〇おしゃれなキッチン
一ノ瀬 あしゅら「ふう。洗い物おわり」
一ノ瀬 あしゅら「うい〜ナイス私」
一ノ瀬 あしゅら「カレーって最高。うまくて沢山。まさか二人がかりで一品とは思うまい」
一ノ瀬 あしゅら「接近中！　緊急合体！」
一ノ瀬 まなみ「ママ！　たっちゃんが私の鉛筆転売するんだけど！　どういう教育してるんですか」
一ノ瀬 あしゅら「小１で転売に手染めないでしょ、あんまり」
一ノ瀬 まなみ「ちょっと疑ってるじゃん。ほんとだよクラスの子の匂い付き消しゴムと交換してきちゃった」
一ノ瀬 あしゅら「クラスの子の匂いが付いているのか、ただのいい香りの消しゴムなのか、レベルが変わってくるね」
一ノ瀬 まなみ「そんなレベルの高──低い話じゃない！　人の鉛筆使うなって、ちゃんと怒ってよ！」
一ノ瀬 あしゅら「よ〜し怒りまくるわ。開業届も出させるし確定申告もさせる。クラスの子の匂いもちゃんと需要あるところに行き渡らせる」
一ノ瀬 まなみ「──もういい」
一ノ瀬 あしゅら「やっぱ、遺伝かね・・・」
一ノ瀬 あしゅら「小１だった、初めての分身」
一ノ瀬 あしゅら「余ってる冷凍みかんがどうしても欲しくて、３機使って戦ったよね」
一ノ瀬 あしゅら「なんでバレなかったんだろう。明らかに３人いたのに」
一ノ瀬 あしゅら「ゆとり教育の弊害だよ。そして誰も他人を見てない悲しい時代だった」
一ノ瀬 あしゅら「私って、すぐ環境のせいにする」
一ノ瀬 あしゅら「私に言われたくないよ、私にトイレ任せて２人で台所やってたくせに」
一ノ瀬 あしゅら「排泄はだって、仕方ないじゃん誰かがやんなきゃ」
一ノ瀬 あしゅら「自分だろうが！　自分のことを自分任せにして知らんぷり。そうやって息子に悪い癖が──私のせいよ！」
一ノ瀬 あしゅら「ややこしいよ。教育ママモードだけど、私ってそもそも道徳的じゃないし賢くないからさ」
一ノ瀬 あしゅら「啖呵切ってる私、かっちょいい」
一ノ瀬 あしゅら「ほらこうなる」
一ノ瀬 あしゅら「自己陶酔自己嫌悪自己満足！　自分ばっかりじゃなくて、息子のために心を鬼にしなきゃ！」
一ノ瀬 あしゅら「なんにも満足にできなかったもんなあ」
一ノ瀬 あしゅら「人の３倍近いことを試したけど、得意なことなんか何もなかった」
一ノ瀬 あしゅら「客観視しすぎてどっか冷めてたね」
一ノ瀬 あしゅら「バレーの自主練キツかった、あのへなちょこフォーム」
一ノ瀬 あしゅら「何より人の３倍疲れるのがやばすぎ」
一ノ瀬 あしゅら「夏休みの宿題とか、３人いても倒せないと思わなかった」
一ノ瀬 あしゅら「誰もやりたくないもんマジで」
一ノ瀬 あしゅら「バイト掛け持ちしまくってみた時は焦った、考えてみれば戸籍は１つだもん」
一ノ瀬 あしゅら「気になる人が２人できちゃった時とかさ、浮気になるかで議論したよね」
一ノ瀬 あしゅら「出産での思い付きも危なかったよ」
一ノ瀬 あしゅら「その話やめよ。クローンは闇が深い」
一ノ瀬 あしゅら「３人いても何もいいこと無いじゃないか！」
一ノ瀬 あしゅら「５人いたら違ったのに」
一ノ瀬 あしゅら「同じかもっと悪いんじゃない？」
一ノ瀬 まなみ「ねえママ、作文書いたんだけどどう思う？」
　　私のママは、ひとりごとがうるさいです。ちょうどぴったり３倍うるさいです。でも、人並みに自慢のママです。
一ノ瀬 あしゅら「分身バレてる？」
一ノ瀬 あしゅら「シビアさ遺伝してる」
一ノ瀬 あしゅら「子が分身ってことかね」