不思議なイケメンと少女(脚本)
〇神社の石段
今日もいつものように境内を掃除していた
巫女装束を身に纏い、パラパラとやってくるお客様にいつものように愛想良く挨拶をする
御子神彪綯「おはようございます」
そんなある日、突然神社にやってきたのは
全くと言っていいほど神社が似合わない
銀髪のイケメンだった
逢咲静綯「・・・・・・・・・やっと見つけた こんなところにいたのか」
御子神彪綯「・・・・・・え?」
御子神彪綯(こんな人知らない 初対面のはずなのに)
逢咲静綯「・・・・・・・まさか、覚えてないのか?」
私が首を傾げると、銀髪のイケメンは
ありえない、とでも言いたげな表情を浮かべた
逢咲静綯「嘘・・・・・・だろ・・・・・・?」
御子神彪綯「すみません 私、17歳以前の記憶がなくて・・・・・・」
逢咲静綯「記憶が・・・ない? そんな訳・・・・・・・・・!」
逢咲静綯「俺は、逢咲静綯(おうさき しずな) お前とは同級生だった 家に招かれたこともあったはずだ」
名前を聞いても心当たりがない
父様や母様なら知っているのだろうか?
御子神彪綯「少々お待ちください」
御子神彪綯「・・・・・・父様! 父様、少しよろしいでしょうか?」
神里真司「どうしたんだい、彪綯(あやな)?」
御子神彪綯「父様、この殿方のこと知っていらっしゃいますか?」
神里真司「この少年かい?」
御子神彪綯「はい 同級生だったらしいんですけど私、記憶がないので思い出せなくて・・・ かなり親しくしていたようですが」
神里真司「私がわかるわけがない だいたい彪綯は────」
御子神彪綯「お父様、なんと言いました?」
神里真司「いや、なんでもない 気にするな」
神里真司「取り敢えず、私はこの少年のことは知らない 役に立てなくてすまんな」
父様がそういったあと、間があいた
この話はこれで終わり、そう思って
私が仕事に戻ろうとしたときだった
逢咲静綯「・・・・・・じゃあ、これを見れば思い出してくれるのか?」
その瞬間、目の前に立つ静綯さんの
瞳と髪の色が変わった
銀色だった髪は紺色へと変わり、
赤色だった瞳は黄金色へと変わった
「・・・・・・!」
御子神彪綯「嘘・・・どういうこと・・・・・・?」
神里真司「き、君はまさか・・・・・・・・・」
普通にはありえない光景を前に
私達は驚いてしばらく固まった
静綯さんはどこからか、赤い紐飾りがついた小刀を出した
見覚えのないそれだが、不思議と懐かしさを感じた
神里真司「やはり君は・・・・・・・・・ 逢咲静綯くんか?」
逢咲静綯「・・何故お前が知っていて彪綯が知らない?」
神里真司「彪綯は17歳以前の記憶がないと聞かなかったのか? 今の彪綯からしたら君は他人だ、もう帰りなさい」
父様の態度がいきなり冷たくなった
こんなに怒っている父様は初めて見た
神里真司「───────────!!!」
逢咲静綯「──────────」
父様は一瞬静綯さんに近付き耳元で
なにか囁いてからまた厳しい顔に戻った
なんと言っているかは分からない
ただひとつだけ分かったことがあるとすればお父さんも静綯さんも私に聞かれないようにしている、ということだ
神里真司「彪綯、もう仕事に戻りなさい」
御子神彪綯「えっ、あの静綯さんはどうされますか?」
逢咲静綯「俺は参拝してから帰る 案内は必要ない」
御子神彪綯「でも、あの・・・・・・・・・」
逢咲静綯「いいっつってんだろ! お前はもう俺を気にするな」
御子神彪綯「あっ・・・・・・ごめん、なさい」
逢咲静綯「・・・・・・! すまん・・・」
静綯さんは、大きく動揺して
気まずそうに謝ったあと、
鳥居をくぐり境内へ向かった
父様は静綯さんのあとについていき、
私はモヤモヤとした気持ちを抱えながら
仕事に戻った
〇古びた神社
彪綯に参拝する、と嘘を付いて
俺は誘導されるままに本堂へ足を踏み入れる
俺に向き直った彪綯の父の顔は真剣だった
神里真司「何故君はこんなところにまで彪綯を探しに来たんだ? もう100年も前のことだろう? そもそも、何故君が生きているんだ?」
逢咲静綯「・・・惚れた女に会いに来る理由が必要か?」
逢咲静綯「それに、アンタは何故俺のことを知っている? 何故彪綯が100年以上前の人間だと知っている?」
逢咲静綯「そして────何故彼女には記憶がない?」
神里真司「君は、彪綯の彼氏なのかい? もしそうだとしたら教えるが、 そうでないのなら帰りなさい」
逢咲静綯「彼氏では・・・ない だがこの世で俺が1番彪綯を愛してる 彼女の気持ちがどうであれ、俺はもう彪綯の所有物《モノ》だ」
逢咲静綯「所有物《モノ》には知る権利がある」
「なにをぐずぐずやってるの、静綯? 早く帰るよ、急ぎなさい」
彪綯の今の父と話していると、後方から女の声が割り込んできた
敷波夕陽「これからお父様達と結婚についての会議を開くのだから早くして 100年前の女なんて忘れればいいのよ あんな女より私を見て」
逢咲静綯「敷波・・・ なんでこんなところにいるんだよ」
神里真司「敷波・・・・・・? 君は?」
敷波夕陽「はぁ? おっさんごときが私に話しかけていいとでも思ってんの? 流石に自重しろよ、ジジィ!」
逢咲静綯「敷波、帰れ 俺はそんなところ行かない 俺の女は一生彪綯だけだ」
神里真司「逢咲くん、その方は? 結婚ってどういうことだ? ・・・・・・彪綯のことを愛してる、というのはデタラメか?」
逢咲静綯「ふざけんな、俺の女はあとにも先にも彪綯ひとりだけだ そいつ以外は死んでも認めねー こいつは親同士が勝手に決めた許嫁だ」
神里真司「敷波、さん? 今日のところは帰っていただけませんか? 彼に大事な用があるのです」
敷波夕陽「はぁ? 嫌よ、絶対イヤ するなら私の前でしてちょうだい 静綯がどんな嘘を教え込まれるか分からないもの」
逢咲静綯「そもそも勝手に人のこと尾行すんじゃねえよ 気持ち悪い お前は兄さんのことが好きなんだろ? じゃあ兄さんと結婚しろよ」
敷波夕陽「はぁ!?気持ち悪いって何よ! 親同士が決めた結婚なんだから仕方ないじゃない! そっちの家の旅館継ぐのはあんたじゃない!」
敷波夕陽「そもそも何年結婚の話引っ張んってのよ!」
逢咲静綯「たった40年がどうしたよ 俺には彪綯しかいねぇんだよ!!」
神里真司「ここで言い争わないでくれ! 外に聞こえるだろう!? 案内するからもっと奥で──────」
敷波夕陽「ジジイは黙ってろ、死ね!」
あやなさんなぜ17歳以前の記憶がないのか、同級生だというしずなくんも含めて今何歳なのかも気になります。お父さんも何か知ってそうだし。続きが早く読みたいです!
二人については分からないことだらけですが、父親は何か事情を知っているみたい。そもそも娘ではないんでしょうね。髪の毛や瞳の色が変化するという場面は、文章だけの小説ではイメージしづらいけれどTapNovelでは視覚的にバッチリですね。