読切(脚本)
〇クリスマスツリーのある広場
雪乃(はぁ〜仕事疲れた)
街はクリスマス一色に染まっている
今年で彼氏いない歴7年目に突入した私は、
一人寂しくクリスマスツリーを眺めていた
サンタの店員「お嬢さん、ケーキはいかが?」
サンタのコスプレをした、ケーキ売りの店員に声をかけられた
雪乃「じゃあ・・・1つもらえますか?」
サンタの店員「おまけにサンタの便箋をあげよう。 欲しいものを書いたらプレゼントが届くかもしれないよ」
雪乃「あ〜はは・・・。ありがとうございます」
サンタの店員「ホッホッ、よいクリスマスを!」
雪乃「もう、子供じゃないんだから・・・」
〇ファンシーな部屋
帰宅した私は、明日の大事な会議に備えて早く眠りにつくことにした
雪乃「・・・眠れない」
水を飲みにリビングへ向かうと、サンタ店員からもらった便箋が目に入った
私は、テーブルに転がっていたペンを持って、こう書いた
『理想の恋人が欲しい』
雪乃(サンタなんて信じてないのに何やってるんだろ)
私は便箋をぐしゃっと丸めてゴミ箱に捨てた
〇ファンシーな部屋
翌朝──
ピピピピピ・・・
雪乃「うーん・・・」
重い瞼を開いて、時計のアラームを止める
シロ「おはよ」
雪乃「きゃああっ!!!」
シロ「あははは、朝から元気だね〜」
雪乃「だ、だだだ誰っ!?」
シロ「僕?僕の名前はシロ」
雪乃「今すぐ出ていって!警察呼ぶわよ!?」
シロ「酷いなぁ。恋人が欲しいって書いたのは君じゃないか」
雪乃「は・・・?」
目の前に出されたのは、昨夜ゴミ箱に捨てたはずの便箋だった
雪乃「嘘・・・でしょ?」
シロ「本当だよ。今日から僕が、雪乃の彼氏だよ」
雪乃「な、なんで名前知ってるのよ?」
シロ「雪乃のことなら何でも知ってるよ♪」
雪乃(怖いんですけど!)
雪乃「とにかく、今すぐ出て行って。 ここに住み着いてもらっても困るの!」
シロ「ええ〜!僕、帰る家ないよ〜」
雪乃「そんなこと言って・・・ って、もうこんな時間!?」
私は急いで身支度を整えた
雪乃「ほら、アンタも一緒に来なさい!」
〇高層ビル
会社の前に着いた私は、シロに現金を手渡した
雪乃「これだけあれば家に帰れるでしょ?」
シロ「だから家はなくて・・・」
雪乃「これ以上私に関わるなら、本当に警察を呼ぶからね!」
私は悲しそうな顔をするシロを背に、足早に立ち去った
〇高層ビル
仕事が終わり腕時計を見ると、針は22時を指していた
会社を出ると、雪が降っていた
雪乃「嘘でしょ〜・・・傘持ってきてないよ・・・」
シロ「ゆきの」
振り返ると、傘を持ったシロが立っていた
雪乃「アンタ・・・帰ってなかったの?」
シロ「だから、僕には家がないんだって」
シロ「雪乃のために生まれたプレゼントだから」
白い肌は赤く染まっていて、肩は少し震えていた
雪乃「もしかして、ずっと外にいたの?」
シロ「うん。雪乃、傘もってなかったから 買ってきたんだ」
雪乃「・・・私、アンタに酷いこと言ったのに」
シロ「そんなこと全然気にしてないよ」
シロ「ほら、一緒にかえろ?」
雪乃(仕方ない、今日だけは泊めてあげるか・・・)
〇川沿いの公園
シロ「雪がこんなに冷たいものだとは思わなかったなぁ」
まるでシロは、初めて雪を見たかのように話す
シロ「ね、手あっためてくれる?」
雪乃「えっ・・・?」
シロが私の手を握りしめる
凍えるような冷たさだけど、不思議と嫌な気持ちはしなかった
