 別に拘ってはおらぬが、司と呼ぶがいい」
桜白 季四香「僧侶・・・いや、今は惣莉緒(そう りお)だったか? お前も変わりないようだな」
惣 莉緒「はい。 みなさん、久しぶりですね」
桜白 季四香「ああ、久しぶりだな。 ”この世界”に来て、15年ぶりか・・・」
馬峰 司「儂の場合はもうちっと短いがの」
馬峰 司「いずれにしても、皆息災でなによりじゃ」
桜白 季四香「まずは、天馬。 各種入学の手続き、ご苦労だった」
天馬・ノニ・バーシャ「いえ、みなさんのお力になれてなによりでした」
馬峰 司「それで、これからどうするのじゃ?」
桜白 季四香「焦るな。 それこそ、皆を集めた理由だ」
桜白 季四香「確かに、私達のやるべきことは山積みだ」
桜白 季四香「だが、今後の方針を決めるのは我らではない」
桜白 季四香「・・・ということで、皆に今後の方針をご説明ください」
桜白 季四香「”勇者様”──────」
真野 勇者「・・・・・・」
桜白 季四香「・・・? どうしましたか?」
真野 勇者「いや・・・その・・・」
桜白 季四香「???」
真野 勇者「・・・・・・これ、なに?」
桜白 季四香「何と言われましても・・・」
桜白 季四香「勇者様一行の再結成会・・・」
桜白 季四香「とでも、言えばいいでしょうか・・・」
真野 勇者「いやだから、その“勇者一行”ってどういうことって意味で・・・」
桜白 季四香「当然、あなたのパーティーです」
真野 勇者「あんれぇおかしいな・・・ 俺、そんなに伝わらないようなこと言ってるかな・・・?」
馬峰 司「さっきから何を言っておるんじゃ、お主は」
馬峰 司「もしや、何も覚えておらぬのか?」
真野 勇者「覚えていないって言うか・・・」
真野 勇者「・・・そもそもの話、あんた達、誰?」
惣 莉緒「勇者さん、本当に忘れちゃってるんですか?」
馬峰 司「うむ・・・だとするなら厄介じゃの」
馬峰 司「季四香、これは予定外じゃよ」
桜白 季四香「た、確かにこれはいけないな・・・」
桜白 季四香「勇者様・・・。 失礼ですが、本当に勇者様・・・でよろしいですか?」
真野 勇者「ああ勇者だよ! 悪いかよ!」
桜白 季四香「嘘を付いているということはないですか?」
真野 勇者「俺だって嘘であって欲しいよ!」
真野 勇者「残念ながら正真正銘の本名だよ!」
馬峰 司「ククク・・・ 真野勇者(まの ゆうしゃ)とはの・・・」
馬峰 司「ものの見事に、俗に言うキラキラネームというやつじゃな!」
馬峰 司「苗字と名前のセットで”真の勇者”とはおそれいったわ! アッハッハッハッ!」
真野 勇者「笑い事じゃないから! こちとら15年間この名前のせいで苦労し続けてるんだよ!」
桜白 季四香「ふむ・・・やはり勇者様か・・・」
桜白 季四香「だとするなら、いったいなぜ勇者様には記憶がない・・・」
桜白 季四香「司、お前の魔法が失敗したという可能性は?」
馬峰 司「確かに転生魔法というのはかなり難しいものではあるが・・・」
馬峰 司「それでも、魔導に誓って失敗はしておらぬと言わせてもらおうか」
惣 莉緒「私も横から見ていましたけれど、失敗した様子はありませんでしたね」
桜白 季四香「となると、別の要因があるということか・・・」
桜白 季四香「まさか、”魔王”の影響・・・?」
馬峰 司「完全に否定は、できぬじゃろうな」
惣 莉緒「彼の者の力を考えれば、咄嗟に介入したとしても不思議ではありませんね」
桜白 季四香「魔王・・・やはり、恐るべき存在だな」
真野 勇者「・・・え? ちょっと待って・・・」
真野 勇者「これ俺、無視されてる? めちゃくちゃ巻き込まれてるのにめちゃくちゃ蚊帳の外じゃね?」
桜白 季四香「ご安心ください、勇者様」
桜白 季四香「今はまだ混乱していることでしょうが、いずれ全てを思い出すことでしょう」
桜白 季四香「それまで、勇者様の身は我らが全身全霊を以てお守り致します」
馬峰 司「じゃな。仕方あるまい」
惣 莉緒「ふふふ、それにしても、何も知らない勇者様ですか・・・」
惣 莉緒「勇者様と初めてお会いした時のことを思い出しますね」
馬峰 司「そうじゃな。声をかけた時のキョトンとした顔、今でも鮮明に覚えておるわ」
桜白 季四香「ああ。懐かしいな・・・」
真野 勇者(あーダメだこの人ら・・・ 全くこっちの話を聞いてない・・・)
真野 勇者(入学早々、なんだってこんなことに・・・)
  一人混乱する勇者は、その日のことを思い返していた・・・

