彼氏の話し

貴志砂印

読切(脚本)

彼氏の話し

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〇大衆居酒屋(物無し)
佐々木「あー。こっちこっち」
松井「あっ」
松井「ごめんね。待ってた?」
佐々木「全然、いま来たところだよー。 あ、何か注文する?」
松井「あー・・・・・・じゃ、生で」
佐々木「りょーかいです!」
佐々木「すみませーん。 生、ひとつーーー!!」
佐々木「それで。どうしたの? 突然、飲みたいーとか。珍しくない?」
松井「・・・・・・あ、うん」
佐々木「えっ? なに?なに?」
松井「あぁ・・・、うん。 取り敢えず、ビールきたら話すね」
店員「おまたせしましたー」
松井「あ。それ、あたしで」
店員「ごゆっくりどうぞ~」
佐々木「それじゃ、カンパーイ」
松井「うん。乾杯」
松井「ふぅ・・・・・・」
佐々木「どうしたの?」
松井「ごめんね・・・・・・。 呼び出しちゃって・・・・・・ しかも、遅れちゃって・・・・・・」
佐々木「ううん。全然」
松井「あのさ」
佐々木「・・・・・・うん。どうした?どうした?」
松井「・・・・・・ふぅ・・・・・・」
佐々木「どうした?」
松井「あのね・・・・・・。 あたしさ。彼氏いるじゃん」
佐々木「あー。うん。 IT企業の人だよね」
松井「そう・・・・・・」
佐々木「・・・・・・・・・どうした?」
松井「浮気・・・・・・されてた」
佐々木「えっ! マジで!?」
松井「しかも・・・・・・」
佐々木「しかも!?」
松井「4年も・・・・・・4年間ずっと・・・・・・」
佐々木「4年も!!!! えっ!?えっ!?えっ!?」
松井「ずっと・・・・・・だったよ・・・・・・」
佐々木「4年って! 付き合い始めてからじゃない? えっ!?えっ!?えっ!?最初から!?」
松井「しかも、あたしだけじゃないの」
佐々木「ええええ!? 他にも相手がいるってこと!?」
松井「・・・・・・うん。 5人も・・・・・・いるんだって・・・・・・」
佐々木「マヂでか! ヤバイな!なんだ、その男! 最低ヤローじゃんか!!」
佐々木「4年も松井ちゃんの事を騙して! しかも、他にも相手がいるだぁ!? ゆるせねーな!! クズ男じゃないか!!」
佐々木「よくも!よくも!! 松井ちゃんの気持ちを踏みにじりやがって! クソ。クズ男に天誅だぁ!」
松井「いや・・・・・・待って、待ってよ」
佐々木「いや、これは待ってらんないよ!!」
松井「違うって。 待ってよ・・・・・・」
佐々木「でも、でも」
松井「追い越さないでよ。 ・・・・・・あたしの気持ち」
佐々木「えっ?」
松井「騙された・・・とか。 クズ男とか・・・・・・。 あたし、まだ、そこまで思ってないから」
松井「少し相談しようってくらいの気持ちだったのに」
佐々木「・・・・・・あ・・・・・・。はやかった?」
松井「はやいよ。 とっても、はやかった」
佐々木「私は、寄り添ってる感じだったけど」
松井「全然。寄り添ってない。 むしろ、先に走ってたよ。 一緒にゴールしようって約束したマラソンみたいな感覚だった」
佐々木「えっ!? そんなに!? ・・・・・・・・・難しいな・・・・・・」
松井「難しくないって。 寄り添ってみてよ・・・・・・」
佐々木「・・・・・・え、うん」
松井「じゃ、もう一回、最初から行くね」
佐々木「最初から!?」
松井「そう。 寄り添った気持ちで。もう一回」
佐々木「ええ・・・・・・うん。 じゃあ・・・・・・」
松井「・・・・・・あのね。 あたし、彼氏いるじゃん・・・・・・」
佐々木「あ。 うん・・・・・・IT系の人だよね」
松井「・・・・・・そう・・・・・・」
佐々木「・・・・・・どうした?」
松井「あのね。 ・・・・・・浮気してたんだ・・・・・・彼氏」
佐々木「浮気」
松井「しかも、4年間も」
佐々木「よ、よ、よ、よよ、4年!」
松井「・・・・・・あー。 ・・・・・・ちょっと違うかな」
佐々木「違うか・・・・・・」
松井「違ったかなぁ」
佐々木「だって、一回聞いてるからね。 かなり、ムリして出た言葉だった」
松井「あー。 よ、よ、よよ、4年! って、トコだよね」
佐々木「ダメだった」
松井「うん。 わざとらしい」
佐々木「寄り添えて―――」
松井「なかったね」
佐々木「・・・・・・うーん。 逆に、寄り添うってどんなだろ?」
松井「あたし、やってみる」
佐々木「やるの?」
松井「うん。 どーぞ・・・・・・」
佐々木「えっと・・・・・・。 あのさ。 わたし、彼氏いるでしょ」
松井「うんうん。覚えてるよ」
佐々木「その、彼氏がさ。 なんか・・・・・・浮気・・・・・・してて」
松井「・・・・・・えっ」
佐々木「しかも、4年間も、浮気してたみたい」
松井「えっ・・・・・・ヤダ。 ・・・・・・こわい・・・・・・」
佐々木「それにね。 私だけじゃなく、5人と浮気してたみたい」
松井「5人・・・・・・こわい。 ・・・・・・こわい。 ・・・・・・・・・こわい」
佐々木「・・・・・・こわいよ」
松井「こわいか・・・・・・」
佐々木「それに、寄り添えて―――」
松井「なかったよね」
松井「ダメだ。 相談、難しいわ」
佐々木「だね」
松井「呑もう」
佐々木「そうしよう。 呑んで、忘れよう」
松井「うん!」
  そして、二人は朝までビールを飲みましたとさ。
  めでたし。
  めでたし―――。

コメント

  • リアルな感じの会話で 、等身大 を感じて良かったです!
    生き生きとした セリフってこんな感じなんでしょうね😀

  • 居酒屋行ったら本当にこういうやり取りに遭遇しそうで、とても情景が浮かんで読みやすかったです!
    それにしても、5人も浮気してる男は最低にも程があります😐

  • 爆発的な笑いじゃなくて、じわじわしみじみと襲ってくる笑いの絶妙な匙加減がいいですね。たまたま居合わせた客として二人の会話を耳にしたら、飲んでるビールを吹き出さないで耐える自信がないです。

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