エピソード4(脚本)
〇海沿いの街
その塔は、街で一番高い建物だった。塔の先に大きな鐘が付いていて、街中に時を知らせることが出来る。
司教は、ローズと共にその鐘の下にいた。
司教「さぁ、ローズよ。今こそ、その力を示すのだ」
ローズが目を閉じて念じると、ゴーレムは動き出した。
街中の人々が悲鳴を上げ大騒ぎしている。
ゴーレムが足を一歩踏み出す度に、下にある建物が粉々につぶれた。
〇飛空戦艦
テーブルには、ワインと様々な料理が並んでいた。言われなければ、それが飛行船の中だとは思うえないほど優雅な風景だ。
お役人「しかし、素晴らしいですなこの飛行船は。これも、ジェフさんの力があってこそ」
ジェフ「いえ、皆様のお力があってこそです」
おじさん「大変ですジェフさん。外を見てください」
ジェフが窓に目をやると、飛行船の高度と同じくらいの高さに大きな顔が見えたのだ。
ジェフ「なんだ、あれは」
おじさん「どうしますか?」
ジェフ「バカもん。すぐに引き返すんだ」
飛行船は、急旋回すると、テーブルの上の料理が滑り落ちた。
速度は、歩くより少し早い程度。回避というレベルではなかった。
〇海沿いの街
ゴーレムは、街を踏み潰しながら進む。
司教「いいぞ、いいぞ。全てを破壊しつくせ」
司教は飛行船に目を止めた。
司教「あはははは。なんだあのちっぽけな乗り物は。非力なやつらめ。ゴーレム、握り潰してしまえ」
ゴーレムが手を伸ばす。
ロイ・パーカー「やめろー!」
ロイの乗ったソプターがゴーレムの目の前を横切った。
司教「何だあれは。虫ケラめ、潰してやる」
旋回すると、塔の上にローズを見つけた。
ロイ・パーカー「ローズ、やめるんだ」
司教「無駄だ。お前の声など届かんわ」
ゴーレムは、クルクル飛び回るロイを捕まえようと、腕を振り回すが空振り。ロイは、ゴーレムの足元に飛んできた。
ゴーレムのパンチが地面に突き刺さり、大きな砂埃と瓦礫が舞い上がる。石の欠片が勢いよく飛んで、飛行船のガラスか割れた。
ロイ・パーカー「しまった。飛行船が落ちてしまう」
スチームロボット「こっちは任せてよ」
ロイ・パーカー「レイン! なのか?」
スチームロボット「早く行って」
ロイは、飛行船に向かった。
〇飛空戦艦
ジェフ「皆さん、落ち着いてください」
船長「ジェフさん、駄目です。ガス袋に穴が空いたようです。このままでは墜落します」
おじさん「なんだと」
床に散らばった肉を踏み潰した。
おじさん「くそ!全部あんたのせいだ」
ジェフ「どうしたんだ」
おじさん「あんたが飛行船なんて作らなければ、私はこんな目に会わなかったんだ」
ジェフの胸ぐらをつかむ。
おじさん「どうしてくれるんだ」
ロイ・パーカー「父さん!」
二人は、外を見た。
ジェフ「ロイ、なんだそれは。そんなもんで飛べるのか」
ロイ・パーカー「ロープない?」
ジェフ「ロープ?あ、あるぞ。着陸用のやつだ」
ロイ・パーカー「端を何かに縛って、反対側は下に垂らして」
ジェフ「分かった」
ロイは、垂らされたロープをソプター
に縛ると、出力を全開にした。
すると、飛行船は引っ張られて進み始めた。
ジェフ「おぉ、なんというパワーだ」
それを見ていたゴーレムが、飛行船を狙ってパンチを繰り出そうとしたとき、顔に大きな石の塊があたった。
スチームロボット「お前の相手はこっちだ」
レインは、素早く走り回る。
司教「何をやってるんだゴーレム」
ロイは、その隙に飛行船を川まで運んで無事に着水させる。ゴンドラの中は拍手で湧いた。
ジェフ「よくやったぞ、ロイ」
ソプターは、スピードを上げてゴーレムのところへ向かった。
〇海沿いの街
ロイ・パーカー「大丈夫かレイン」
スチームロボット「なんとか」
その時、レインめがけて、ゴーレムが両手を地面に叩きつけた。
ロイ・パーカー「レイン!」
その瞬間、ものすごい風圧が辺りに広がった。ソプターはバランスを失い、落下する。
ロイ・パーカー「あぁぁ」
だが、ちょうどその下には、レインがいた。
スチームロボット「あぁぁ」
レインは、降って来るロイに気づき、両手を上げる。
ロイ・パーカー「ナイスキャッチ。無事だったか」
スチームロボット「ぶ、無事ではない。早くどいて」
