太陽と魔獣の子——マーニ——

鶴見能真

月の名を継ぐ者(脚本)

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鶴見能真

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〇雪洞
  北国のとある雪山
ソル「──うーん! 今日も雪山はいい天気ー!」
  ソルは空に向けて両手を伸ばして背伸びをする
ソル「・・・マーニー!」
  彼女は死んだ筈の弟の名を呼ぶ
マーニ「・・・」
  呼ばれて現れるのは美しい毛並みをした白銀の狼だ
ソル「何してたの?」
マーニ「・・・」
鹿「・・・」
  マーニは自分で仕留めた大柄な鹿を運んでくる
ソル「すごーい、マーニが捕まえて来たの?」
マーニ「・・・」
ソル「でもごめんね。”ママ”は動物さん食べられないのー。折角だからマーニ食べてくれる?」
マーニ「・・・」
  マーニは母の編んだ手作りの籠に山程盛られた果物を取り出す
ソル「わー、こんなに沢山! ありがとうマーニ」
マーニ「・・・」
  表情には出さないが、マーニも喜んでいる様だ
ソル「ところでマーニ、パパが何処に行ったか知らない?」
マーニ「──グルルルルル・・・!」
ソル「もう! いくらパパが大好きだからってそんなに怒らなくたっていいのに」
マーニ「グァァ!?」
???「ははは! 相変わらず兄上が嫌いなのだなマーニ?」
ハティ「ようマーニ! 相変わらず白いなー、本当に”マーニ”そっくりだー。あ、ご機嫌様ソル姫」
ソル「あ、ハティ久しぶりー! スコル知らない?」
ハティ「何言ってる? 兄上は10年前に狩りに出て以来迷子で帰って来れないではないか。 わたしも5年程探して来て今帰ったところだ」
ソル「そっかー、スコル方向音痴だもんねー。あと10億年は帰って来れないかな」
ソル「この世界の”太陽”は霊力が強いからわたしの場所わかんないかもねー」
マーニ「・・・」
ハティ「おいおいマーニ、そんなサツ意剥き出しにすんなよー。あんなザコでも腐ってもお前の父だぞー?」
マーニ「・・・」
  マーニはその場を去って行く
ハティ「はっはっはー! まだまだ餓鬼だなー!」
ソル「あらあらー、反抗期かしら? 困ったわねー」
  マーニの仕留めた鹿はハティが責任を持って平らげた

〇雪山
  マーニはしばらく歩いて少し開けた場所に出る
マーニ「・・・」
  マーニは立ち止まるとその場に座り込む
マーニ「ったく不愉快だ・・・!」
  すると彼の姿は狼から人間へと変化する
マーニ「・・・」
  マーニは空腹で腹を鳴らす
マーニ「あーやべ。不愉快で忘れてたが朝飯食い損ねちまった」
???「あれれー、また家出しちゃったのかなー?」
シル「またパパさんと喧嘩したのー、迷子の迷子の子イヌさん?」
  声の主はマーニとは違い狼の耳と尾を生やした少女だ
  彼女はシル。この辺りの秘境に住む幻の種族、人狼族(ウェアウルフ)の少女でマーニとは幼馴染みだ
マーニ「・・・メシ」
シル「ほえ?」
  狼少女のシルはマーニの腹の音を耳にする。
  その上彼は口から唾液を垂らしている
シル「ちょ──ちょっと待って! わたし美味しくないよ」
マーニ「お前じゃ無えよ」
シル「ほえ?」
  マーニの目線の先にはシルの捕えた魚がある
シル「あ、なんだこっちが欲しかったんだー。食べる?」
マーニ「・・・いらね」
  プライド高いマーニは目先の施しを拒否する
シル「もー、また遠慮しちゃってー! いっぱいあるからつべこべ言わずたべなさーい!」
マーニ「──な!?」
  シルは魚を一匹鷲掴みするとマーニの口に突っ込む
マーニ「んぐー──!!」
シル「あれ、そういえばマーニって生のお魚嫌いだっけ?」
マーニ「・・・」
  マーニはぐちゃぐちゃと音を立てた後ごくりと魚を飲み込む
マーニ「・・・ふぅ」
シル「大丈夫?」
マーニ「・・・余計な事しやがって」
シル「素直じゃないなー。つまりありがとうって事でしよ? どういたしまして」
マーニ「・・・」
シル「きゃー──!?」
  マーニはシルを雪の地面に押し倒す
シル「ちょっと、喜び過ぎだってお魚一匹くらいで?」
  そのまま男は少女に襲いかかる
シル「──やんっ!」

