#4 インバウンド(脚本)
〇大衆居酒屋(物無し)
土曜の営業が終わった居酒屋「渋谷愛」。バイトのノンとタケが清掃中。
ノン「はいこれ、日曜食堂分 卵と豆腐入ってっからぶつけんなよ」
タケ「AI入れましょうよ そもそも、勘で仕入れるから余るんで」
タケ「AIに注文予想させて、仕入れの無駄削減! このままじゃ、食品ロスっすよ」
ノン「ロス出さないために 日曜食堂に寄付してんだろ」
タケ「寄付すんなら、オレに寄付して下さいよぅ」
ノン「日曜食堂のお客は三食喰ってるお前とは違うの。困った時はお互い様、向こう三軒──」
ノン(・・って、無視かー)
ノン「あと水回りか」
ノン「はいはい、ちょっとお待ちを・・」
ノン「(電話)はい、渋谷愛です」
レオ「(電話)Hi, can I make a reservation?」
ノン「はぃ?」
レオ「at 6:00 on Sunday」
ノン「サンデー?(日曜か?)」
レオ「イヤー、アッㇳ シックス フォー トゥエンティ ピーポー ツモロー」
ノン「いやー・・(ちょっとワカんねーなー)」
レオ「グレイㇳ! マイ ネーミズ レオ」
ノン「レオ?」
レオ「ヤッ、シーユー ツモロー!(切れる)」
ノン「え、・・切れた」
ノン(ツモロー・・?? 麻雀じゃねえよな)
タケ「日曜食堂、置いてきましたー」
ノン「な、お前、英語とか、どーよ」
タケ「は?」
ノン「サンデーって、日曜だよな」
タケ「ま、そんくらいならわかりますけど」
ノン「・・・(微妙)」
タケ「なんスか、先輩。ナンかあったんすか?」
ノン「や、別に」
タケ「明日出たらダメっすよ。ウチも働き方改革 日曜は休みって、店長宣言でてますから」
ノン「店長、明日は親戚の法事で泊まりだ 親戚付き合い大事にする人だから──」
タケ「その話来週でいいっスか? じゃ、お先しまーす」
ノン「おぅ、お疲れ」
〇大衆居酒屋(物無し)
ノン(店長、日曜に出ちゃってすんません!)
ノン(トイレだけ、昨日できなかったんで 掃除終わったら、すぐあがります)
ノン「はいはい、ちょっとお待ちを・・」
ノン「(電話)はい、渋谷愛です」
添乗員「(電話)あ、渋谷愛さんですか? 今日の6時に予約してる者ですが・・」
ノン「あー、すいません、日曜は定休日なんで」
添乗員「あれ、昨日予約させて貰ったと思うんですが あの、レオって者から」
ノン「レオさん?・・(あっ!?)」
添乗員「今、京都なんですが 東京に着くのが6時過ぎになりそうなんです」
添乗員「大変申し訳ないんですが 7時からに遅らせてもらえませんか?」
ノン「・・・(サンデー)」
添乗員「人数も多くてホントご迷惑おかけします 明日帰国で、今日が最後の夜なんで」
ノン「人数って・・ あの、何名ほど?」
添乗員「20人です あれ、お伝えしたって言ってましたが」
ノン「・・・(固まる)」
添乗員「あ、バス来たんですいません とにかく連れていきますんで」
添乗員「ホント助かります。では後ほど(切れる)」
ノン「・・・どうする、オレ(汗) 落ち着け、どうするオレ、オレ、レオ・・」
ノン「あれ、予約の電話だったんだ でもオレ、何も言ってないよな、いいとか」
ノン「なんで来るんだよ・・でも来るのか 20人、7時に・・ダメだ、考えられねー」
ノン「店長! 店長にホウレンソウ・・ あ、今日法事で福岡だ」
ノン「どうする、オレ・・ タケだ、タケに電話だ!!」
ノン(出ろ、タケ・・何やってんだ ケータイ持ってんだろ、待たせんな!)
ノン(タケ、出ろよ!・・ あ、働き方改革⁈ もしや日曜は仕事の番号スルーか・・)
ノン(タケ、出てくれ、頼む! タケちゃん・・ ケータイ見ろ・・ タケ、タケー!!)
タケ「・・あ、先輩。なんスか?」
ノン「タケ・・(泣)」
タケ「え、先輩?・・もしもーし?」
〇大衆居酒屋(物無し)
タケ「そもそも20人って この店に入んないじゃないっすか」
ノン「・・・(俯く)」
タケ「その添乗員のケータイわかんないの キツいっすね」
ノン「切れちゃったんだ・・(意気消沈)」
タケ「やっぱムリっすよ。来たら丁重にお断りして他の店に行ってもらって」
ノン「どこも開けてねーんだよ」
タケ「ウチだって日曜は休みですから」
ノン「やってる店も20人はムリだって断られた 今日の今日で、予算もわかんねーし」
タケ「・・ま、そっすよね」
ノン「予約の客帰すなんて、店の名前に傷がつく 店長に顔向けできねー」
タケ「謝るっかないっすよ。店長だってきっと・・」
ノン「タケ(タケを見る)」
タケ(悪い予感しかしないんですが・・)
ノン「オレと死んでくれ」
タケ「あのー、先輩、とりま落ち着きましょうよ」
タケ(こういうのは何ハラだ? 心中ハラ・・?)
