不倫まで辿り着けないっっ!!(脚本)
〇川沿いの公園
土屋(つちや)「あの・・・ 私とお付き合いしていただけませんか」
既婚男性「いやいやいや、俺、結婚してるよ!?」
土屋(つちや)「ええ、構いません」
土屋(つちや)「むしろ、そのほうが好都合です」
既婚男性「は!?」
土屋(つちや)「奥さんより、私のほうが若いですよね?」
土屋(つちや)「それに、かわいいですよね?」
土屋(つちや)「スタイルだって、抜群ですよ」
土屋(つちや)「さあ、私と不倫しませんか!?」
既婚男性「・・・・・・」
既婚男性「やばい・・・こいつはやばいぞ・・・」
既婚男性「飲み屋で知り合ったから、ふらっとついて来たけど・・・」
既婚男性「やばい女のにおいしかしない・・・」
既婚男性「・・・・・・」
既婚男性「土屋さん、だったかな?」
既婚男性「君はまだ若いんだから、こいうことはやめなさい」
既婚男性「──それじゃ、失礼!」
土屋(つちや)「・・・・・・」
土屋(つちや)「──チッ!」
土屋(つちや)「また逃げられた!!」
土屋(つちや)「何で!? あたしって、そんなに魅力ない!?」
粟田(あわた)「あはは、フラれたね、土屋~!」
土屋(つちや)「粟田! 帰ったんじゃなかったの!?」
粟田(あわた)「帰ってないよ」
粟田(あわた)「居酒屋で別れたあと、 こっそり二人を尾行してきたの」
粟田(あわた)「何か面白い展開になるかなと思って」
土屋(つちや)「この、暇人め・・・」
粟田(あわた)「ねえ、何で告白なんかしたの?」
粟田(あわた)「相手は既婚者でしょ? それじゃ、不倫になっちゃうよ」
土屋(つちや)「うるさいな!」
土屋(つちや)「あたしは、その「不倫女」になりたいの!!」
粟田(あわた)「──は?」
粟田(あわた)「何、それ??」
粟田(あわた)「全く理解できないんだけど・・・」
土屋(つちや)「・・・・・・」
土屋(つちや)「私に寄ってくる男ってさ──」
土屋(つちや)「みんなクソがつくほど真面目なんだよ」
土屋(つちや)「それこそ、浮気は絶対にしないし、 風俗にも行かない」
粟田(あわた)「へえ、いいじゃない」
土屋(つちや)「よくない!」
土屋(つちや)「あたしは、そういう男に一切惹かれない」
土屋(つちや)「あたしが好きなのは──」
土屋(つちや)「下半身がだらしない、最低野郎なの!!!!」
粟田(あわた)「はあ・・・」
土屋(つちや)「だから、そういう男を求めて 声を掛けるんだけど──」
土屋(つちや)「それが、ことごとく失敗する」
土屋(つちや)「ねえ、何でだと思う?」
土屋(つちや)「あたし、がっつきすぎてるのかな?」
土屋(つちや)「今夜の男はスケベ面してたから、 絶対にイケると思ったんだけど・・・」
粟田(あわた)「確かに、あの人スケベそうだったよね」
粟田(あわた)「でもさ、あの人にも奥さんや子供がいるでしょ」
粟田(あわた)「その人達を不幸にしてまで、不倫したいの?」
土屋(つちや)「──したい!」
粟田(あわた)「何で?」
土屋(つちや)「だって、ドラマの主人公っぽいじゃん」
粟田(あわた)「えっ?」
土屋(つちや)「あたしの人生って、すごく平凡なの」
土屋(つちや)「だけど、不倫したら 一気にドラマの主人公みたいになれる」
土屋(つちや)「あたしは、人生に刺激がほしいの」
土屋(つちや)「だから、不倫する!」
粟田(あわた)「・・・・・・」
粟田(あわた)「うわあ、おバカ丸出しの答えだ・・・」
土屋(つちや)「ちょっと、バカってなによ!」
粟田(あわた)「──いや、でも安心した」
粟田(あわた)「土屋がそこまでアホなら、 不倫なんて絶対成功しないよ」
土屋(つちや)「はああ!?」
粟田(あわた)「もう観念して、 クソ真面目な男と付き合いな」
土屋(つちや)「いや! 絶対にいや!」
土屋(つちや)「あたしは何が何でも、不倫してやる!!!!」
粟田(あわた)「はいはい、頑張ってね」
土屋(つちや)「ちょっと、待ちなさい! 粟田~!!」
悪事はこっそりするから快感なんであって、「悪いことしよう、しよう」と言われると引いてしまうもんですよね。それでもアホっ子が不倫しそうになったら、どこからともなく粟田さんが登場してスリッパで思い切り頭をはたいてほしいです。
不倫という背徳的な行為でドキドキを得たい土屋さん、それが不倫すること自体が目的になっているって……んー、おバカさんですね!愛すべきおバカではありますが