〇雪山
シル「もー!」
  マーニに襲われたシルの体は傷一つ無く、乱れた衣服を整える
シル「いくらマーニでもやっていい事と悪い事があるよ! わたしは狼だけど女の子なんだから、乙女の純情を汚すなんて最低!」
マーニ「・・・知るか」
シル「ひっどーい! 男の子なら責任とりなさいよー!」
???「お嬢ー──!!」
シル「どうしたの、そんなに慌てて?」
人狼族A「お、マーニ殿。貴殿も居らしたのですね」
人狼族A「それよりも子供が2人、こちらへ来ませんでしたか?」
シル「ううん、見てないよ」
マーニ「・・・」
  マーニは首を横に張る
人狼族A「そうでしたか・・・。実はウチの子2人が朝から居なくてですね! ”人里”の方へ向かうのを見たという者もいて心配なんです!」
シル「なんですって! ”人里”に!?」
  人狼族の住まう雪山の麓には人間達の住まう街が存在する。
  人狼族は人間の世界では伝説上の生物と認識されており実在は認められていない
  しかし極一部の裏社会や政府上層部などでは奴隷や駆除対象と見られており高値での取引や差別などを受ける場合もある。
  逆に神聖な信仰対象や保護対象、同じ人類と見る者も少数いるがそれは稀な話である
マーニ「・・・」
シル「ニンゲンに見つかったらタダじゃ済まないわ!」
  多くの人狼族は人間をニンゲンと蔑称している。
  シルもかつて人間の悪き行いの数々を目にして来たので比較的嫌っている
シル「──それが本当なら早く助けに行かなきゃ!!」
  シルは狼の姿に変わると街へ向け疾走する
人狼族A「あ、お嬢! わたしも一緒に──」
マーニ「お前は帰ってろ。ガキとクソメスは俺が連れ帰ってやる」
人狼族A「め・・・。マーニ殿、”族長の娘”であられるシルお嬢に何たる無礼を──」
マーニ「──知るかクソ犬共の集落事情なんざ!  付ける気ならテメェぶっコロすぞ!!」
人狼族A「ひいいっ! か、かしこまりましたー──!」
マーニ「さて・・・」
  里へ戻る住民を見届けたマーニは取り出したスマホで何処かへメッセージを送る。
マーニ「ハティ! いるんだろ?」
ハティ「・・・もぐもぐ。何だ、バレてたのか」
  ハティはマーニの仕留めた鹿の生肉を頬張りながら現れる
マーニ「悪趣味な覗き野郎だ」
ハティ「口が悪いぞマーニ。それにおれはお前の叔父だからな、目上の相手は敬えよ?」
マーニ「肉食いながら言う台詞かよ?」
ハティ「早く食わねえと腐っちまうからな。それにおれは魔神の血を引いた悪党だからいいんだよ」
マーニ「おれだってそうだろ?」
ハティ「まあな。でも半分は女神の血だろ?」
マーニ「そいつも元来・・・もういい、後にする。 それより・・・」
ハティ「判ってるぜー。さっきのオス犬追いかけて”半獣共”の様子見てくりゃいいんだろ? 邪魔になるなら軽く間引いてやるからよ?」
マーニ「ああ好きにしろ。俺の邪魔はするなよ?」
ハティ「任せとけ! お前も”人間”と深く関わろうとするなよ? ろくな事にならないからな。?」
マーニ「邪魔するならお前から始末するからな!」
  捨て台詞を放ったマーニはシルとは比較にならないスピードで街へ向かう

