双子のオニ専門解決屋

にーな

雨の店(脚本)

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〇大きな日本家屋
  ピンポーン
文也「あ、いらっしゃいませ」
向日葵「えっと・・・」
文也「猫柳に御用の方ですよね?」
向日葵「は、はい」
文也「受け付けは離れなんです」

〇おしゃれな居間
「猫柳にようこそ」
向日葵「あなた方が、例の解決屋さん・・・?」
咲良「そうだよ」
輝久「まぁ、座りなよ」
文也「お茶、どうぞ」
「文君慣れてる?」
文也「え?普通だと思いますけど」
鬼灯「依頼者優先しろ」
桔梗「鬼丸、怖いって」
鬼灯「うっせ」
咲良「・・・其れで」
輝久「何をして欲しいの?」
向日葵「・・・あるお店を探して欲しいんです」
文也「店探しの依頼、という事ですか」
向日葵「はい・・・そのお店は、何時も雨の日にしか行けないんです」

〇店の入口
向日葵「参ったなぁ」
向日葵「急に雨が降るなんて・・・ついてない」
青年「良ければどうぞ」
向日葵「え、あ、ありがとうございます」

〇おしゃれな居間
向日葵「そのお店はお兄さんが経営してるブックカフェで、私本読むのが好きなので素晴らしい店なんです」
「ブックカフェ?」
鬼灯「本が読める喫茶ってとこだ」
「へぇ」
向日葵「その日は、暫く其処で過ごしてから、お兄さんが貸してくれた傘を使って帰ったんです」
向日葵「それで、次の日お店を探したんですけど・・・見付からなかったんです」
向日葵「それから暫くして・・・」

〇店の入口
向日葵「!あ、あの店・・・!」

〇レトロ喫茶
青年「ああ、いらっしゃい」

〇おしゃれな居間
向日葵「それから、毎日毎日お店を探して・・・雨の日にだけ現れるお店で本を読んだり、お兄さんと話したりして・・・」
文也「もしかして、その店長さんの事・・・・・・」
向日葵「・・・・・・・・・・・・」
  文也の言葉に向日葵は顔を赤くして頷く。
咲良「雨の日の店・・・」
輝久「・・・その店長さんの名前は?」
向日葵「其れが・・・秘密、と」
咲良「・・・髪は雨の様に青く、目は紫陽花の様に紫?」
向日葵「え?あ、はい・・・」
  其れを聞いた直後、双子は立ち上がった。
文也「あ、ちょっと待って下さい!依頼人は!?」
「一度帰して。見付けたら連絡するから」
桔梗「相変わらずだね」
鬼灯「ったく」
文也「あらら・・・えーと、此処に連絡先書いて下さい」
向日葵「あ、はい」
文也「大丈夫です。あの双子ならきっと」

〇おしゃれな通り
咲良「菊」
輝久「うん」
咲良「鬼丸、傘。妖狐は気を付けてね」
鬼灯「おう?“言の葉よ 雨を防ぐ傘となれ”」
桔梗「え、もしかして濡れるの?」
輝久「雨ザーザー降ってるもん♪」

〇おしゃれな通り
鬼灯「・・・・・・予想はしてたけどよ」
  ザーザーと音を立てて降る雨に桔梗が鬼灯に飛び付いていた。
桔梗「ならいいじゃないか」
詩織「妖狐のお兄は雨嫌い?」
鬼灯「雨つーより、濡れるのが嫌いなんだよ。此奴は」
桔梗「悪かったね」
鬼灯「んな事、言ってねぇし」
「出た」

〇店の入口
  其処には先程まで無かった筈の店が当たり前の様に存在している。
「え」
「入ろう」
鬼灯「あ、おい!」
文也「ま、待って下さい!」

〇レトロ喫茶
青年「いらっしゃいませ」
  一瞬目を揺らしたものの笑顔で出迎える青年。
「お日様ちゃんじゃなくてゴメンね」
文也「え。お日様ちゃん?」
桔梗「依頼人の事だろうね」
文也「向日葵さん?」
青年「え」
咲良「雨のオニ・・・雨童(アメワラシ)」
雨童「!!どうして・・・それを・・・」
輝久「桜はオニ関連なら何でも知ってるんだよ」
詩織「雨童?」
咲良「雨のオニの中でも、自力では雨は降らせられない。でも、雨の中でしか存在できないオニ」
雨童「・・・ええ。その通り」

