メタニカル パンク

ゆでたま男

エピソード3(脚本)

メタニカル パンク

ゆでたま男

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〇綺麗な港町
  二人が市街地に入ったとき、突然、横路からすごい勢いで何かが飛び出して来た。
ロイ・パーカー「うわっ!」
  ロイは、ブレーキを目一杯かけると、タイヤがロックした。ハンドルを切って、ギリギリかわして止まった。
  今度は、後ろから2頭の馬が警官を乗せて同じ道を走り去っていく。
ロイ・パーカー「危ないな」
レイン「ロイ!」
  レインが叫んだ。
ロイ・パーカー「ん?どうした」
レイン「盗まれたスチームカートだ」
ロイ・パーカー「何だって」
レイン「あれは僕のだよ。追いかけて」
ロイ・パーカー「うん」
  ロイは、レバーを前に目一杯倒した。ぐんぐんスピードにのる。
  馬の間をすり抜けて前に出ると、すぐに車のお尻が見えて来た。
ロイ・パーカー「もう少しだ」
  いりくんだ細い道は、小回りの利くバイクの方が有利だ。
  横に並ぶと、中の様子が見えた。
レイン「ロイ、女の子が乗ってる」
  運転席を見て、ロイは驚いた。
ロイ・パーカー「ベネット先生」
  その瞬間、バイクがスチームカートに接触しと、ロイは腕に怪我をする。
  突き当たりは川になっている。
  ロイは、車体を横に向け、タイヤを滑らせて停車した。
  車は、曲がり切れずに川の手前の街灯に当たり、側面が歪んだ。
  そのまま川に落ちるギリギリのところで引っ掛かって止まった。
  ロイは、すぐにバイクを降りて、近づいた。女の子は、気絶している様だった。
ロイ・パーカー「ベネット先生、何でこんなことを」
ベネット先生「足が挟まって動けないの、この子を助けて」
ロイ・パーカー「でも、先生が」
ベネット先生「いいから、早く」
ロイ・パーカー「はい」
  女の子を引っ張りだし運んだ。
  すると、川の方へ車は傾いた。
ベネット先生「きゃー」
ロイ・パーカー「先生!」
  ベネットを乗せたまま車は、川の中に沈んでいった。
  いつの間にか、人だかりが出来ていた。
ヒューズ刑事「どいたどいた」
  人集りをかき分けやって来たのは、ヒューズ刑事だった。
ロイ・パーカー「げ、またあいつだ」
  まだこちらに気がついていないようだ。二人は、背を向けると、女の子が走り去っていく後ろ姿が見えた。
ロイ・パーカー「あ、ちょっと」
  何かが落ちているのに気がついた。
  それは、髪飾りだった。
  ロイは拾って、追いかけようとした。
ヒューズ刑事「おい、ちょっと待て」
  呼び止められ、ゆっくり振り向く。
ヒューズ刑事「なんだ、また君達か」
ロイ・パーカー「この前は、どうも」
  ロイは、会釈した。
ヒューズ刑事「まったく、転職したい気分だよ。  今度は何をしてくれたんだね」
  ヒューズは、呆れた顔をした。

〇洋館の一室
  警察署の小さな部屋の中。
ヒューズ刑事「ベネットは君も知ってるな?」
ロイ・パーカー「はい」
ヒューズ刑事「どうやら彼女はブラッティーリリオンの一員だったようだ。あのヘンテコな乗り物を盗み護送中だった女の子を連れさらったらしい」
ヒューズ刑事「だが、その女の子は消えてしまった。付近にいた人に聞いたが、走り去っていくのを見たと言っている。何か知らないか?」
ロイ・パーカー「いえ」
ヒューズ刑事「今までに会ったことは?」
ロイ・パーカー「ありません」
ヒューズ刑事「そうか。わかった。また、何か思い出したら連絡してくれ」
  二人は、は警察署を出た。
ロイ・パーカー「ベネット先生が盗んだなんて」
レイン「実はその先生、前に一度だけ家に来たんだ。蒸気機関に興味があるって、熱心に運転の仕方を聞いてきたから教えたんだ」
ロイ・パーカー「そのときから計画してたんだな」
  日が傾き、辺りはオレンジ色になっていた。