〇中東の街
  人狼族の里麓の街
人狼族 弟「はぁっ、はぁっ、はぁっ──!」
チンピラ1「待ちやがれ小僧!」
チンピラ2「悪い様にしねぇからよぉ!」
  人里に降りて来た人狼族の少年が街のチンピラ達に追われている
人狼族 弟「──うわぁ!」
  つまずいた少年は倒れ込んでしまう
チンピラ2「ヒェッヒェッヒェー。アニキ、こいつぁ”人狼”じゃありやせんかー?」
チンピラ1「ヒェッヒェッヒェー! そうだなー、これ捕まえたら大手柄だぜー! 奴隷としても毛皮や剥製にしても大金が手に入る!」
チンピラ1「一気に幹部! いやボスの側近にさえなれるぜー、ヒャッハー!」
チンピラ2「そりゃいいですねー!」
「ヒャーハハハハハハハ・・・」
人狼族 弟「うぅ・・・こわいよー。おねえちゃん、助けておとうちゃん・・・!」
チンピラ2「こわくないよー、にんげん様だじょー」
チンピラ1「きみは丁重に、大金で売ってあげるからねー」
人狼族 弟「うぅっ・・・」
  少年は今にも泣き出しそうでいる
チンピラ2「──うぎゃあああー!」
チンピラ1「──どうした!?」
シル「グルルルルル・・・」
  突如現れたシルによりチンピラの一人が倒される
チンピラ1「な、──なんだよこの犬ッコロ! 人間様に文句でもあんのか!?」
人狼族 弟「ぐすん、・・・シルおねえちゃん!」
シル「グルルルルル・・・!」
チンピラ1「あぁ? この人狼(ガキ)の仲間か? だったら大手柄だぜ! 狼の中でもそれは美しい銀の狼はさらに高値が付くからなぁ!」
シル「──ガアアー!」
  シルはもう1人のチンピラに襲いかかる
チンピラ1「この! 犬ッコロ風情が!」
  チンピラはシルの噛みつきを間一髪で躱すと持っているナイフで応戦する
チンピラ1「この! ──すばしっこい奴め!」
シル「──ガウ!」
チンピラ1「──痛ってー!!」
  シルの爪による引っ掻きがチンピラに当たる
シル「グルルルルル・・・!」
チンピラ1「ま──、待て! お前、人狼だよな? じゃあ言葉判るよな?」
チンピラ1「お、おれを始末しようなんて考えねぇ方がいいぞ? おれはズローファミリーの構成員だ、おれに手を出せばボスが黙ってないぜ?」
チンピラ1「もしそんな事したら、ボスが武装したファミリー総出で報復するからな! そうなりゃお前ら人狼は皆殺しだぜ?」
シル「・・・」
チンピラ1「わ・・・判ったら大人しく、お前も一緒に捕まった方がいいぜ?」
シル「・・・哀れな人」
チンピラ1「へ──?」
チンピラ1「ぎゃあああああー!」
  シルはチンピラを始末する
人狼族 弟「うぅ・・・シルお姉ちゃーん!」
  少年は泣きながらシルに抱きつく
シル「もう大丈夫よ。それよりもう一人の子──」
シル「きゃ──!」
  突如の銃撃によりシルは足を負傷してしまう
人狼族 弟「──おねえちゃん!?」
シル「い・・・っ!?」
  シルは痛みに耐えかねて人型へと変わる。
  銃弾は足を貫通し
ギャングの馬鹿息子「いよっしゃ、ヒット! ありゃ? 毛むくじゃらな害獣を撃った筈だが人間の子供(ガキ)を撃っちまったか」
シル「・・・」
人狼族 弟「おねえちゃん・・・」
ギャングの馬鹿息子「しかもこいつら、獣の耳や尻尾なんか付けていやがる」