〇教室
  その日、私立栄優学園では入学式が執り行われていた。
  真新しい制服に身を包んだ新入生達は、新たな出会いとこれからの学校生活に期待と不安を感じる。
  ・・・が、しかし。
  クラス名簿にあった名前に、教室内はざわついていた。
「・・・名簿見たか?」
「見た見た! 桜白季四香って、あの桜白財閥の・・・」
桜白 季四香「・・・・・・」
「ちょっと美人過ぎじゃね!? もしかして、同じクラスとかめちゃくちゃツイてね!?」
「はぁ〜、あんな美人と仲良くなれたら最高なんだけどなぁ」
「無理無理。 お前知らねえの? 中学時代の、”氷の百人斬り”の話」
「あー、聞いたことある。 あらゆる告白を、無情に断り続けたっていう、あの・・・」
「それでも挑戦者が後を絶たなかったらしいけど・・・まあ、あの見た目と家なら納得だな」
「バッカそっちじゃねえよ! こいつだよこいつ!」
「こいつって・・・え?」
「真野、勇者・・・?」
「す、凄い名前だよね・・・」
「うわぁ可哀想・・・ 私なら耐えられない・・・」
「それが、あの男子・・・?」
真野 勇者「・・・・・・」
「・・・うん、普通、だな・・・」
「あれで勇者は・・・その、確かに勇気がいるな・・・」
  その直球どストレートな名前に、クラス中の視線が注がれていた。
真野 勇者(はぁ・・・またこれか・・・)
真野 勇者(毎度毎度の恒例行事とは言え、なんで俺ばっかりこんな目に・・・)
真野 勇者(100%名前のせいだけど・・・)
真野 勇者「・・・・・・」
真野 勇者(・・・将来、絶対改名しよう)
  改めて強く決意した勇者である。
桜白 季四香「・・・・・・」
  その時、教室のドアが開かれた。
天馬・ノニ・バーシャ「みなさーん、静かにー」
天馬・ノニ・バーシャ「私の名前は、天馬・ノニ・バーシャです。 みなさんの担任を務めることになりました」
天馬・ノニ・バーシャ「よろしくお願いします」
「ヤバいヤバい! めちゃくちゃカッコいい!」
「ハーフらしいけど、ちょっとビジュアル最強過ぎじゃね?」
天馬・ノニ・バーシャ「さて、みなさんはこれから帰宅してもらうのですが・・・」
天馬・ノニ・バーシャ「桜白季四香さん。 ・・・それと、真野勇者くん」
天馬・ノニ・バーシャ「二人は用件があるので、私に付いて来てください」
桜白 季四香「・・・わかった」
真野 勇者「え? 俺も?」