ノン「オレ、やるわ。こうなったらやるっきゃない オレらで乗り切る。 死ぬ気でやりぬく!」
タケ「いやいや、ここはまず冷静になりましょうよ」
タケ「大体20人って、この店のキャパ 完全に超えてますし」
ノン「マイを投入する」
タケ(マイちゃん・・!)
ノン「電話するわ」
タケ「ヘイッ!!」
〇大衆居酒屋(物無し)
マイ「そのレオってナニモノ? もー、超最悪なんですけど、日曜に呼び出しって」
タケ「英語で予約の電話、あったらしくて」
マイ「またカッコつけて、わかんないのに「イヤー」とか言ったんじゃないの?」
マイ「前にママと3人でレストラン行った時 肉か魚か一つ選ぶのに」
マイ「どっちもイエスって言って、二つ来た 英語ってだけでテンパる」
タケ「いや、日本語しか喋ってないって 本人断言してました」
マイ「もー、その言った言わないやめてよ ホントアホ」
タケ「テーブル、こんな感じでいいっスか」
マイ「ん、あとそれは外に出して 立ち飲みのスタンドにするから」
タケ「さすがマイちゃん、センスヤバいっす」
マイ「文化祭でメイド立ち呑みやってたから」
タケ「マイちゃんもロリータとか?」
マイ「ゴスロリ」
タケ(ズキっ❣)
マイ「あ、そこの土瓶とウチワはディスプレイ用 外人ウケ」
タケ「ヘイ!」
マイ「ケータイは? アプリダウンロードした?」
タケ「バッチリです!」
マイ「あとはノンの料理か」
タケ「チューリップ揚げまくるって言ってました」
マイ「メニューは絞った方がいいね 予算聞いて、おまかせってことで」
タケ「あ、あれじゃないっすか? あの軍団、超喰いそうだな。肉足りんのか」
〇大衆居酒屋
添乗員「遅れてすいませーん!」
マイ「今日は貸切りってことで コンセプトは「渋谷ラブ 居酒屋ナイト」」
レオ「ワンダホー!」
タケ「あの、皆さんはどちらのお国から?」
添乗員「チェコです」
タケ「あ、チェコ・・(スマホで検索) チェコ語、あった。オッケー!」
タケ「プロシーム プリテッサム (こちらへおいで下さい)」
添乗員「いやぁ、ホント有難うございました。チェコ語での接客なんて初めてで、皆感激です」
タケ「自動翻訳なんで、スマホがあれば 何語でも楽勝なんで」
添乗員「マイさんのアニソンや声優さんのモノマネも、素晴らしいって感動してます」
添乗員「リアルジャパニーズアニメだって」
マイ「たまたまそういう学校に行ってるんで 全然大したことないです」
添乗員「日本最後の夜にこんなに盛り上げて頂いて 本当に有難うございました」
添乗員「おかげ様で最高の日本の思い出ができました」
マイ「はー、帰ったー。マジ疲労 あれ、ノンは?」
タケ「厨房で魂抜けてます」
マイ「だよねー あ、明日、日曜食堂にテーブル返しといて」
タケ「かしこまりっ!」
マイ「じゃ、お疲れ」
タケ「クー マイちゃんはいつもクールビューティー」
タケ「先輩、皆さん帰りましたよ お疲れ様でした!!」
ノン「やっぱ、無謀だったな、当日20人は」
タケ「なに言ってんすか。オレたち3人でやり切ったんすよ。お客さんも超喜んでくれて」
ノン「・・(タケを見る)」
タケ「熱い思いがあれば、仲間がいれば なんだって乗り越えられる!」
タケ「オレたちは一人じゃない!」
ノン「お前、ナンか変わったか?」
ノン「それって、オレの台詞だよな」
前からできる子だとは思っていたけど、マイちゃんの肝のすわり具合がすごいなあ。タケも惚れ直したみたいですね。「メイド立ち呑み」というパワーワードにはくらっとしたけど、マイちゃんはゴスロリも似合いそう。
ただでさえ日常で突然英語で話しかけられたらテンパってしまうのに、電話なんてもっと何言ってるかわからなさそうで、私も訳がわからないまま切ってしまいそうです😂
でも無事に乗り越えられて良かったです!