ギャングの馬鹿息子「ニッポンじゃあ獣のみならず戦艦や武器に偉人や神まで女のガキにするらしいが・・・」
ギャングの馬鹿息子「そんな事はどうでもいいな。 しかしどうしたものか、女だと判っていたら無傷で捕えておれ様の”物”にして可愛がってやったのに」
ギャングの馬鹿息子「ま、鬱憤晴らしにはまだ使えるな。殴るなりヤるなり切り刻むなりな」
チンピラ3「アニキ! こいつぁ”人狼(ウェアウルフ)”でっせ!」
  数多く引き連れられたチンピラの一人が説明する
ギャングの馬鹿息子「・・・ウェアウルフ?」
シル「・・・」
チンピラ3「ええ、そうです! 狼と人間の二つの姿を持つ伝説上の種族でっせ!」
ギャングの馬鹿息子「伝説って?」
シル「あぁ・・・っ」
チンピラ3「えぇアニキ! わかりやすく言うと狼男っすよ」
ギャングの馬鹿息子「コイツは女だぞ?」
シル「・・・」
チンピラ3「つまり狼男のメス、狼女っすかね?」
ギャングの馬鹿息子「つまり珍種か。高く売れそうだな?」
シル「・・・ (こいつもか。ヒトを物みたいに・・・。これだからニンゲンって嫌い!)」
チンピラ3「ええ! おれらの業界じゃあオスの大人で5千万、ガキで2千万、赤子で8百万。メスなら大人で1億、ガキで10億、赤子で5千万」
ギャングの馬鹿息子「へぇ・・・」
シル「・・・(クズね・・・)」
チンピラ3「年寄りだと安くもなるらしいでっせ。他は毛の色やリーダーみたいな特別な役職の個体は高く売れるでっせ!」
チンピラ3「金や銀なんかは相場の5倍はするって噂でっせー!」
ギャングの馬鹿息子「つまりコイツらだと、銀毛のメスガキで50億とオスのガキで2千万か。傷物だから価値は下がるだろうが、まあ後で考えるか」
ギャングの馬鹿息子「やっぱ処女だと価値上がるか?」
チンピラ3「えぇ、そりゃもちろん! 処女を好むマニアは多いでっすからねぇ! 付加価値ありやすよ!」
ギャングの馬鹿息子「まあコイツをどうするかはおれの勝手だ。売るにしろその前にたっぷり楽しませてもらうからな?」
チンピラ3「さすがアニキ! それでこそ次期ボスっすね!」
シル「・・・」
人狼族 弟「うぅっ・・・!!」
シル「・・・(どうにかこの子だけでも逃がしたいけど)」
「ヒャッハー! ヒャーハハハハハハハ! ヒヤホホホー!」
  チンピラの数は確認出来るだけで十数人はいる
シル「・・・(わたしのこの”傷”でこの子を無傷で帰すのは難しいわね。こんな事なら誰か応援を頼むんだったわ)」
シル「(里の人が応援呼ぶのを信じるか。いえ、不確かなものは信用出来ないわ)」
シル「(それならマーニは・・・。駄目ね、あの子わたし達に関心無いもの、さっきのより確率が低いわ)」
人狼族 弟「・・・ブルブル!」
シル「(怯えているわ、当然ね)」
ギャングの馬鹿息子「さて、暴れ出さねえ様に縛らねえとな」
シル「だ、・・・大丈夫よ。おねえちゃんが付いてるからね」
人狼族 弟「・・・うん!」
シル「・・・(さて、ここから逃げるにはまずここから山へ向かう為にニンゲンと街中を突っ切って・・・)」
???「おい!?」
シル「──!?」
人狼族 弟「・・・?」
ギャングの馬鹿息子「あん?」
  人混みから聞き覚えのある声がする
チンピラ6「なんだテメェ? おれらがズローファミリーでこの方がボスの御曹司だと知ってんのか!?」