〇学校の部室
真野 勇者(・・・で、言われた通り付いてきたらこの状況、と・・・)
真野 勇者(これ、もしかしてドッキリか何か? カメラは・・・ないみたいだけど・・・)
桜白 季四香「ともあれ、当面の間は勇者様の記憶が戻るのを待ちつつ行動するしかないだろう」
馬峰 司「じゃな。仕方あるまい」
惣 莉緒「ではでは、今日はこの辺でということで・・・」
真野 勇者(あ、やっと終わるんだ・・・ 良かった・・・)
天馬・ノニ・バーシャ「校内でみなさんが行動を共にできるよう、新規の部活動としてこのメンバーを登録しておきました」
天馬・ノニ・バーシャ「あまり目立たってもいけませんから、名義上は“RPG部”としております」
真野 勇者「いやそれめちゃくちゃ目立つでしょうに! もっと他にあったでしょ!」
桜白 季四香「なるほど・・・助かる、天馬」
真野 勇者「1ミリも助かってないから!」
桜白 季四香「勇者様、校内だけでなく、外での活動もしやすくするための手続きもしています」
桜白 季四香「しかし、少々時間がかかるようなので・・・申し訳ありません・・・」
真野 勇者「あー・・・うん。 もうよくわかんないからどうでもいいよ」
真野 勇者「・・・っていうか、キミ普通にここにいるけど中学生だよね?」
馬峰 司「そうじゃが・・・それがどうかしたかぇ?」
真野 勇者「どうかしたかじゃないよ。 なんで中学生が普通に高校にいんのさ」
馬峰 司「そこはホレ、儂の魔法でチョチョイのチョイっとの」
真野 勇者(まーたわけのわからんことを・・・)
真野 勇者「バーシャ先生も注意しないんですか?」
天馬・ノニ・バーシャ「私のことは天馬とお呼びください、勇者様」
真野 勇者「全力で拒否しますし、出来ればその勇者様とかいう呼び方を全力で何とかしてください」
天馬・ノニ・バーシャ「それは・・・できません」
真野 勇者「なんでだよ! あんた教師だろうに!」
天馬・ノニ・バーシャ「教師とは、仮初めの姿でしかありません故に・・・」
天馬・ノニ・バーシャ「私の真の姿とは・・・そう・・・」
天馬・ノニ・バーシャ「みなさんの、馬ですから」
真野 勇者「いやホント・・・ ちょっとマジで何言ってるんですか?」
天馬・ノニ・バーシャ「それが私の誇りなのです」
真野 勇者「そんなド変態な誇りなんてとっとと捨ててください」
真野 勇者「大人のそういうところを見せられる青少年の気持ちを少しは考えてくださいよ」
桜白 季四香「天馬よ、姿が変わってもその心はかつてのままのようだな。 安心した」
真野 勇者「普通は不安になるところなんだけど・・・」
馬峰 司「まったく、見上げた奴じゃて」
真野 勇者「これで見上げるの? 首折れてるんじゃない?」
真野 勇者「それより、まさかとは思うけど・・・」
真野 勇者「そのRPG部って、もしかして、俺も入ってることになってる?」
天馬・ノニ・バーシャ「はい、もちろん」
馬峰 司「当たり前じゃろうて」
惣 莉緒「何しろ、勇者さんですから」
桜白 季四香「勇者様なくして、我らは──いや、RPG部は始まりませんから」
真野 勇者「そんな得体の知れない部活なんて始まらなくていいから」
真野 勇者「天馬先生、退部届を出したいんですが・・・」
天馬・ノニ・バーシャ「無論、全力でお止め致します」
  もはや何を言っても無駄なようだと、全てを諦め、されるがままとなる勇者であった。

次のエピソード:鳥よ、鳥よ。

コメント

  • 一癖も二癖もある女子たちを相手に勇者君のツッコミが冴え渡っていて、別の意味でも十分勇者なんじゃないかと思いました。今後のRPG部の具体的な活動内容が気になるところですね。

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