DAY19:恋なんてしたくない(脚本)
〇レストランの個室
落合はるか「美森?」
三澤梨々花「美森は親友で、里見くんが好きで・・・ でも私全然知らなくて 里見くんの気持ちも── なのに私今日気軽に誘っちゃって」
三澤梨々花「それで美森が探しにきて・・・ もう嫌だって・・・」
落合はるか「待て、まとめる」
落合はるか「美森とお前は親友で、里見も交えて今日ドリームランドに行った」
落合はるか「で、里見に告白されて その現場を里見を好きな美森に見られてケンカになった・・・そんな感じか?」
三澤梨々花「う・・・上杉くんもいたけど・・・っ」
落合はるか「誰だよ、その新キャラ」
落合はるか「まあ、だいたいの事情は把握した それで駅前に座り込んでたのか」
三澤梨々花「いつも一緒にいたのに 私何も知らなくて・・・」
三澤梨々花「美森は私が鈍感だから言えなかったって 私は里見くんの気持ちにも気づいてなかったから」
三澤梨々花「里見くんがやさしいのは私だけじゃなく みんなにだからって、気にも留めないで仲良くしてた」
三澤梨々花「でも美森から本音を言われて―― 私すごく無神経だったんだって思ったら 何も考えられなくなって」
落合はるか「なるほどな その子が我慢の限界に達したわけか」
落合はるか「でもそれなら悪いのはお前じゃなく 里見のアホだろ」
落合はるか「特別な相手にだけじゃなく誰にでもホイホイ愛想振りまいて、距離を考えないからだ」
落合はるか「過去にもそれが原因で勘違いさせて 揉め事になったことが何度もあるくせに 懲りねえヤツ・・・」
落合はるか「それに、里見の気持ちに気づかなかったのは恋愛対象として見てなかったからだろ?」
三澤梨々花「私・・・」
三澤梨々花「今まで誰かを そういう意味で好きになったことがなくて」
三澤梨々花「美森にも恋愛オンチだって言われました だから・・・わからないんです どういう気持ちなのか おかしい・・・ですよね?」
落合はるか「おかしいってことはねえだろ」
三澤梨々花「でもこんなんだから美森を傷つけちゃったし・・・」
三澤梨々花「・・・もう許してくれないかも どうしよう」
落合はるか「諦めんの、早いだろ ちょっとすれ違っただけじゃねえか」
三澤梨々花「ちょっとじゃないです!私たちには・・・」
三澤梨々花「でも、どうしたらいいかわかんない・・・ 謝っても、何を言っても言い訳にしかならないもの」
落合はるか「じゃあこのままでいいのか?」
三澤梨々花「い、嫌・・・!!」
落合はるか「だったら全部試してみろよ 謝るのも、言い訳するのも 落ち込むのはその後でいいだろ」
落合はるか「このままで終わらせたくないなら 自分で動くしかない」
落合はるか「答えは落ちてないし、誰も渡してくれたりしないんだよ」
三澤梨々花「・・・先生、やさしくない」
落合はるか「ウソでもいいなら、やさしくしてやるけど」
落合はるか「そうじゃねえだろ?」
落合はるか「大丈夫だよ 腹いっぱいになれば頭が動くようになるから」
落合はるか「だからとりあえずメシ食え」
三澤梨々花「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
三澤梨々花「・・・・・・・・・・・・・・・うん」
三澤梨々花(やさしいのか、やさしくないのか)
三澤梨々花(全然、わかんない でも・・・)
三澤梨々花(なんでだろう 『大丈夫』って言われて少し、落ち着いた)
紅「あらっ、なーに しんみりしちゃって」
紅「しょうがないわね アタシも混ざってあげるわ♡」
落合はるか「寄り添うのヤメて・・・」
落合はるか「てかそんなヒマあるのかよ 他の客もいるだろ」
紅「大丈夫、ここから先はバータイムだから 簡単なスナックとドリンクの提供だけなの」
紅「アタシもちょっと休憩したいし ね、リリー♡」
三澤梨々花「はっ、はい・・・!」
紅「ありがと♡ で、なんの話??」
落合はるか「別に」
紅「なによぉ、仲間ハズレにする気!?」
紅「あぁっ、もしかして恋愛相談!? ヤダッ!アタシけっこう経験豊富だから いいアドバイスするわよ♡」
落合はるか「いや・・・紅さんの修羅場の話きいても 参考にならないっつーか」
紅「ちょっと!! なんで修羅場って決めつけんのよ!? 失礼しちゃうわ!!」
落合はるか「だって男も女も見境なく・・・」
紅「アァン!? ケンカ売ってんのか!?」
三澤梨々花「ああああの、私のーー 先生には私の相談に乗ってもらってたんです!!」
紅「ユウが? リリーの相談? 人選間違ってなーい?」
紅「それならやっぱりアタシの方が適任よ 女心は女にしかわからないものだし」
落合はるか「あんた女じゃな」
紅「ホホホ、何か言った?」
紅「で? 相談ってなーに? やっぱ恋愛絡み??」
三澤梨々花「その・・・実は・・・」
紅「――ふうん、なるほどね」
紅「なんていうか・・・」
紅「青春♡♡♡♡♡♡♡♡♡ね!!」
紅「でも三角関係でこじれちゃってるわけね それは複雑ねぇ」
紅「それでこの大先生はなんて言ったの?」
三澤梨々花「ええと・・・ 当たって砕けろみたいなアドバイスを」
落合はるか「まとめすぎだろ、オイ」
紅「はぁ!? スポ根じゃないんだから! ほんとに恋愛小説家!? 使えないわー」