チンピラ6「ぶぎゃーーー!」
???「知るか」
ギャングの馬鹿息子「なんだ貴様は? 今おれ達取り込み中なんだ、ガキが出しゃ張るんじゃ無えよ、死ぬぞ?」
シル「・・・!」
シル「マー・・・ニ?」
マーニ「ここは俺の領地(テリトリー)だ。商売(ビジネス)ならしっかり所場代払って貰おうか?」
ギャングの馬鹿息子「へー、金払えば解決すんのか。幾ら払えばいい?」
マーニ「前金で15・・・」
ギャングの馬鹿息子「15万か! 随分と安いな!?」
マーニ「──兆」
ギャングの馬鹿息子「・・・は?()」
ギャングの馬鹿息子「おいおい笑わせてくれるじゃねえか小僧! 商売するのに国家予算払えって?」
マーニ「あくまで前金だ。商売するなら別途徴収する」
マーニ「暴行100万、殺し1000万、拉致800万、器物破壊70万、薬(ヤク)7000万、賭博・・・」
ギャングの馬鹿息子「──ふざけんじゃ無えぞガキ! ギャング(おれ様)舐めてると一族全員に醜態と惨殺加えるぞこら!?」
チンピラ7「ア──、アニキ! そいつぁヤベーですよ!?」
ギャングの馬鹿息子「あ? 何がだ、ただの正義感の強え哀れなガキだろ?」
チンピラ7「違いやすぜアニキ! そいつぁ・・・」
チンピラ7「──”ダークファミリー”の若頭、”銀狼のカイト”でっせ!!」
ギャングの馬鹿息子「ダ、ダークファミリーだと!? 世界中の裏社会を掌握する世界最大のギャング組織、この世の闇の支配者ダークファミリー・・・」
チンピラ7「そうでっせアニキ!!」
マーニ「・・・判ったら、さっさと消えろ」
ギャングの馬鹿息子「わ、判りました・・・。この度は貴殿らの領内で勝手を働き申し訳ありませんでした! 失礼します!」
ギャングの馬鹿息子「おい! ズラかるぞお前ら!」
「へいっ! アニキ!」
マーニ「・・・」
  マーニは何処かへメッセージを送る
ギャングの馬鹿息子「──ったく! なんでこのおれ様があんなガキ相手に下手に出なきゃ行けねぇんだよ!」
チンピラ5「あ、アニキ! 声がデケェ! 聞こえますよ!?」
ギャングの馬鹿息子「知るか! おれはパパの息子で次期ボスだ!」
ギャングの馬鹿息子「こうなったらパパに頼んで金と戦力を注ぎ込んでダークファミリーなんてぶっ潰してやる!」
チンピラ7「そ、そりゃ流石に無謀でっせ・・・」
ギャングの馬鹿息子「分かってねぇな・・・。デケェ組織にはそれ相応に”敵”がいるもんなんだよ。 そいつ等をぶつけて消耗させれば・・・」
ギャングの馬鹿息子「ダークファミリーも恐るるに足りねえんだよ?」
チンピラ5「そう上手くいきやすかね・・・」
チンピラ7「ギャーーーー!」
ギャングの馬鹿息子「おい、どうした! 何処から撃たれた!?」
チンピラ5「わかりやせん! アニキ、急いで車に──」
チンピラ5「ギャーーーー!」
ギャングの馬鹿息子「おい──!?」
「ギャー! ウギャー! イギャー! ウォギャー! ギイイイヤーーー!」
ギャングの馬鹿息子「なんだよ、いったい何が起きてる!?」
ギャングの馬鹿息子「うっ・・・」
  チンピラ達とギャングの馬鹿息子は謎の狙撃により倒れる
マーニ「やっと消えたか。・・・”あの世”に」
  マーニは携帯に向けて語りかける
???「手応え無くてつまらんかったぞ?」
  通話相手が応える

