笑わない女

仲津たけひろ

笑わない女(脚本)

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〇教室
  卒業アルバム制作委員として、
  生徒ひとりひとりの顔写真を
  撮影することになった俺。
  アルバムづくりなんて
  全然興味なかったのに、
  クラスで推薦されて・・・
  最初はやる気なかったけど・・・
  撮影しながら、いままで
  あまり話したことなかった
  同級生とも話すことできて。
  それが意外と楽しくて・・・
  今日、撮影する宮森さんも、そうだ。
  同じクラスになったことないから、
  全然、話したことない。
  よく見ると、けっこうかわいいのに、
  学校でも、あまり目立たない。
  ・・・っていうか、
  宮森さんが笑ったとこ、
  見たことないかも・・・
「宮森さん、じゃあ 顔写真、撮っていくね」
宮森さん「よろしくお願いします」
「・・・あのさぁ、敬語はやめようよ。 同級生なんだし」
宮森さん「・・・・・・じゃあ、 よろしく・・・」
「うん。 じゃあ、撮ってくね」
「うん、オッケー。 じゃあ、今度は笑顔で」
宮森さん「・・・え?」
「みんな、笑顔も押さえてるんだ。 はい、笑って」
「・・・お願い、笑ってよ」
宮森さん「笑顔は、ちょっと・・・」
「・・・そ、そうだよね。 いきなり「笑って」とか 言われても、キビシイよね」
「じゃあ、こうしよう! 宮森さん、好きな人のこと、 頭に思い浮かべて!」
「だんだん、顔がニヤけて くるでしょー・・・」
宮森さん「・・・好きな人、いないし」
「「いない」とかいって、 ほんとは好きなんじゃないの? 俺のこと!」
宮森さん「・・・・・・・・・」
「・・・ヤベ・・・ 逆に怒らせたか・・・」
宮森さん「・・・別に、怒ってないよ」
「じゃ、じゃあ笑おうよ、 愛想笑いでもいいから!ね?」
宮森さん「・・・好きじゃないの」
「あ、あぁ、俺のことね」
宮森さん「好きじゃないの、自分の笑顔」
「え?なんで?」
宮森さん「だって・・・ 嫌いなものは、嫌いなの」
「おかしいでしょ、そんなに かわいいのに」
宮森さん「え・・・」
「あ、その顔!もう一回!」
宮森さん「・・・ムリムリ・・・」
「えー!笑った方が 絶対かわいいのに!」
「宮森さん、なんか、 もったいないよー!」
宮森さん「・・・・・・」
「お願い!笑って? ね、お願い!」
宮森さん「・・・ヤダ」
  この日は、ここまで。
  
  続きは、明日に持ち越しとなった。
「宮森さん! はい、笑おう!」
宮森さん「イヤよ」
「なんでー? 笑うとめっちゃ かわいいのにー!」
宮森さん「・・・・・・」
「あ!そのまま!」
「あー! またシャッターチャンス 逃したー!」
  このラリーは、1週間ほど続いた。
  その結果、ようやく
  奇跡の1枚を収める
  ことができた。
「・・・よし!」
  こうして、アルバム撮影係としての
  役割を全うしたことで・・・
  俺の人生は、大きく変わった。
宮森さん「ねぇ、あたしのこと、 かわいい?」
「うん、かわいいよ」
  はじめて、彼女ができた。

コメント

  • 言葉は人を変えますよね、ポジティブにも、ネガティブにも。恋人同士でもなかなかここまで言われないくらいの言葉を浴び続けた宮森さん、ステキな方向に心が向いたのですね!

  • 好きだから見続けたのか、見続けたから好きになったのか。ファインダー越しの空間には何か特別な魔法がかかるのかも。読み終わった読者も宮森さんのような笑顔になってしまう爽やかな青春ストーリーでした。

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