紅「友達同士の三角関係はもとに戻すのは なかなか難しいわよねぇ」
三澤梨々花「やっぱり・・・そうなんですかね」
三澤梨々花「私はみんなで一緒にいたいだけなのに 誰かを特別に好きになったら 今まで通りじゃいられないの?」
三澤梨々花「友達との関係が壊れたりしてまで 恋ってするものなの?」
三澤梨々花「そんなの私は嫌 だったら・・・恋なんてしたくない」
紅「あら・・・」
紅「・・・そうね 大事なものはそのままにしておきたいわよね」
紅「でも人を好きになるって アタシは素敵なことだとも思うのよ」
紅「たとえ傷ついて泣くことがあっても それも大切なことなのよ」
紅「自分を幸せにするための努力だからね」
紅「恋って幸せになるためにするものでしょ」
紅「でも必ず叶うわけじゃない それはみんなわかってるの そのお友達も、サミーもね」
紅「でもそれでも気持ちを伝えたのは 壊したいからじゃなくて ちゃんとその人と向き合って、カタチを変えたいからよ」
三澤梨々花「カタチを変える・・・?」
紅「恋愛なら恋人になるとか 友情なら・・・そうね、『本当の友達になる』ため、かしら」
紅「お友達が本音をぶつけてきたのは リリーが嫌いだからじゃないわ」
紅「あなたと本気で向き合って 本当の親友になりたいからよ」
三澤梨々花「あ・・・・・・」
三澤梨々花「私の気持ちがわからない、って言った時 美森・・・悲しそうだった」
三澤梨々花「私、いつも一緒にいればそれが親友だと思ってました」
三澤梨々花「お互いのこと全部知らなくても大丈夫、 笑って楽しく過ごす方が大切だと思って」
紅「自分の気持ち、ちゃんと彼女に伝えてこなかった?」
三澤梨々花「はい・・・ 私のせいで美森はずっと不安とか寂しい思いをしていたのに」
三澤梨々花「私、自分のことしか考えてなかった 今回のことも勝手にショックを受けて落ち込んで」
紅「でも今気づいたじゃない だったら、どうしたらいいのかわかったんじゃないの?」
三澤梨々花「はい、美森に謝ります ちゃんと自分の気持ち話します 私も本当の、今以上の友達になりたいから」
三澤梨々花「当たって砕けてきます!!」
紅「・・・あら? 結局ユウのアドバイス通りになるわけ? なんか納得いかないわねぇ」
紅「まあいいわ リリーが立ち直ったなら」
紅「泣き顔もかわいいけど リリーは笑顔の方がチャーミングよ そっちの方がアタシ好きだわ」
三澤梨々花「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
紅「ん? どうしたの?」
三澤梨々花「いえ・・・ 紅さんて女の人にモテそうだなと思って 一緒にいるとなんだか寄りかかりたくなっちゃうというか」
紅「もー♡リリーったらかわいいんだからぁ いいわよ、いくらでも甘やかしちゃう♡ なんならプライベートでも」
落合はるか「待った!!」
落合はるか「そこまでにして、シャレになんねぇから💦」
落合はるか「お前も距離をとれ! この人バイだって言っただろ 取って喰われるぞ」
紅「人を捕食植物みたいに言わないでよ ほんと失礼極まりないわっ」
紅「いーい?リリー 好きになるならこういう顔だけ男はやめときなさいよ 不幸になるから」
紅「もっと性格のいい男にしなさい 大事なのはハートよ、ハート」
落合はるか「失礼なのはどっちだよ」
三澤梨々花「あはは・・・」
三澤梨々花「でも私・・・ やっぱり一人を特別に好きになるのは 怖いです・・・」
紅「リリー?」
落合はるか「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
紅「でもきっと、いつかなるわよ」
紅「だって、恋は考えてするんじゃないもの 気づいた時にはいつの間にか落ちてるのよ」
紅「それに、そんな不安や恐れをぜーんぶ吹き飛ばしてくれるような人と、今後出会うかもしれないわ♪」
紅「そしたらきっと好きにならずにはいられなくなるわよ ――なんてロマンチックすぎ?」
三澤梨々花「・・・いいえ ステキです、紅さんの前向きなところ ありがとうございます」
紅「フフ、困った時はいつでも言って 相談に乗るから♡」
紅「じゃあそろそろ戻るわね いーい? 笑顔よ、笑顔 クヨクヨ悩んでもお肌に悪いだけなんだから!」
紅「じゃあね~♡」
落合はるか「・・・だいぶ顔色がよくなったな」
三澤梨々花「はい・・・おかげさまで 紅さんて、なんか不思議ですね すごく勇気もらえた気がします」
落合はるか「まあ、あれでも苦労してきた人だしな あの人に相談に乗ってもらいたくて来る客も、この店には多いんだ」
三澤梨々花「・・・あの、先生」
落合はるか「なんだ?」
三澤梨々花「先生にとって、恋愛ってどういうものですか?」
誠実なアドバイスをするはるか先生、魅力的!そして、硬軟織り交ぜての紅さん、さらにステキです!巧みな言葉遣いに心打たれました!
紅さんのお店行きたいです。特製お料理を食べてお話をしたいって心底思いました
紅さん不思議な方… でもすごい心に響くことを言っていて良いキャラだし、こういう言葉を考える兎乃井さんも素敵です!!
兎乃井さんの他の作品でも、言葉選びや言い回しがすごく好きなんです…(イタいファンですみません💦)