エピソード6 rain free(脚本)
〇未来の都会
大戦終結後、世界のバランスは変容を遂げた。
────酸性の雨、末期に使われた兵器が影響を与え今現在も、その先の100年後も降り続ける。
・・・・・・
灰色の対酸性レインコートを着付け、路地裏に踏み入れる────
〇入り組んだ路地裏
────ラクム第4街道・路地裏
そこは、陰鬱な空気が漂い露店が開かれていた。
俗に、闇市と呼ぶそれ。
ガヤガヤ────。
くたびれた商人「さぁ、寄った寄った。今日だけだよ」
傷だらけの商人「そこの人、そこの人。これなんかどう?」
露店に並ぶ品々、違法ルートで仕入れ、不衛生・悪質・中毒性があるものが並ぶ。
また、路地を進めば──
荒々しい商人「このドブネズミがっ!!」
品を盗んだのだろう。孤児は痩せ細り、頬がこけ十分に栄養がえられず痩せ細っていた。
それを正反対恰幅のいい肉が付いた男は容赦せず手を上げる。
さらに細い脇道、そこからは死臭と薬物特有の甘い匂いが混じり漂う。
ジャンキー「うへ、ウヘヘヘヘへへへ」
腕に針を刺す。中身は薬物である。過ぎ去ると、後ろから笑い声が聞こえてくる。
懇願者「薬・・・・・・薬をくれぇ」
売人「ええ、いいとも。ここにサインを──」
売人から薬を貰おうと懇願する光景。
インパルス「・・・・・・」
彼はそれらに目を向けなかった、
────いや、直視しなかった。それらは全て自分には関係はないと。
彼は一直線の路地の、奥の奥へと足を進ませる。
インパルス「・・・・・・」
建物、半地下空間に繋がる階段を下る。近くに『CELINE』と汚い字で書かれた看板がぶら下がっていた。
〇シックなバー
インパルス「・・・・・・」
カウンター席に座る。と、マスターが彼の元へとやってくる。
マスター「・・・・・・」
インパルス「カリプタを。・・・・・・酸味を増し」
マスターが軽く頭を下げて引っ込む。
店内はインパルス以外誰もいず。時計の針の音が聞こえるだけ。
インパルス「・・・・・・」
インパルス「・・・・・・はぁ」
紙煙草の入った箱から一本引き抜く。それを咥え、着火し炙り入店口に身体を向ける。
インパルス「・・・・・・よぉ~こそ、俺のお気に入りに」
ぷはぁー、紫煙を吹かし隣にと誘う。
シルクレット「・・・・・・」
インパルス「ついてきてたのか?」
シルクレット「・・・・・・」
インパルス「・・・何処からついてきてた?」
シルクレット「・・・・・・」
シルクレット「・・・路地裏に入って行く所から、です」
インパルス「絡まれなかったか?」
シルクレット「避けながら・・・・・・」
インパルス「・・・・・・ぷはぁ、そうか」
インパルス「此処は、お前みたいなのが来てはならないんだ」
インパルス「大戦終結後、クラムの貧民層が寄せ集まって暮らしている。此処には、寿命間近・廃棄から逃れた・システムの一部オミットされた」
インパルス「新型のお前から見て、旧型のバイオノイド共の掃き溜めさ」
シルクレット「・・・・・・ゴミ箱」
インパルス「そうだ・・・・・・お前を作った奴は此処をそう言う。人攫いを雇って、バイオノイドの人造臓器と生体機器を引き抜いたり、とか」
インパルス「とにもかくにも、此処は汚れ所だ」
カウンターに注文された『カリプタ』が置かれる。
シルクレット「?」
インパルス「こいつはカリプタ、っていうラクム第4街道路地裏の、名物・・・・・・だよな?」
マスター「・・・・・・」
さぁ、とジェスチャーをする。
インパルス「・・・・・・まぁ、まずは嗅いでみろ。これがどういうモノかわかる」
シルクレット「スン、スンスン・・・・・・」
シルクレット「ウゲッ!!」
インパルス「きついか?・・・・・・まぁ、酒と言っちまえばだが」
インパルス「・・・・・・・・・・・・」
乱雑に飲み干したグラスを叩きつけるように置く。
シルクレット「・・・・・・」
インパルス「・・・・・・問題ない。あ"あ"あ"あ"、マスター。────最高だ、ハイになる」
