妖精保安官と荒野の亡霊

妖精保安官と荒野の亡霊(脚本)

妖精保安官と荒野の亡霊

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〇荒地
  有珠・ターナーは宇宙戦争の末、月にあるウサギの城を燃やした

〇宇宙空間
  やがて彼女は花咲く妖精の惑星に辿り着いた

〇赤い花のある草原
  妖精たちは有珠を受け入れた
有珠(ありす)「一体、何と闘っていたんだろうと思うほど平和だな」
有珠(ありす)「地球人だったときのこと全部忘れてしまおうか」
妖精「それがいいわ」
妖精「そんな銃磨きなんかやめて」
有珠(ありす)「えっ」
有珠(ありす)「つい地球時代のクセで」
  私はシェルターにこもりながら、ウサギ胞子と闘わねばならなかったのだ
有珠(ありす)「これがアイデンティティだからな」
有珠(ありす)「銃の腕を磨くことはやめられない」
妖精「そうなのね じゃあ あなた警察官になったらいいわ」
有珠(ありす)「ええ 妖精の惑星では事件なんか起きないだろ?」
妖精「起きないけれどいたら面白いでしょ妖精保安官」
有珠(ありす)「そうだな 面白そうだしなってみるか」

〇西洋風の部屋
  かくして私は妖精保安官になった
  妖精たちが協力してくれたおかげで洒落た詰め所ができた
有珠(ありす)「いいねふんぞり返りたいね」
妖精「やだあなたわるい保安官なの?」
有珠(ありす)「悪いことするのもめんどくさい」
妖精「わー! けいさつしょができたってきいたわ!」
妖精「きゃー 逮捕してごらんなさい うふふ」
妖精「ほーらほーらイタズラしちゃーう」
  妖精が私のほっぺたをつつく
  妖精はすばしっこくてつかまらない
妖精「指名手配とかされちゃうー?? あはは」
有珠(ありす)「うーん・・・平和だ 廃業かな?」
  そうだ 警察なんていらない世界のほうがいいのだ
  私は闘ってきたから、平和のありがたみがよくわかる
有珠(ありす)「もういいんだ・・・」
???「ぎゃーー!!」
  外から声がする
有珠(ありす)「どうした? 事件か?!」

