天才薬師の激貧ライフ

おもちさん

3、本物の味(脚本)

天才薬師の激貧ライフ

おもちさん

今すぐ読む

天才薬師の激貧ライフ
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇洋館の一室
イアクシル「さぁ出来たぞ、朝飯だ」
イアクシル「今日は畑の手入れをするからな、ちゃんと腹を満たしておけよ」
アイシャ「ええと、これは・・・俗に言う白湯?」
アイシャ「水を煮立たせただけっていう、料理とも呼べないアレですか?」
イアクシル「よく見ろ、ライ麦粥だ」
イアクシル「お互いの皿にちゃんと3粒ずつ入れてある」
アイシャ「初めてですよ! お粥を粒単位で管理するおバカさんは!!」
イアクシル「慌てんな。 この粉をまぶしてみろ」
アイシャ「何ですか、この黄色い粉。 またこんなパターンなの・・・?」
アイシャ「まぁ、やりますけどね。 とことん師匠について行きますけどね?」
イアクシル「そんな事言う割には、クエンタケの解毒剤がけは食わなかったが」
アイシャ「はぁいサラサラサラ〜〜。 あらぁ? 心なしか懐かしい香りがするようなぁ〜〜」
アイシャ「いただきます♪」
アイシャ「これ・・・コンポタージュの味!?」
イアクシル「どうだ、美味いだろ?」
アイシャ「いやほんと、メチャクチャ似てますよ! 本物と違いが分からないくらい!」
イアクシル「そうだろ、そうだろ。 アッハッハ」
アイシャ「ええ本当に。 ウフフフフ」
アイシャ「ハァァ・・・・・・ 贅沢言わないから、本物のコンポタ飲みたいですよぉ」
イアクシル「そんな金があると思うか?」
アイシャ「そりゃまぁ、分かってますけども」
イアクシル「それよりも仕事だ。 腹が膨れたら裏庭に来いよ」
アイシャ「待ってくださいよ、師匠!」
アイシャ「いくら味がコンポタでも、実質はお湯ですから! こんなんで元気出ませんってば!」

〇大樹の下
イアクシル「さてと。薬草の生育状況は・・・・・・と」
アイシャ「師匠〜〜! おまたせです!」
アイシャ「お湯っぽい何かを完食しました!」
イアクシル「あんなのでも、一応は手料理だ。 あんまり悪く言うんじゃないぞ?」
イアクシル「それはさておき、畑の手入れだ」
イアクシル「オレは問題が無いか見て回るから、お前には水やりを任せる」
アイシャ「はい、お任せあれ! 超絶得意です!!」
イアクシル「もっと丁寧にやれ! 聞こえてるか、アイシャ!?」
イアクシル「まったく手間のかかるヤツ」
イアクシル「さてと、ともかく自分の仕事をするか」
  薬草の生育を見るに、順調そのものだった。
  たとえオレ達が栄養に欠乏していても、作物だけはスクスクと育ってくれる。
イアクシル「マゴトゴマの果実は、実に良い色味だ」
イアクシル「今日の内に収穫してもいいが、整腸剤を作る当てがない。 いつ刈り取るかは検討しておこう」
イアクシル「うん。こっちのオットキレソウも良さげだ。葉脈に紫の線が出るまで、あと少しだろう」
イアクシル「傷薬はいくらあっても良いからな。 このまま立派に育ってくれよ?」
アイシャ「超高速で水やりを終わらせました!」
アイシャ「いっぱい褒めてくれても良いんですよ?」
イアクシル「そんな寝言は、叱られなくなってからホザけよ?」
アイシャ「ところで師匠、ひとつ聞いても良いです?」
イアクシル「どうした? 急に改まって」
アイシャ「こんなに立派な畑があって、薬草もすんごい沢山育ててますよね?」
イアクシル「まぁな。 もっとも、母さんが耕した畑を引き継いだだけだがな」
アイシャ「ここの薬草を売らないんです?」
イアクシル「それは本気で言ってるのか?」
アイシャ「いや、お気持ちは分かりますよ? 薬師なんだから、お薬を売って生計を立てたいですよね?」
アイシャ「だけど、そんなプライドも、ちゃんと食べてからだと思うんです」
アイシャ「意地とかそういうのは、お腹が膨れてから考えましょうよ!」
イアクシル「そうか」
イアクシル(論より証拠、というしな。 特にコイツの場合、言葉だけじゃ納得しないだろう)
イアクシル「そこまで言うなら、街まで売りに行け」
イアクシル「庭先に束で積んでるものなら、好きに扱って構わない」
アイシャ「本当ですか・・・?」
アイシャ「ほんとの、ほんとに・・・ 良いんですね?」
イアクシル「今、そう言ったろ」
アイシャ「師匠の想い・・・確かに受け取りました!」
アイシャ「必ずや、このミッションを大成功させます! ウハウハのがっぽりライフを過ごせるように!」
イアクシル「あんまり気張るな。 様子を見つつ売り歩いて、無理そうなら手早く引き上げをだな・・・」
アイシャ「うおおおーー! きらめけ乙女魂! ここで働かずして、何が乙女かーーッ!」
イアクシル「あいつ・・・。 マジで話を聞かねぇ・・・」
イアクシル「それでもまぁ、現実を知っておくのは悪いことじゃない」
イアクシル「今は魔術による治療が全盛期を迎えている。 だから薬なんて売れない」
イアクシル「薬の原料なんて、更に売れない。 時間を無駄にするだけなんだ」
イアクシル「まぁ、ボヤく事だって無駄の1つか。 オレはオレの仕事を全うするとしよう」

〇大樹の下
イアクシル「順調なのは一部の薬草だけか・・・」
イアクシル「肥料をもっと充実させるべきか。 だが、使えそうなものは限られるし・・・」
イアクシル「────。 それにしても、帰りが遅い」
イアクシル「あいつ・・・やっぱり話を聞いてなかったな。 もうすぐ日が暮れるぞ」
イアクシル「もしかして、粘ってるのか? 無駄な事を・・・」
イアクシル「もう少しだけ、様子を見るか。 場合によっては迎えに行くことも検討を────」
「師匠〜〜!!」
アイシャ「お待たせしました! 貴方のアイシャが、ただ今帰りましたよ!」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

ページTOPへ