マスターにサムズアップを向ける。
インパルス「これを飲むと、後頭部をゴム棒かプラスチック棒で勢い付けてぶん殴られる感覚になるな」
インパルス「あ"あ"、煙草」
シルクレット「・・・・・・」
インパルス「頼もうと・・・・・・すんな。ガンガンしてきた」
インパルス「お前、酒なんてしらねぇだろ」
インパルス「飲むんなら、・・・・・・っすぅ、ぁはぁー、エタノールを濃くしたのにしろ」
インパルス「・・・・・・あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」
シルクレット「・・・・・・」
インパルス「・・・・・・」
シルクレット「・・・・・・・・・・・・」
シルクレット「・・・・・・落ち着きましたか?」
インパルス「ああ・・・・・・、流れ込んだのが胃を燃やしてるようだ」
インパルス「?」
「あー、インパルス、休暇・・・・・・中だったな」
インパルス「誰だ・・・・・・?」
「おいおい・・・・・・。あー、あんた確か意識朦朧としてたんだったな」
「シルクレットっていうバイオノイドが知ってっと思うが?」
インパルス「・・・・・・」
「ん?・・・・・・通信に。これは・・・・・・」
シルクレット「私です、シルクレットです」
「おぉ、おぉ近くにいたの。何?もしかしてデートだった?」
インパルス「お前は、デート場所が殺人現場なのか?」
「しませんって・・・・・・。えー、俺はロッソ。実はな、あんたらお二人と、“スクワッド”する事になったんで、えー」
「そのー、挨拶をね。入れておこうと」
インパルス「スクワッド?・・・・・・ラクムの外で仕事でも入ったのか?」
「そーぅなのよ」
「以前あんたらが出くわした腐敗、変異バイオノイド。覚えてる?」
インパルス「あー・・・・・・胸の辺りが痛くなってきたな」
シルクレット「────!?まだ痛むのですか!?」
インパルス「覚えてるっていう比喩だ。お前純粋だな」
「かわいい────っと脱線した脱線した、変異バイオノイドだがなスラムエリアから一斉に消えたんだよ」
インパルス「何?あいつらテレポートでもあんのか?」
「いや、地下トンネルって言えばいいか。それを使ってクラムの外に出たっていうこと。しかし────」
インパルス「一斉にトンネルを使うように仕向けたのは、統率者(ヘッド)がそうした。んー、何故だ」
「知らね、だからあんたらと組んで調べろ。それしかわっかんねぇな」
「とりあえず、俺はあんたらの足になって運ぶだけだ」
「────ってな訳で、ロッソ通信ラジオは以上となりますー。次回をお楽しみにぃ」
インパルス「ラジオじゃねぇよ。リスナーでもねぇよ、さっさと切れ」
「ほいほーい」
シルクレット「・・・・・・」
インパルス「・・・・・・っすぅー、帰るぞ。どんな事になってんのやら」
〇研究機関の会議室
インパルス「少尉、お聞きしたい事が────」
クリプト少尉「ああ、分かってる。ロッソから通信は?」
インパルス「大体の事情は」
クリプト少尉「インパルス、以前君は変異バイオノイドをナイフで斬ったな?」
〇荒廃した街
〇研究機関の会議室
インパルス「・・・・・・斬りました。その後何か?」
クリプト少尉「付着した血液を調べたが────」
クリプト少尉「人工血液の劣化速度が思ったより加速し、調べる前にサンプルは消失した」
インパルス「なん・・・・・・」
シルクレット「どれくらいで消失を」
クリプト少尉「報告によればインパルスが所持していたナイフからシミ一つ残さず、使用前の状態だったらしい」
シルクレット「私達が修復してる内にですか?」
クリプト少尉「そうだ。そこで二人はロッソと共に少数でサンプル、腐敗変異バイオノイドの部位を持ち帰ってほしい」
クリプト少尉「場所はある程度絞れてる。本作戦96時間後に決行、それまで整えておくように」
話は益々暗がりの中に向かって…