〇赤い花のある草原
妖精「人間だー!」
  外に出ると妖精の惑星には場違いなガンマンが倒れていた
有珠(ありす)「え・・・」
有珠(ありす)「大丈夫か・・・?」
  近寄って肩を擦る
???「ああ・・・ 死に損なったか」
有珠(ありす)「傷の手当をしよう」
妖精「私達にまかせて」
???「う・・・」
有珠(ありす)「傷はどうだ?」
???「ああ、問題ない、世話をかけたな」
妖精「あらあら、あなたもどこかの時代の地球から、ここ妖精の惑星に転送されたのかしら」
妖精「大変ね」
妖精「絶望した人間しかここに来ることはできないのよ」
???「妖精の惑星、聞いたことがないな」
有珠(ありす)「私も、ここに来たとき、初めて知った」
???「ほかに人間は?」
妖精「あなたたちしかいないわ」
妖精「私たちは、地球への帰り方、知らないわよ」
有珠(ありす)「・・・私は帰りたいとも思わないな 私が知る地球は人が住める状態でもないし」
妖精「ガンマンさん、あなたは?」
???「・・・」
妖精「そう ゆっくり休んでいくといいわ」
有珠(ありす)「・・・・・・」
???「・・・・・・」
有珠(ありす)「私は有珠 あなたは」
ジョン「ジョン」
有珠(ありす)「ここに来る前はなにを?」
ジョン「仇討ち」
ジョン「仇を倒しても、俺の半身は帰ってこなかった」
有珠(ありす)「・・・半身って」
ジョン「師匠さ 凄腕のガンマンだ」
有珠(ありす)「これから、どうするつもり・・・?」
ジョン「生かされた分、ここで生きる」
ジョン「世話になったな 俺はどこかに小屋を建てて暮らす」
  ガンマンは身支度をはじめる
有珠(ありす)「あ、待って あなたは相当腕が立つだろう?」
有珠(ありす)「私に教えて」
ジョン「この平和な星には必要ないだろう 銃の腕は」
有珠(ありす)「・・・えっと 本当の強さがほしいんだ」
有珠(ありす)「それがなんなのか、わからないけれど あなたは知っていそう」
ジョン「そうか」
ジョン「・・・どこからでもかかってこい」
有珠(ありす)「・・・」
有珠(ありす)「ふっ」
  私の鋼鉄の体はいとも容易く受け止められる
有珠(ありす)「あれ・・・?」
  どれだけ攻撃しても回されてしまう
  全然相手にされない・・・・・・
妖精「あら、楽しそうね二人共 踊っているの?」
有珠(ありす)「いや、そうではなくて・・・」
有珠(ありす)「うーん」
ジョン「お前、人間でないな?」
有珠(ありす)「ええ、宇宙戦争を生きのびることができるように、両親が私をサイボーグ化したんだ 半分くらい」
ジョン「そうか」
有珠(ありす)「サイボーグには本当の強さがわからないか」
ジョン「いいや、サイボーグだったら本当の強さをほしいと思わない」
ジョン「なぜ強さが欲しい」
有珠(ありす)「何も感じなくなりたい」
有珠(ありす)「弱いから慌てふためくのでしょう あなたは落ち着いていて・・・憧れる」
ジョン「君がほしいのは強さではないようだ」
有珠(ありす)「え・・・?」
ジョン「本当は何がほしい?」
有珠(ありす)「あ・・・なた」
有珠(ありす)「物でないから手に入れることはできないことはわかっている」
有珠(ありす)「・・・何でこんなこと口走っちゃったんだろ」
ジョン「・・・いいだろう」
ジョン「手に入れてごらん、有珠くん」
有珠(ありす)「えっ」
  ジョンの雰囲気が女性のように変わっていく
ジョン「抱かれる方も抱く方も慣れている」
  うっすらと笑みをたたえる姿に頭がぼうっとする
有珠(ありす)「バカにするな」
有珠(ありす)「・・・心がほしいんだ」
ジョン「ならば先に寄こすんだ」
有珠(ありす)「ああ」

〇黒
???「やめ・・・ ゆるして・・・」
???「まだだ その口から消えたいだの死にたいだのが出てこなくなるまで」
  とんでもない人に飛び込んでしまった!

〇西洋風の部屋
有珠(ありす)「ああ」
  ・・・私は破滅的な情動を持てなくなった
  根こそぎ溶かされてしまったので
  彼がいない。
  テーブルに書き置きがある
  君に残りの半身を全て渡した
  
  俺はもとの荒野に還る
  
  君は銃なんか捨てて幸せになるべきだ
  
  俺はもう血に塗れすぎている
有珠(ありす)「・・・!!」

〇赤い花のある草原
有珠(ありす)「ジョーーーーーーン!!!! あなたも幸せになるべきだ」
有珠(ありす)「まだ遠くには行ってないんだろ 返事をしてくれ!!!!」
有珠(ありす)「幸せにしてほしいとか幸せにしてあげたいとか思わない ただあなたといたいし一緒にやってみたいことがたくさんあるんだ」
有珠(ありす)「だからあ、・・・」
有珠(ありす)「うっ・・・」
ジョン「・・・」
有珠(ありす)「!!」
ジョン「すまなかった 幸福が恐ろしかったんだ」
有珠(ありす)「私が守る」
ジョン「そうしてもらおうか」
有珠(ありす)「まかせて」
妖精(妖精の加護がありますように)
  おしまい

コメント

  • 「不思議な惑星の有珠」ですね。スチルのイラストとジョンの書き置きがカッコ良すぎた。西部劇だから最後は「ジョーン、カムバーック」(古い)って言うかと思ったけど、言う前に帰ってきちゃった。作者さんの夢女子向けスチームパンクの物語も読んで見たいです。 

  • とても壮大なラブストーリーに私は捉えました。自分のすべてを委ねたい相手に出会うことは、そうそうある事ではないだけに、2人の巡り合いが!

  • 独特の世界観が素晴らしいです!
    もっと イラスト 見たくなりました。
    天野喜孝のような世界観が展開されてるような気がしました😮

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