第一探索編パート4(脚本)
〇女の子の一人部屋
柳生花凛「・・・誤解?どういう事?オニーサン」
橘宏美「・・・君が」
橘宏美「君がそうやって俺に迫るのは、 摩耶さんを・・・」
橘宏美「・・・お母さんを守りたいから、違うかい?」
柳生花凛「・・・!!」
橘宏美「・・・いくら助けて一緒に逃げてきたとしても、摩耶さんの俺に対する距離が近いのは解る」
橘宏美「人のお母さんが、夫以外の男にするもんじゃないってのも、常識に照らし合わせたらそうだってのもね」
橘宏美「それで君は、俺と摩耶さんが一線を越える前に、俺の欲求を自分に向けさせる事でお母さんを守ろうとしている。違うかい?」
柳生花凛「オニーサン・・・」
橘宏美「でも・・・君のお母さんを嫌わないでほしい。こんな状況だ、きっと寂しいんだよ」
橘宏美「そして、俺の事ももう少し信頼してほしい」
橘宏美「そりゃ・・・見てわかるだろうけど、俺は童貞だし、色々こじらせてる陰キャオタクだよ」
橘宏美「当然、そういうアレを見た事はある。でも、現実と虚構の区別はつけてるつもりだ」
橘宏美「人妻に手を出すというのがどういう事か、どんな罪を背負い、どんなリスクを負うかも理解しているつもりだ」
橘宏美「そして俺は、そんな事をしてまで童貞を捨てようとは思わないし・・・」
橘宏美「・・・・・・勿論、君を使ってそうしようとも思わない」
橘宏美「それぐらいの理性と常識は、俺にだってあるんだよ」
柳生花凛「・・・」
橘宏美「・・・だから、もうこんな真似はしないでほしい」
橘宏美「花梨ちゃんが自分の身体を粗末にしたら、きっと摩耶さんや、君のお父さんも悲しむハズだ」
柳生花凛「・・・ふふっ」
柳生花凛「あはははっ」
橘宏美「・・・えっ!?」
橘宏美「い、今の笑う所あった!?結構真面目な話したつもりだったんだけど・・・」
柳生花凛「ううん、オニーサン真面目すぎーって思っただけ!」
柳生花凛「ただし、さっきのは半分正解って所かな?」
橘宏美「半分・・・?」
柳生花凛「だってママ人妻じゃないし」
柳生花凛「正確には、”もう人妻じゃない”って言えば解りやすいかな?」
橘宏美「それは、つまり・・・」
柳生花凛「・・・うん、ママはバツイチなの」
〇屋敷の門
あたしのママ・・・柳生摩耶は、結構いい所のお嬢さんだったの。詳しくはわかんないけど、華族がどーとか言ってたわ。
当然、お嬢様として然るべき教育を受けたママは、東京の名門大学に入学するんだけど・・・
そこで、ママは一人の男性と出会うの。
そう、私の父親になる男ね。
何度か話す内に二人は恋に落ちたわ。
当然、相手は庶民だからって家は反対したけど。
ママは、相当そいつに惚れ込んでたらしいわ。家が反対するならと、二人で駆け落ちしたの。
────と、ここまで聞けば大昔に流行った三流のケータイ小説だけど、当然ながらこれでめでたしめでたしとはならなかった。
〇アパートのダイニング
────結婚してしばらくは幸せだったみたいだけど、あたしが生まれた前後からその男は本性を現したわ。
元々家の遺産目当てで世間知らずのお嬢様だったママに近づいたみたいで、それが手に入らないと知ったからか、相当暴れてたわ。
ママを叩いてるのも見た事あるし、当然のように浮気も不倫も繰り返して、悪びれもしなかった。
・・・覚えてるのは、ママを「中古品の古女房」だとか「ブヨブヨのそそらない身体」だとか言って罵ってた所。
許せなかった、だからあたしもグレてこんなになった。
思えば、あいつのいる家に居たくなかったんだと思う。
そして・・・あいつは散々ママを泣かせた挙げ句、離婚届を叩きつけて浮気相手と消えたわ。
残されたのは、あたしと、実家から勘当された元お嬢様のママ。
そしてママがギリギリまで働いてなんとか生活できるアパートと、あいつが支払いを拒否したあたしの養育費。
〇女の子の一人部屋
柳生花凛「・・・まあ、あたしも辛かったわけだけど、あんなやつの相手をさせられたママも相当辛かったと思う」
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