〇中東の街
  街の屋根の上
ヴェルデ「フン! 手応えの無い連中だった」
  サイボーグの様な出立ちの男は狙撃銃を担ぐ
マーニ「『ご苦労だったな。帰っていいぞ』」
ヴェルデ「まあ、悲鳴はそこそこ唆られたな」
マーニ「『それは良かったな』」
  男は愉悦に浸る表情を見せる

〇中東の街
ヴェルデ「まあ、悲鳴はそこそこ唆られたな・・・。ヒーッヒヒヒ・・・」
マーニ「それは良かったな」
  電話を切る
シル「助けてくれてありがとう、マーニ!」
人狼族 弟「ありがとう、おにいちゃん!」
マーニ「・・・用が済んだらさっさと帰れ」
シル「あ──でも確か!?」
人狼族 弟「そうだ! 姉ちゃんがおれを庇ってさっきの奴らに──」
???「おーい!」
人狼族 姉「良かったー! お前無事だったのね!?」
人狼族 弟「姉ちゃんー!!」
シル「良かった! 君も無事だったんだね」
人狼族 姉「シルおねえちゃん! ごめんなさい! わたしが人間の街を見に行こうって弟を誘い出しちゃって」
人狼族 弟「ち──違うよ! ぼくが人間の街を見た──」
人狼族 姉「──しー!」
人狼族 弟「モゴモゴモゴ!?」
シル「・・・そっかそっかー。 わかった! 今回はわたしも一緒に謝ってあげる!」
マーニ「お前ら次来たらぶっ殺すぞ」
「──きゃい!!」
マーニ「お前もな」
シル「でもわたしがいなくなったら”八つ当たり”出来ないよ?」
マーニ「・・・首輪繋いで檻に入れてやろうか?」
シル「やーん! マーニのけだものー。 マーニも男の子だもんね」
シル「それはそうと、わたしはこの子達連れて帰るね!」
マーニ「おう。さっさと行け」
シル「はーい!」
  シルは子供達を連れて山の方へ去って行く
ダーク「──よっ! ”ボス”。お勤めご苦労様」
  複数の黒服を連れた青年が現れる
マーニ「ご苦労だったな」
ダーク「ああ。下級(カス)ギャングに攫われてた子供はちゃんと助けてやったぜ。お前もよくボスとしての面子を立ててくれたな?」
マーニ「俺の領地(テリトリー)を守っただけだ。 人間と人狼は交わるべきじゃ無え」
ダーク「そうだな、ボスの意向ならおれ等は従うだけだ。なあ”レアン”」
ヴェルデ「おれはもっとカス共をコロし尽くしたいな! なぁ、一緒に殺戮を楽しもうぜ?」
マーニ「ザコを潰しても退屈なだけだ」
ダーク「だがお前より強い奴なんてこの世に居ないだろ?」
マーニ「・・・」
人狼族 弟「怖かったー。マーにぃ本当にぼく達をコロしそうな目だったよ」
人狼族 姉「おとな達が話してたけど、マーにぃは子供の頃その時の族長だったシルねぇのおじいちゃんや強くて怖いおとなの人狼族を」
人狼族 姉「全員倒して食べちゃったって、本当なのかな?」
シル「うーん。どうだろうね? 族長(お母様)はその話はしちゃダメだって言ってたけど・・・」
人狼族 弟「やっぱりそうだったら、強い奴が族長になる人狼族の次の族長はマーにぃになるのかな!?」
人狼族 姉「バカ! マーにぃは元々他所から来たのよ! そう、すんなりとみんなに認められる訳ないわ!」
人狼族 弟「でもでも、里のおとな達も族長達も、他の子供達だってマーにぃの事大好きだし、いちばん強いから族長になっても良いと思うよ!」

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  • 人・魔獣・神などが交錯する相関図と時空を超えた壮大な世界観に読者もついていくのに必死ですが、それぞれのキャラクター造形が魅力的で読み応えがありました。途中でチラッと漏れてきた「カタカナ変換面倒だな…」というメタな心の声が…ww

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