〇木造のガレージ
  二人は、レインの家に帰って来た。
レイン「何それ?」
  レインが聞いた。それは、金の髪飾りで、文字が彫ってある。
ロイ・パーカー「さっき拾ったんだ」
レイン「さっきって、あの子のか」
ロイ・パーカー「なんか文字が書いてある」
レイン「貸して」
  拡大鏡で見る。
ロイ・パーカー「何て書いてあるの?」
レイン「古い文字みたいだ。確かこれは」
  レインは、本を持ってきた。
レイン「やっぱり、ヘブライ語だ。 ユダヤの言葉だよ」
ロイ・パーカー「訳せるの?」
レイン「聖なる力の源 ローズ・ウィットレイ」
ロイ・パーカー「何のこと?」
レイン「分からない。ローズ・ウィットレイはあの子の名前じゃないか?」
ローズ・ウィットレイ「その通りよ」
ロイ・パーカー「君は、あのときの」
ローズ・ウィットレイ「それ返してくれる?それと、これ外して欲しいの」
  ローズは、手錠を見せた。
  レインは、棚から工具を取り出した。
ロイ・パーカー「よくここが分かったね」
ローズ・ウィットレイ「連れ去られた時にメモがあったの。多分、私を連れ去った人が書いた物だと思って。あなたでしょ、あの変な乗り物つくったの」
レイン「変とはなんだ」
  レインは、手錠の隙間に工具を差しこむと、簡単に切れた。
ローズ・ウィットレイ「ありがとう」
ロイ・パーカー「あぁ、それでこれ、はい」
  髪飾りを返した。
ロイ・パーカー「それで、何で死刑になんて」
ローズ・ウィットレイ「私は何も悪いことなんてしてないわ。ただ、傷ついた小鳥を治してあげただけ。その傷、見せて」
  ロイは、腕を見せた。ローズが手をかざすと、傷は消えていった。
ロイ・パーカー「すごい!何でこんなことが」
ローズ・ウィットレイ「私の家系は、代々不思議な力を受け継いで来たの。いい事ばかりじゃない。時には人を助け、時には人を傷つける」
ローズ・ウィットレイ「力とはそういうものなのよ。きっと私は呪われてるんだわ」
ロイ・パーカー「そんなことないよ。すごい才能じゃないか」
ローズ・ウィットレイ「他人事だから言えるのよ。私は普通の人間に生まれたかった」
ロイ・パーカー「それにしても、何で君の事を狙うんだ」
ローズ・ウィットレイ「分からないわ」
  ガラスが割れる音がした。
  同時に数人の男が入って来た。
  銃を持っている。
謎の男「動くな」
ロイ・パーカー「何だお前たち」
謎の男「どけ、坊主。お前に用はない。ローズ、司教がお待ちだ」
ローズ・ウィットレイ「どうして私にかまうの」
謎の男「お前の力が必要だからさ。早くこっちに来るんだ」
  ローズは男たちに連れ去られてしまった。
ロイ・パーカー「どうしよう」
レイン「助けにいこう」
ロイ・パーカー「助けにって、どうやって」
レイン「だから、秘密兵器があるって言っただろ」
ロイ・パーカー「秘密兵器?」

〇兵舎
司教「あぁ運命の子、ローズ・ウィットレイよ」
  ローズは、台の上に縛りつけられていた。
ローズ・ウィットレイ「離して。何でこんなことをするの?」
司教「正義とは何か。つまりそれは、勝者の理屈だ。勝った者が負けた者を支配し、負けた者は、ただ従い続けるしかない」
司教「そこに大義があると思うかね。必要なのは力だ。力さえあれば、世界は一瞬でひっくり返る」
ローズ・ウィットレイ「どういう意味?」
司教「私は、人が生まれて来るのは、何らかの目的があるからだと思っている。私にも、そしてお前にもな。これは偶然ではなく、必然だ」
司教「その目的が何であるか知りたいと思わないか」
ローズ・ウィットレイ「私はただ普通に生きていたいだけ」
  ローズに液体を飲ませ、額に手をかざした。
司教「怖れることはない。目覚めるのだ、本当の自分に。その指命に」
  ローズの瞳が生気を失った。

〇木造のガレージ
ロイ・パーカー「これが秘密兵器か」
レイン「そう、これが秘密兵器」
  それは、単なる鍵だった。
ロイ・パーカー「よし、別の方法を考えよう」
レイン「冗談だよ。これは、地下室の鍵だ。 そこに秘密兵器がある」
ロイ・パーカー「それにしても、何でローズを狙うんだ」
レイン「きっと、あの子を利用して何か大きなことをするつもりなんだ」
ロイ・パーカー「何かって?」
レイン「たぶんあの子は、ユダヤの血をひいてる。魔術を使えたと聞いたことがある」
ロイ・パーカー「魔術?」
レイン「そう。魔術」
ロイ・パーカー「そんなの本当に信じてるのか」
  ロイは、笑った。
レイン「何がおかしいんだよ」
ロイ・パーカー「あるわけないよ、魔術なんて」
レイン「ホントだって」
  その時、ミシミシと音を立てて小屋が揺れだした。
ロイ・パーカー「なんだ?地震か」
  急にガレージの中が暗くなった。
  窓の外を見ると、巨大な何かが海からやって来るのが見えた。
ロイ・パーカー「何だあれは」
レイン「あれは、ゴーレムだ」
ロイ・パーカー「ゴーレム?」
レイン「人造人間だよ」
  二人は、外に出た。巨大な石の塊を組み合わせた様な見た目をしている。
ロイ・パーカー「嘘だろ。人間ってサイズじゃないし」
レイン「あ!」
  レインが指差した。
レイン「飛行船」
ロイ・パーカー「父さんだ。あの飛行船には、父さんが乗ってる」
レイン「何だって」
ロイ・パーカー「助けに行かないと」

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