ロイ・パーカー「ごめん、ごめん」
ソプターが飛び上がろうとすると、レインが一緒に持ち上がった。
スチームロボット「うわぁぁぁ。飛んでる」
ロイ・パーカー「え!」
スチームロボット「どうやら、今の衝撃でくっついたらしい」
ロイ・パーカー「こりゃいいや。面白いぞ」
スチームロボット「おぉぉ、揺れる揺れる」
二人は高く飛び上がった。
ロイ・パーカー「レイン、なんか弱点は無いのか?」
スチームロボット「確かゴーレムをあやつるためには何処かにエメスという文字が必要なはずだ。それを消せば」
ロイ・パーカー「倒せる」
スチームロボット「うん」
二人は頷いた。
〇海沿いの街
しかし、ゴーレムの回りを飛び回るが、どこにも見つからない。
ロイ・パーカー「どこだよ」
その時、ゴーレムが雄叫びをあげた。
スチームロボット「あ、あそこ」
レインが指差したのは、ゴーレムの口の中だった。
ロイ・パーカー「嘘だろ」
スチームロボット「飛び込むしかないよ」
ロイ・パーカー「よし、いくぞ」
二人は、ゴーレムの口の中へ入った。
ロイ・パーカー「レイン!」
レインは、エメスに向かってパンチをした。地響きのような音と共に、ゴーレムの体はつなぎ目からバラバラと崩れ落ちていく。
ロイ・パーカー「やったー」
スチームロボット「ローズを早く」
二人は塔のてっぺんに近づいた。
ロイ・パーカー「ローズを返せ」
司教「邪魔をするな。何をやってるんだローズ、もう一度だ」
ロイ・パーカー「ローズ、やめるんだ」
ローズ・ウィットレイ「・・・」
ローズはしゃべれないようだった。
頬に涙が伝っている。
崩れた巨石たちがまた集まり、人の形になっていく。
ロイ・パーカー「復活した」
スチームロボット「こっちに来るぞ」
ロイ・パーカー「一旦ここから離れよう」
二人は旋回して塔から遠ざかる。
司教「ペチャンコにしてしまえ」
だがゴーレムは真っ直ぐ塔へ向かっていく。
ロイ・パーカー「あれ、どうしたんだ」
司教「ローズ、何をしているんだ。やめさせろ」
ゴーレムは、塔に向かってパンチしようとする。
司教「止めるんだ!」
司教は、ローズの頬を殴った。
その瞬間、ゴーレムのパンチはそれた。塔をかすめ中腹から折れて倒れていく。
司教とローズは投げ出された。
ロイ・パーカー「あ!」
ロイはすぐさま向かった。近づくと、レインがローズの体を捕まえて、そのまま地上に降りた。ローズは気を失っている様だった。
飛行船に乗っていた人達は、みな無事に岸へとたどり着いていた。
おじさん「ジェフさん、あれはほんの冗談でして」
いつの間にか、いつもの低姿勢に戻っていた。
ジェフ「ああ、そうか。お前はクビだ。これは冗談じゃないぞ」
おじさん「そ、そんな」
ジェフはロイの所へ歩いて行った。
〇海沿いの街
ジェフ「ロイ、よくやってくれたな」
ジェフ「君はレイン君だね。ぜひ私の会社で働いて欲しい。君の力を借りたいんだ」
レイン「でも、僕は蒸気機関しか」
ジェフ「いや、君ならきっと出来る。あれだけの素晴らしい技術を持っているのだから」
ロイ・パーカー「なんか、悪いことに使うんじゃないの?」
ロイは、冷やかした。
ジェフ「いや、私は今やっと目覚めたのだ。人を助ける事こそが新しい技術のすべきことなのだと」
レイン「僕で力になれるなら」
ジェフ「よし、決まりだ」
ロイは肩をすくめた。
ローズ・ウィットレイ「ここは・・・」
ローズが目を開けた。
ロイ・パーカー「気がついた?」
ローズ・ウィットレイ「私は・・・」
ロイ・パーカー「全部終わったんだよ」
ローズ・ウィットレイ「私のせいで、こんなことに」
ローズ・ウィットレイ「ローズは涙を流し、両手で顔を覆った」
ロイ・パーカー「君が悪いわけじゃない」
ローズ・ウィットレイ「だけど」
ロイ・パーカー「君の力が本当に正しいことに使われれば、たくさんの人を救うことが出来るんだ。その力を貸してくれるね?」
ローズ・ウィットレイ「うん」
チュンチュンと何かの鳴き声が聞こえてきた。瓦礫をどかすと小さな鳥が羽をばたつかせている。怪我をしていて、飛べないようだ。
ローズは、その鳥を両手で救い上げると、息をそっと吹きかけた。すると、力強く羽ばたいて、空高く飛び上がっていった。