〇レトロ喫茶
  一先ず彼等は席に座る。
  既に輝久が降らした雨は止んでいた。
  その所為か、窓の外は違う街の雨の景色になっている。
雨童「お客様の仰る通り、僕は雨童と呼ばれるオニです」
文也「こんな身近にオニが居るなんて・・・」
輝久「オニは彼方此方に居るよ」
咲良「夜月はオニを神聖視してたから、ちょっと意外かもね」
雨童「夜月・・・・・・あの夜月の?」
文也「あ、俺と妹はその夜月から出ました」
雨童「ああ、そうなんですか・・・」
咲良「名前を名乗らないのは」
輝久「オニで固有名が無いから」
雨童「ええ、そうです」
「お日様ちゃんの事、好き?」
雨童「ええ、そう・・・」
雨童「はい!?」
文也「何ではっきり聞いちゃうんですか」
桔梗「菊は仕方ないかな」
鬼灯「桜はその辺よく分かってねぇだろうし」
雨童「・・・・・・可笑しいですよね。唯でさえ弱いオニなのに、人を想うなんて」
「何故?」
雨童「え」
鬼灯「あー、恋愛ってのは色々厄介なんだよ」
桔梗「まぁ、両片想いならいいんじゃないかい?」
文也「でもオニとの恋愛ってアリなんでしょうか?」
詩織「御伽噺にあったよ?」
文也「それって、最後悲恋じゃ・・・」
  わいわいと話す彼等を戸惑った様に見る雨童。
咲良「オニと人の恋愛は有りだよ。子供の存在も記録にある」
雨童「!」
文也「そうなんですか?」
咲良「うん。唯、生きる時間が違うから、片側が置いていかれてしまうし、子供も七歳までは不安定だから気を付けないといけない」
「へぇ」
雨童「・・・反対されないのですか?」
「何故?」
雨童「だって、普通はオニとなんて・・・・・・」
「私達は気にならない」
雨童「そ・・・そうですか。でも、僕の身勝手な想いで・・・お日様の様な彼女から太陽を奪うなんて・・・」
「猫柳に依頼すればいい」
雨童「え」
「私達なら妥協案出せる」
雨童「え・・・・・・」

〇レトロ喫茶
  数日後の雨の日。
向日葵「店長さんがオニ・・・それでも、私・・・」
向日葵「店長さんが好きです」
雨童「・・・僕も好き、です」
向日葵「店長さん・・・!」
咲良「其れで、今回雨童から依頼された」
輝久「此れをどうぞ」
「?」
  差し出されたのは指輪だった。
雨童「あ、あの、まだ指輪は早いかな!」
向日葵「そ、そうです!まだ、まだ早いです!」
「?」
鬼灯「あー、結婚指輪とかそんなつもりで渡してねぇから」
桔梗「というか、結婚はする感じかな」
「あ・・・・・・」
咲良「?大きい方は雨童が身に着けて。雨の下じゃなくても存在出来る様になってるから」
雨童「!!」
輝久「小さい方はお日様ちゃんが持ってて。雨童の方の補佐をするから」
  指輪は輝久が創造し、咲良が操作し、詩織の「対象に能力付加」する異能を使って生み出された物だった。
鬼灯「・・・まるで、祝福だな。シオちゃんの異能は」
「じゃあ、シオちゃんの異能名は『祝福』で」
鬼灯「え」
咲良「後は・・・雨童の名前だね」
雨童「・・・向日葵さん。僕の名前を決めてくれませんか?」
向日葵「・・・貴方の名前は・・・・・・」

〇レトロ喫茶
「いらっしゃいませ!」
  やがて夫婦となる二人の指には、白い花と薄桃色の花が描かれた指輪が填められていた。
雨童「あ、文也君。詩織ちゃん」
文也「また来ちゃいました。あ、桜君と菊君も来るそうです」
向日葵「わぁ、嬉しい。でも、珍しいね」
詩織「・・・妖狐のお兄と鬼丸のお兄は自分達が外に出ないと逢引しないって言ってた」
「・・・・・・・・・・・・え」
  やがて、夫婦の間には娘が生まれる。
  終

次のエピソード:花の依頼

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