平和のために戦いました(改)

 楔菜

平和を守るって、犯罪なのでしょうか?(脚本)

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  「本法廷は、一般宅への
  住居不法侵入、金品の強奪、
  ならびに・・・」
  「殺人、等々ついて問うものである・・・」
  「被告人、前へ!」

〇法廷
裁判長「被告人・・・ 名前と職業を・・・」
元・勇者容疑者「えっと・・・ つい最近まで、某RPGの勇者やってました・・・」
元・勇者容疑者「名前は、その当時はマリサって名前でした・・・」
裁判長「今は名前が違うのですか?」
元・勇者容疑者「好きに名前付けられるゲームだったので、 その当時は、プレイヤーのサトシ君がが・・・」
元・勇者容疑者「まあ・・・ 好きなキャラクターの名前付けたみたいです・・・」
裁判長「で、今はもうないと?」
元・勇者容疑者「その子、もうゲーム飽きたし〜、もう売っちゃえって事になって・・・ 今は陳列棚に並んでます・・・」
裁判長「そうですか・・・ では、本法廷では、勇者被告としましょう」
元・勇者容疑者「もう・・・好きに呼んでください・・・」

〇法廷
裁判長「では、容疑について、1つずつ審理していきましょう・・・」
裁判長「まずは、住居不法侵入、及び窃盗について・・・ 検察官、お願いします」
検察官「たくさんあるので、端的に申し上げます」
検察官「勇者被告は一月前、スタート地点から、徒歩50歩地点にある村の、当時炭鉱で働く男性家族宅に侵入・・・」
検察官「現金100Gと、護身用に用意してあった銅の鎧を持ち逃げ逃走しました」
検察官「他にも余罪は、計96件、いずれも手際良い犯行で行われてます」
元・勇者容疑者「ちょっと待ってください!! 私は、ただ取れという命令を聞いただけなんです!!」
検察官「命令されれば、人の物勝手に取ってもいいのですか? しかも現金や装備品は、あなたの持ち物になってるじゃないですか!?」
元・勇者容疑者「でも・・・ 取れる場所には、取るってアイコンが出て・・・ ボタン押すだけ・・・」
検察官「そこは、あなたがちゃんと「犯罪ですよ!」 と、教えてあげないと! ちゃんと証拠も残ってるんですよ!!」
元・勇者容疑者「マジですか・・・」
裁判長「では、証拠品の提示をお願いします」
検察官「こちらに犯行の一部始終が映っています・・・」
元・勇者容疑者「それって・・・ サトシ君の配信画面・・・」
裁判長「では、拝見しましょう・・・」

検察官「まずはこのシーンから・・・ 10:12辺りから見てみましょう・・・」
裁判長「ほう・・・ なんの躊躇もなく勝手に家に侵入してますな・・・」
検察官「ここです!! 「現金100G入手しました」 と、キッパリ明記されてます!! そして持ち物欄の横の所持金の所・・・」
裁判長「確かに100G増えてますな・・・」
検察官「しかも 「たった100Gかよ・・・」 という暴言を吐いてます・・・」
元・勇者容疑者「ちょっと待ってよ〜・・・ それサトシ君のセリフ・・・」
検察官「さらにここです!! 宝箱から鎧を入手してます!! この後、すぐに逃亡・・・」
裁判長「逃亡後にちゃんと自分で装備してますね・・・」
元・勇者容疑者「だから〜!! 命令されたの!!」

〇法廷
検察官「これでも、あなたは無罪だと言うのですか?」
元・勇者容疑者「命令なんだって・・・」
検察官「じゃあ、あなたは死ねと命令されれば、死ぬことができるのですか?」
元・勇者容疑者「それは・・・ 死んでも、復活の呪文で生き返りますけど・・・」
検察官「でも、死ぬのは嫌なんでしょ? なんて身勝手な・・・」
元・勇者容疑者「でも、私は悪くありません!!」
検察官「この後、この家族がどうなったか知ってますか?」
元・勇者容疑者「し、知りません・・・」
検察官「全財産を持ち逃げされ、途方に暮れた父親は蒸発・・・ 母と一人娘は、食べ物に困り、そのまま布団の上で餓死・・・」
検察官「蒸発した父は、鎧を盗まれた事により、弱い防備のまま、路上でスライムと遭遇・・・」
検察官「全身を強く打ち瀕死に・・・ 駆けつけた憲兵に搬送され、病院で死亡が確認された・・・」
元・勇者容疑者「そんな・・・」
検察官「それでも、あなたは罪を認められないのですか!!」
元・勇者容疑者「ごめんなさい・・・ 私が悪かったです・・・」
裁判長「やっと罪を認めましたね・・・ この調子で残り96件も観ていきましょう・・・」
元・勇者容疑者「ま、マジですか・・・」

  それから15時間後・・・
検察官「ここです!! 明らかにお金持ちの家に侵入してます・・・」
裁判長「これは明らかに、金目の物を狙ってますな・・・」
元・勇者容疑者「だ〜か〜ら〜・・・ もう好きにして・・・」
検察官「隠し階段発見して喜んでます・・・ 「わーい、やったぜ!!」と・・・」
元・勇者容疑者「それサトシ君・・・」
裁判長「宝箱いっぱい漁ってますな・・・」
検察官「ここです!! ものすごく高価な物発見して喜んでますね・・・ 「最強の剣発見〜!!」って・・・」
裁判長「またもや、それを装備しましたな・・・」
検察官「完全に手慣れた犯行ですね・・・」
元・勇者容疑者「サトシ君が操作に慣れただけだろうが・・・」

