柊深雪はクリスマスが嫌い

今乃ヘビちゃん

Melty snow(脚本)

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〇クリスマス仕様の教室
四月一日 春風(わたぬき はるか)「へえ、数日で準備したにしては頑張ったな」
クラスメイト「だろ? いや大変だったぜーほんとw」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「こっちもコレ。とりあえずホールで何種類か作ってきた」
クラスメイト「ひゅー!! 待ってました!」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「次からはせめて余裕もって教えてくれよ? 作るこっちの身にもなってくれ」
クラスメイト「分かってるって。でもお陰でぼっちクリスマスを過ごさなくて済んだ!サンキュー!!」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「はいはい」
クラスメイト「お前のケーキに釣られて女子達も結構集まったし、楽しいクリスマスになりそうだぜ!!」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「あ・・・皿とかフォーク忘れた」
クラスメイト「マジかよ!? どうすっかな・・・家庭科室開けてもらうか?」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「いいよ近いし、戻って取ってくる」
クラスメイト「了解、頼むわ」
  と、教室を出ようとした時だった
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「うわ!! ビックリした・・・」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「深雪!? 何でここに?」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「これ・・・あんたのお母さんに頼まれた」
  取りに行こうとしていた忘れ物だった
四月一日 春風(わたぬき はるか)「さ、サンキュー・・・」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「じゃ、ちゃんと渡したからね?」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「おう・・・」
  そう言って深雪はすぐに踵を返して行った
クラスメイト「あれ、もう取って来たのか? ってさすがに違うかw」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「いや、深雪が届けてくれた」
クラスメイト「マジか良かったじゃん♪ てか委員長は?」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「帰った」
クラスメイト「なんだよケーキくらい食ってけばいいのに」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「あいつクリスマス嫌いだから・・・」
クラスメイト「そうなの? こんなビッグイベントなのに・・・」

〇黒
  昔はああじゃなかった
  小さい頃はもっと明るくてヤンチャで──

〇クリスマス仕様のリビング
春風の母「わあ! 深雪ちゃん上手ねー!!」
深雪(幼少期)「えへへ♪ キレイにかざってサンタさんにきてもらうんだー」
春風の母「これならきっとサンタさん来てくれるわね」
春風の母「じゃあハルくんはどうかなぁ?」
春風(幼少期)「じゃーん!! みてみてー、しゅりけーん!!」
深雪(幼少期)「ちょっとハルカ! マジメにやってよー!」
春風(幼少期)「へへーんだ。シュッシュッ」
深雪(幼少期)「もー!! ハルカのバカーー!!」
深雪(幼少期)「サンタさんきてくれなかったらどうすんのよ!!」
  その時深雪は、真面目に作業しない俺に腹を立て、作っていたリースを投げた
  それが俺の顔に当たってしまった。柊の刺々しい葉っぱが・・・

〇クリスマス仕様の教室
  ケガはしたが幸い大した事はなかった。でもそれ以来、深雪は責任を感じてか俺と距離を置くようになった
クラスメイト「でもよー、いくら嫌いっつってもケーキは好きなんじゃねえの?」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「そうだな、ウチのケーキよく食ってたし」
  今でもクリスマスや家族の誕生日にはケーキを買っている。深雪自身は俺に内緒のつもりらしいが
クラスメイト「なら折角だし呼んで来いよ」
クラスメイト「てか俺、ああいうクール系の美人タイプなんだよw」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「は?」
  考えもしなかった。深雪に好意を持つ奴がいるなんて
  でも確かに、幼馴染みの俺から見ても深雪は美人だ。真面目すぎて堅い印象だが人気があっても不思議じゃない
  そう思うと、急に変な焦燥感が込み上げてきた
四月一日 春風(わたぬき はるか)「・・・ちょっと行ってくる」
クラスメイト「おう」
  俺は教室を出かけて、一瞬振り返った
四月一日 春風(わたぬき はるか)「でも、アイツはダメだから」
クラスメイト「へ?」

〇階段の踊り場
四月一日 春風(わたぬき はるか)「深雪!!」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「何よ、忘れ物まだあった?」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「いや、折角だから寄ってけよ」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「だから、クリスマスは嫌いなんだって・・・」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「毎年ウチでケーキ買ってるくせに?」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「な!? 何で知って──」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「いや俺ん家だしバレない方が無理だって」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「た、確かにそうかもね・・・」
  変なところが抜けているのも今ではなんだか愛おしい
四月一日 春風(わたぬき はるか)「なあ、昔の事はもう気にすんな」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「別に、気にしてないし・・・」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「嘘つけ、あれから俺の事避けてんだろ」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「避けてないし・・・」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「俺、またお前とクリスマスやりたいってずっと思ってた。だからケーキ作りめっちゃ頑張ったんだぞ?」
  深雪に美味しいって言って欲しくて
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「そう・・・」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「せめて俺のケーキ食ってかねえか?」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「・・・」
  困ったように深雪は窓の向こうへ視線をそらした
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「あ──」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「ちょっと来て!!」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「お、おい!?」

〇白い校舎
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「すごーい!! ホワイトクリスマスなんて何年ぶりだろ!?」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「お前、雪好きだもんな」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「うん、見るとなぜか嬉しくなるのよね♪」
  深雪の笑顔なんて何年ぶりに見ただろうか・・・
四月一日 春風(わたぬき はるか)(やっぱり俺、深雪のこと──)
四月一日 春風(わたぬき はるか)「俺も好きだな・・・(み)雪が・・・」
  さすがに照れ臭くて、肝心な所は小声になってしまった
  聞こえたかどうか分からないが深雪は何か考え込んでいる
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「──ズケーキある?」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「え?」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「レアチーズケーキはあるのかって聞いてるの!! 甘くてとびきり濃厚なヤツ!!」
四月一日 春風(わたぬき はるか)「あ、あるけど」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「じゃあ、ちょっとだけ、行ってあげても良いけど?」
  調子の良い奴。でも俺にとっては何よりのクリスマスプレゼントだった
四月一日 春風(わたぬき はるか)「よし、なら早くしないとなくなるぞ!」
柊 深雪(ひいらぎ みゆき)「うん!!」
  まだまだ冬はこれからだ
  でも──
  コイツの心に積もっていた雪は溶け始めたのかもしれない──

コメント

  • とっても可愛らしい2人の関係性ですね。これから一層距離を縮めていくのだろうなーという空気感も伝わってきます。ステキな恋愛ストーリーですね!

  • 彼が小声になったところかわいかったです。笑
    雪が積もって消えて…その頃には二人の距離がもっと近くなってるといいなぁって思います。
    淡い恋心にキュンキュンしました!

  • 喧嘩ってわけじゃないけどらなんだか距離を置いてしまうこと、ありますよね。
    そしてまたいつの間にか戻ってる、青春って感じでとても甘酸っぱさも感じました!

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