読切(脚本)
〇学校の校舎
12月初め、久しぶりに幼なじみの浩司に声をかけられた
浩司「推薦合格おめでとう」
美月「知ってたんだ──ありがと」
美月「浩司は今が追い込み時だね」
浩司「そうなんだが──実は美月に話があって」
浩司「クリスマスの事なんだけど──」
美月(え!? も、もしかして──)
浩司「──先日、ユキからメールが来たんだ」
〇空
ユキちゃんは浩司の妹で、1年半前の14歳の夏に病気で亡くなった
太陽みたいに明るい子だったが身体は生まれつき弱く
中学に入ってからは入院生活が続き──そのまま帰らぬ人となった
〇学校の校舎
浩司「あいつのスマホとっくに解約してるのに──」
美月「落ち着いて、これZmailだよ アカウント残ってたんだ」
美月「予約送信だと思う」
浩司「じゃあ本当にユキが──」
浩司「本文も見てくれ」
お兄ちゃん
クリスマスの約束、覚えてる?ちゃんと守ってね
イヴの昼12時、晴れたら公園へ
雨なら次のメールまで家で待機ね
一人じゃ無理だから、女の人に手伝ってもらって
当日またメールするね
ユキ
美月「確かにユキちゃんっぽい文だね」
美月「でも約束って?」
浩司「入院が本格化した頃、あいつ言ってたんだ」
浩司「16歳のクリスマスに欲しいプレゼントがあるって」
浩司「でも結局、何が欲しいか最期まで言わなかった そして今年が──」
美月「16歳のクリスマスに当たる年──」
浩司「あいつの願い、叶えてやりたいんだ 美月、手伝ってくれないか」
美月「もちろん!」
美月「他に何か言ってなかった?」
浩司「「2万円で足りると思うけど、念のため3万くらい貯めてね」とか言ってたな」
美月(結構高め──そんな我が儘珍しいな)
美月(しかも公園で女性が──何だろ?)
浩司「じゃあ悪いけど、イヴの日よろしくな」
〇住宅街
イヴ当日
浩司「悪いな、大事な日に付き合わせて」
美月「ううん、元々空いてたから」
〇見晴らしのいい公園
美月「わあ!懐かしい」
浩司「あの頃はユキも美月もお転婆だったな」
〇公園のベンチ
浩司「ここでよくお前に話聞いてもらったな」
浩司「あの頃はユキの事で必死で──お前には迷惑かけた」
美月「迷惑なわけないじゃん! 私だってユキちゃんは家族同然なんだから」
美月「色々話してくれて、嬉しかった」
浩司「美月──」
浩司「ユキだ!」
バスで美術館へ
浩司「公園は何だったんだ?」
今の時間は何だったんだ?とか思ったでしょ
そんなだからダメなんだよ
この時間も意味を持ってくるんだから
浩司「──あいつ、どこかで見てるんじゃないだろうな!?」
美月「はは・・」
美月(でも、どういう意味だろ)
〇綺麗なコンサートホール
浩司「そういえばここ、お前らが好きな絵があったよな ユキに似てるとか言って」
浩司「待つ間少し観てくか」
美月「うん!」
〇黒
〇綺麗なコンサートホール
浩司「結局ゆっくり観ちまったな」
美月「空いてたし、久しぶりに観れてよかった!」
16時半までにこの地図のお店へ
浩司「ついに店の指示が──!」
浩司「でも、美術館のショップじゃないのか?」
美月「とりあえずバス乗らないと!」
美月(ユキちゃんもしかして──あの絵を見せて、自分の事思い出して欲しかったのかな)
〇山中のレストラン
浩司「ここレストランじゃないか!」
浩司「持ち帰りとかできる雰囲気じゃないけど──」
2人分予約してあるから食べて
私に持ち帰りとかしない事
〇ホテルのレストラン
美月「美味しい!ここ来てみたかったんだ~」
浩司「ここ、俺が出すよ」
美月「え、ダメだよ──」
浩司「でも、ほら」
お兄ちゃんが2人分払う事
美月「わ、わかった ありがとう」
美月「じゃあ次は私が出すから──また一緒に来よ?」
浩司「──ああ」
次はこの地図の場所へ
浩司「行こう!」
美月「う、うん!」
美月(ユキちゃん──これってもしかして)
〇イルミネーションのある通り
美月「わあ、キレイ──!」
浩司「ああ」
浩司「──」
美月「ユキちゃん?何て?」
浩司は黙ってスマホを差し出した
〇イルミネーションのある通り
お兄ちゃんへ
これが最後の指示です
隣にいる人に、告白してください
そして恋人ができたよって、私に報告してください
隣にいるのが私が思っている人じゃなかったとしても、お兄ちゃんが選んだ人なら認めるよ
(まあ私がお兄ちゃんたちの事を見誤るとは思えないけどね!)
お兄ちゃん、私は怒ってます
お兄ちゃん、私に気を遣って全然遊びに行ったりしなくなったよね
ユキを差し置いて自分だけ幸せになっちゃいけない、とかバカな事思ってるでしょ
そんなの私が喜ぶわけないじゃん!
お兄ちゃんの頭じゃ好きな人と同じ大学なんて無理なんだから、
いま告白しないと離ればなれになっちゃうんだよ!?
お兄ちゃんももう18歳なんだから、
恋人の一人くらい作って私を安心させてください
〇病室(椅子無し)
お兄ちゃんは私が無理してるって思うだろうけど、
この計画を思いついた時、私は嬉しくなりました
私にもまだ家族の未来のためにできる事があるぞって考えたら、
この世界から消えるのも怖くなくなりました
お兄ちゃん、ちゃんと幸せになって未来を作ってください
いつか家族になるかもしれない大切な人を、しっかり掴まえてください
それが私が最後に望むクリスマスプレゼントです
出来のいい妹より
〇イルミネーションのある通り
浩司「──」
浩司は涙をボロボロこぼしている
そういう私も涙で前がよく見えなくなっていた
浩司「美月、これ──」
浩司「お前にクリスマスプレゼント──」
美月(受験やユキちゃんの事で大変だったのに──用意してくれてたんだ)
美月「──ありがとう、嬉しい」
美月「私も、これ──」
美月「自分で編んだから下手だけど──へへ」
浩司「──ありがとう」
浩司「美月──お前に聞いてほしい事があるんだ」
美月「──はい」
浩司「でも、頼む──」
浩司「あと一日だけ待ってくれないか──」
私は深くうなずいた
今、私と同じ事を考えてる浩司を好きになってよかったと思いながら──
美月「うん──」
美月「今日はユキちゃんの事、いっぱい話そう──!」
なんて出来のいい妹なんだ…長い間一緒に暮らした家族だからセーブしていた本心を見透かされていたのか…切ないですね🥲
ラストで本当に涙がでました。凄くいいお話ですね。
クリスマス近くに読めて良かったです。素敵なお話をありがとうございました。
読み初めてすぐにドラマを見てるような錯覚におちました😲😲
お兄ちゃんを想う妹の気持ちに涙が出ました😭
素晴らしいお話でした✨