〇法廷
検察官「以上、97件目についてですが・・・」
元・勇者容疑者「はいはい・・・ 私が悪いんです! 認めま〜す!」
裁判長「反省の色が全く見えませんな・・・」
元・勇者容疑者「そりゃこんだけ観てりゃ〜ね〜・・・」
検察官「これは、完全に極悪人の態度ですね・・・」
元・勇者容疑者「そりゃ、そうなるよ・・・」
裁判長「誠に残念ですが・・・ 審理を続けましょう・・・」
元・勇者容疑者「まだやるのかよ・・・」
裁判長「次は殺人及び動物虐待についてですが・・・」
検察官「それについては・・・ お金目当ての殺人、虐待、死体遺棄など・・・ 数えきれないくらいあります・・・」
元・勇者容疑者「マ、マジですか・・・」
裁判長「では証拠の提示をお願いします・・・」
検察官「かしこまりました・・・」
元・勇者容疑者「また出たよ・・・」

検察官「まずは冒頭から・・・」
元・勇者容疑者「ここまで来ると・・・ サトシ君も殺したくなるな・・・」
検察官「被告は一月前、近所の村へ移動中、遭遇したスライムに自ら戦闘を仕掛け殺害・・・ 金品1Gを奪い逃走した罪で・・・」
元・勇者容疑者「ちょっと待ちなさいよ!! スライムはモンスターだろうが!!」
裁判長「いいや・・・ 自然界で生きてる物は全て生命があるので、この場合は動物です・・・」
検察官「では、あなたは・・・ 道端で遭遇した生き物なら、犬だろうが猫だろうがカルガモだろうが・・・」
検察官「全てモンスターだと言うのですか!!」
元・勇者容疑者「それとこれとは・・・ 全く違うだろ・・・」
裁判長「いいえ、その考え却下します!!」
元・勇者容疑者「マジですか・・・」
検察官「何もしてないスライムに対し、自ら斬り掛かってます!!」
元・勇者容疑者「それは・・・ システムの都合上、先に斬りかかれば、有利に戦闘できると言うか・・・」
裁判長「完全に殺害目的じゃないですか!! なんとひどい・・・」
元・勇者容疑者「そういうもんなんだよ・・・」
  それから1週間後の昼・・・

〇法廷
検察官「以上、全24876件の犯罪を観てきましたが・・・」
元・勇者容疑者「そりゃ・・・ それ位、殺してるかもね・・・」
裁判長「全て、残忍極まりない犯行でしたな・・・ 中には印象的なのもありましたな・・・」
検察官「金品の強奪の為に、見張り役・・・当時27歳を後ろから殺害し、所持金10Gや装備品の鎧をわざわざ脱がせて強奪・・・」
元・勇者容疑者「それは・・・ 城奪還作戦の時のことか?」
検察官「彼には交際5年になる彼女がいて、もうすぐ結婚予定だったのに・・・」
元・勇者容疑者「私が、幸せ奪ったとでも・・・?」
検察官「ラスボスの前に殺された、当時3127歳のラスボスの愛人を・・・」
検察官「私は、あの人の事をこれからも愛し続けます・・・ あなたがここを去らないのであれば、こちらにもそれなりの覚悟が・・・」
検察官「と、愛する人を守るため、警告してくれたのにも関わらず、睡眠薬を使っての、惨殺・・・」
元・勇者容疑者「それって・・・ たまたま最後に睡眠魔法効いちゃっただけだよ・・・」
裁判長「数々の幸せを踏みにじって、自分の快楽のためだけに・・・ 何とひどい話だ・・・」
元・勇者容疑者「サトシ君に言いなさいよ・・・」

〇法廷
検察官「検察側側は以上です」
裁判長「非常に長かったですが・・・ お疲れ様でした・・・」
裁判長「流石に1週間ぶっ通しで、裁判が行われたので・・・」
裁判長「弁護士による反対尋問は、なしという事で!!」
元・勇者容疑者「なんだそりゃ!? 少しでも罪を軽く・・・」
裁判長「いくら弁護してみても・・・」
裁判長「1個2個罪が軽くなっても、刑は変わりませんよ・・・」
元・勇者容疑者「そ、そうだけどさ・・・」
裁判長「勇者被告には 死刑!!」
元・勇者容疑者「私は悪くな〜い!! 死刑にするならサトシにしやがれ〜!!」

「サトシのばかやろーーーー・・・!!」

  「本法廷は、一般宅への
  住居不法侵入、金品の強奪、
  ならびに・・・」
  「殺人、等々ついて問うものである・・・」
  「被告人、前へ!」

コメント

  • おもしろい視点の作品でした。
    たしかに泥棒まがいのことはやってるゲーム多いですよね。笑
    でも、それはプレイヤーに課せられる罪なのでは?と、勇者じゃなくても思いました!

  • RPGの世界で当たり前にやってることが犯罪だなんて考えたことなかったです。確かにツボわったり、タンスあけたり物色したりするもんなぁ。
    視点がとってもおもしろい!作者の他の作品も読んでみたくなりました。

  • (笑)視点がいいですね!笑いながら読ませて頂きました、ゲームの世界だから許され誰にも咎められない、わけではないんですね。新鮮なお話しでした。

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