Silent Night(脚本)
〇綺麗な一人部屋
ゆい「・・・またか」
ゆい(12月1 日から届き始めた小包 差出人の名前はなし──)
ゆい「今日で3日連続・・・ 怖くてそのままにしてたけど、やっぱり中身を確かめないとダメだよね」
〇綺麗な一人部屋
ゆい「手紙と──ハンカチ?」
〇綺麗な一人部屋
気に入ってくれるといいのだけど
ゆい「なにこれ?」
〇血しぶき
ゆい「きゃっ!!」
ゆい「──『Yui』」
ゆい「このハンカチ・・・私の名前が入ってる」
ゆい「・・・・・・他の小包も確認しよう」
〇綺麗な一人部屋
君はきっと綺麗な女性になっているだろうね
女の子は体を冷やしてはいけないよ
ゆい「・・・」
ゆい「手鏡と手編みのマフラー・・・ それになにこのメッセージ」
ゆい「・・・気持ち悪い 一体誰がこんなものを?」
ゆい(・・・明日警察に相談しに行こう)
ゆい「ちょうど明日は早上がりだったな」
ゆい「・・・」
ゆい「ふぅ・・・ 悩んでもしょうがない 明日に備えて早く寝よう」
〇通学路
ゆい「はぁー 今日に限って残業なんて、ほんとついてない」
ゆい「・・・ん?」
〇通学路
ゆい(暗くてよく見えないけど、後ろの物陰に誰かいる!!)
ゆい(まさか、あの人が小包の送り主? ・・・早く帰ろう)
タッタッタッ!!
ゆい(付いて来てる!!)
ゆい(家まであと少し!! 全力で走れば追いつかれないはず!)
〇玄関内
ガチャッ!
ゆい「──はぁ、はぁ、はぁ ・・・なんとか逃げ切れたみたいね」
〇玄関内
ピーンポーン
ゆい「!!!! まさか、さっきの人が追いかけて──」
「ゆいー?大丈夫?」
ゆい(この声は──)
ガチャ
文子「まぁまぁ! 電気もつけないで、一体どうしたの?」
ゆい「文子さん! どうして──」
ゆい(文子さんはこのアパートの大家であり、 父の姉──つまり私の伯母にあたる人だ)
ゆい(私を産んですぐ母が亡くなり、父はその ショックでどこかへ行ってしまった)
ゆい「──私を置いて」
ゆい(それ以来ずっと、文子さんが私の保護者として面倒をみてくれている)
文子「走って帰ってくるあなたを見かけて、ただ事じゃないと思って様子を見にきたのよ」
ゆい「そうだったんですね・・・」
文子「なにかあったのね」
文子「何年あなたと一緒にいると思ってるの? すぐにわかるわよ」
文子「一人で悩むより、誰かに話した方が楽になるわよ」
ゆい(昔からそう── 文子さんに隠し事はできないな)
ゆい「──実は・・・」
〇綺麗な一人部屋
私は小包のことを文子さんに話した──
文子「・・・そう そんなことがあったのね」
文子「その小包の中身、見せてもらってもいい?」
ゆい「はい」
〇綺麗な一人部屋
文子「この手紙──」
ゆい「心当たりがあるんですか?」
文子「間違いない ・・・これは隆俊(たかとし) ──あなたのお父さんの字だわ」
文子「このマフラーも、お母さんが産まれてくるあなたの為に編んでいたものよ」
ゆい「父は母が亡くなって以来行方不明だって─ どうして今になって?」
文子「・・・誕生日」
ゆい「えっ?」
文子「もうすぐあなたの誕生日よね? それも20歳の・・・」
ゆい「だからって! 今さら父親らしいことなんて!」
ゆい「・・・遅すぎるよ なんでもっと早く来てくれなかったの?」
文子「・・・そうよね、今さらよね それに、あなたに怖い思いもさせてしまっていたようだし」
文子「決めたわ もう一度、あなたのお父さんを探してみましょう!」
文子「当時は全く手掛かりもなくて諦めていたんだけどね 小包が発送された場所を辿れば、なにかわかるかもしれないわ!」
ゆい「・・・」
文子「私だって、あなたを置き去りにしたあのこのことは許せないわ」
文子「だけどこうしてあなたに接触してきている以上、一度しっかり話す必要があると思うわ」
ゆい「・・・わかりました」
文子「複雑な気持ちだと思うけど、これだけは知っておいてほしいの」
文子「お父さんは不器用で、こんな形でしかあなたに接することができない人だけど・・・」
文子「離れていた間もずっと、あなたのことを想っていたと思うわ」
ゆい「・・・」
〇綺麗な一人部屋
ゆい(あれからも小包は毎日届き、たぶん今回で最後・・・ 12月25日・・・今日は私の誕生日)
ゆい(正直、お父さんのことはまだ許せない)
ゆい(でも、プレゼント一つ一つに私を想う気持ちが伝わってくる)
〇綺麗な一人部屋
ゆい「指輪?」
晴香の──君のお母さんの指輪だよ
今さらだと思うだろうが──
幸せになってほしい
ゆい「お母さんの── 相変わらず短い文章・・・ 本当に不器用なのね」
ゆい「ありがとう・・・お父さん」
〇綺麗な一人部屋
プルルルル
ゆい「文子さんだ!」
文子「ゆい! お父さんの居場所が分かったわ!」
文子「お父さん、ずっとあなたに謝りたかったみたい でも合わせる顔がないからって・・・」
文子「悩んだ末、あなたの20歳の誕生日に合わせてプレゼントを送るのが精一杯だったみたい」
ゆい「そうだったんですか・・・」
文子「本当はね、プレゼントをあなたに直接渡そうとしていたらしいの そして、顔を見てちゃんと謝りたかったって」
ゆい(もしかして、あの夜私を追いかけて来たのもお父さん──)
ゆい「きっと、会いに来てくれていたと思います 今月の始め頃、夜道で父らしき人を見かけたんです」
文子「そんなはずないわ 私ね、今病院にいるの 隆俊先月事故に遭って、幸い命に別状はなかったみたいだけど ──まだ入院中なのよ」
〇綺麗な一人部屋
ゆい「─────えっ?」
〇綺麗な一人部屋
〇黒
メリークリスマス
ゆいの心中の揺れや乱れが伝わってくる、とても丁寧な描写の物語ですね。ハートフルなファミリーストーリーに集約されそうで安堵したところの突然の恐怖感、衝撃です。
不器用なお父さんだけど、本当はずっと伝えたい想いがあったんだなぁ、いい話だなぁと思って感動モードに入っていたらまさかの展開、話のジャンルが急にかわり、ぞぞぞとしました。これはこれで意外性があっておもしろかったです。
いきなりホラーになっちゃってびっくりしました。
最後の出てきた男の人は、入院しているお父さんを手伝ってた人?かなと勝手に思いました。
ゆいさんに荷物を送るのを手伝っていたとか。