〇ファンシーな部屋
雪乃「今日は、ここで寝てね」
シロ「え〜!雪乃と一緒に寝たい!」
雪乃「なに言ってんの。ダメに決まってるでしょ」
シロ「恋人同士なのに?」
雪乃「・・・そのことだけど」
雪乃「シロは私の恋人じゃないよ」
シロ「どういうこと・・・?」
雪乃「だって、まだ出会ったばかりだし」
雪乃「お互いのこと何も知らないじゃない」
シロ「僕は雪乃のこと何でも知ってるよ」
雪乃「私はシロのこと、まだ何も知らない」
雪乃「恋人っていうのは、好きな人となるものなのよ」
シロ「雪乃は、僕のことが好きじゃないの?」
雪乃「それは・・・」
シロ「僕はただ、雪乃の理想の恋人になりたいだけなんだ」
シロ「それが僕の生まれた理由だから」
雪乃「ありがとう。気持ちだけ受け取っておくね」
シロ「・・・・・・」
〇ファンシーな部屋
翌朝──
ピピピピピ・・・
重い瞼を開いて、時計のアラームを止める
雪乃「シロ、おはよ・・・」
部屋を見渡すが、シロの姿が見当たらない
雪乃「シロ・・・?」
雪乃「どこいったの?」
部屋中を探し回ったが、シロはどこにもいなかった
雪乃「やっぱり夢・・・だったんだ」
〇クリスマスツリーのある広場
そして季節は巡り・・・
今年もクリスマスがやってきた
街を歩いていると、見覚えのある男がツリーの前に立っていた
サンタの店員「ホッホッホ、メリークリスマース」
雪乃「あなたは・・・」
サンタの店員「よい子の君に、これをあげよう」
目の前に差し出されたのは、あの不思議な便箋だった
雪乃「私・・・もういりません」
サンタの店員「なぜだい?」
雪乃「大人の私にとって、クリスマスプレゼントは夢でしかないから・・・」
サンタの店員「ホッホッホ。それはどうかな?」
サンタの店員「信じ続ければ、夢はいつか現実になるんだよ」
サンタはウィンクをして、私に便箋を渡した
サンタの店員「メリークリスマス!ホッホッホッ」
〇ファンシーな部屋
その夜、私はシロの夢を見た
彼の隣で、私は幸せそうに笑っていた
雪乃「シロ・・・」
〇ファンシーな部屋
いつもより早く目が覚め、ゆっくり隣を見る
雪乃「もう私の前に現れないのは、わかってるのに・・・」
〇玄関内
玄関の鏡で前髪を整え、ドアノブに手をかける
ドアを開けると、ずっと会いたかった人が立っていた
シロ「雪乃」
雪乃「シロ・・・」
私は手に持っていた鞄を投げ、シロに抱きついた
雪乃「もう、なんでアンタはいつもこんなに冷たいの?」
シロ「サンタからの贈りもの・・・だからかな?」
雪乃「そっか・・・今日はクリスマスだったね」
シロ「雪乃、メリークリスマス」
雪乃「メリークリスマス」
その時、外から冷たい風が入ってきて
便箋がひらりとテーブルから落ちた
便箋には、こう書かれていた
『シロに会いたい』
サンタクロースなんていないと現実を知ってしまった大人たちに、再びクリスマスプレゼントという夢を授けてくれるような温かいストーリーでした。
素敵なプレゼントに読んでてドキドキしました。
シロくんとはその後も一緒にいられたのかな?それともクリスマス限定なのかな?と心配(?)をしてしまいました。
思い合ってるなら、ずっと一緒にいたいですよね。
人懐っこいシロはきっとまさに理想の彼氏だったのかもな。でもいくら理想でもいきなり彼氏というわけにはね。1年掛けてやっと彼氏になれたのかな。