オルゴールレコード(脚本)
〇女性の部屋
くるみ「断捨離しよ」
くるみ「古いダンボールだな いつのだろ」
小学校低学年あたりの思い出がつまっている
くるみ「なつかしい・・・ あ、これは・・・」
小1のときだけ一緒だったりんちゃんと交換したオルゴールだ
くるみ「お父さんの仕事の都合ですぐ転校しちゃったんだよね」
くるみ「このオルゴールまだ鳴るかな」
ネジを回すと昔の思い出が走馬灯のように流れていく
最近の記憶からどんどん遡っていく
4.5歳位から下は覚えていないから空のフィルムがからからと回るようだ
くるみ「ん・・・?」
フィルムが輝きだして別の記憶が見せられていく
くるみ「わあ、知らない人の記憶が混ざりだした」
???「ちがうよ こっちが本当の君さ」
くるみ「え・・・?」
〇散らばる写真
おいでよ、オルゴールの底へ
輝くフィルムに飛び込んでごらん
〇歯車
くるみ「ここはどこ・・・? あなたは誰? とても懐かしい感じがするわ」
ルルー「僕の名前はルルー ここはオルゴールレコード 記憶を再生する場所さ」
透明な壁に金色ののオルゴールがたくさんついている
ルルー「回してもいいよ」
オルゴールのネジを手当たり次第回す
くるみ「たのしい!! てきとうに回しても調和したメロディになる!」
くるみ「もしかして、どこかに私の記憶のオルゴールがあるのしら? どれだろう」
ルルー「? 今聞いているメロディが君のオルゴールだよ」
くるみ「どういうこと?」
ルルー「そのうちわかる」
くるみ「頭がムズムズするわ」
くるみ「ん〜、音ってドレミファソラシしかないのに、曲はたくさんあって不思議ね」
くるみ「曲がたくさんあるように魅せられているだけかしら?」
くるみ「オルゴールを回して・・・回されて・・・ これって自由なのかしら?」
ルルー「おっといけない 気持ちが明るくなるようなメロディに変えよう」
ルルーがオルゴールを回す
ルルー「どうだい? 自然に踊りたくなるだろう?」
くるみ「わあ! ほんと!」
くるみ「踊り疲れちゃった」
ルルー「疲れが癒えるようなメロディに変えよう」
くるみ「ねむい・・・」
ルルー「ゆっくりおやすみ」
ルルー「そうだ 君が眠っているうちに僕に夢中になってしまうようなメロディもかけようかな」
くるみ「キャー!!変態! 催眠術!」
ルルー「なあに すでに生きているだけで集団催眠にかかっているようなものだろ?」
くるみ「いや! 来ないで!」
ルルー「僕を君の好みに見えるようなメロディをかけようか」
ここにいてはいけない
とりあえず耳をふさごう
ルルー「無駄だよ」
頭の中でオルゴールが鳴っている
くるみ「えいっ」
壁に頭をぶつけてみる
くるみ「あ、正気に戻ったわ なんで慌てたのかしら こういうときこそ深呼吸」
くるみ「なんか変わった音楽が鳴ってるな ふーんって気にしなきゃへっちゃらよ」
ルルー「つまんないね そんなに落ち着き払ってて」
ルルー「狂っちゃえばいいのに」
くるみ「私はドレミファソラシの 周期を超えたところへ行きたい」
くるみ「この願いも周期なのかしら?」
ルルー「それは君が体験してみないとわからないよ」
くるみ「そうね」
くるみ「周期も、周期を超えることも両立できるかも」
オルゴールレコードとルルーが透けて消えていく
〇女性の部屋
くるみ「はっ 夢だったのかしら」
くるみ「不気味だし捨てようかしら いや、オルゴールに罪はないわ またしまっておきましょう」
君の好みに見えるようなメロディをかけようか
くるみ「素敵な王子様のメロディをかけたらよかったかも」
くるみ「なーんちゃって!」
白ウサギではなく黒猫に案内される「オルゴールの世界のアリス」みたいな独特の世界観が素敵だなと思っていたら後半が!エロ黒猫になった!クルミが正気に戻る方法が原始的でしたね。せっかく断捨離してたのに、「いつか」は来ないのに、オルゴールまたしまっちゃったなあ。
ルルーがいっていた【生きてるだけで催眠にかかっているようなもの!】という言葉がなんだか的を得ているようで、ハッとさせられました。開けずの扉はつい開けたくなるものですね!